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「むかえに来て下さったんですの? クラレンス様」


「ああ。卒業式が終わって準備が出来次第、すぐに婚約披露のパーティを開くことになっているからね」


「嬉しいわ!」


 再び青年に抱きつくフローラを見ながら、私は呆然とする。クラレンス様といえば私の婚約者、オブシディア侯爵家のクラレンス様と同じ名前だ。


 まさかと思いながら楽しそうに語らう二人を見ていると、赤髪の伯爵令嬢フローラと不意に視線が合った。私が立ちつくして、そちらを見つめていることに気付いたフローラは口角を上げ、赤い唇を三日月形にして笑った。




「あら。確か、セレニテス子爵令嬢は初めてお会いするのよね?」


「え、ええ……。そちらの方は? 婚約者の方?」


「うふふ。こちらの方はオブシディア侯爵家のクラレンス様。私の婚約者ですわ」


「は? オブシディア侯爵家のクラレンス様って、それは私の婚約者の名前じゃあ……」


「いやだわ。聞いてないの?」


「何のこと?」


 私の婚約者であるはずのクラレンス様が伯爵令嬢フローラの婚約者になっているのか、事態が飲み込めず戸惑っていると、濃紺の貴族服をまとった青年。クラレンス様が、大きなため息をついた。


「どうやら、話が通ってないようだな……。君の祖母には、すでに通達ずみなのだが」


「え?」


「『セレニテス子爵家、セリナとの婚約は破棄させて頂く』と、すでに話は通している」


「婚約を破棄!? どうして?」


 突然のことに困惑する私を目にした、赤髪の伯爵令嬢フローラは方眉を上げる。


「どうしてって……。そもそも、オブシディア侯爵家のクラレンス様が、セレニテス子爵令嬢セリナとの婚約を決めた理由を考えれば、すぐ分かるでしょう?」


「え?」


「まだお分かりにならないの? あなたって呆れるほど鈍いのねぇ」


「なっ!」


 フローラは真っ赤な髪をかきあげると自身の腰に手を当てて、小バカにするように私をせせら笑う。


「あなたとクラレンス様が婚約してたのは昔、セレニテス子爵がオブシディア侯爵に『娘の魔力が高い』と話して、それを信じたオブシディア侯爵が婚約を決めたからでしょう?」


「ええ。確かにそうだけど……」


「それなのに実際、魔法の授業を受けるセレニテス子爵を見てみれば、ごくごく平凡な魔力で私、ビックリしてしまいましたわ!」


「それは……」


「この事実を知らないままクラレンス様が、さして魔力が高い訳でもない子爵令嬢と結婚することになるなんて、あまりにもお気の毒……!」


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