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 馬車に乗って王宮に到着すると第一の庭で、プラチナブロンドに薄水色の上品なドレスを着た淑女と茶髪の侍女の姿が見えた。


「ローザ、久しぶり。元気そうで良かったわ」


「ええ。セリナも元気そうで良かった」


「これ、新作の栗ケーキも入ったケーキの詰め合わせよ」


 私がケーキの詰め合わせが入った箱を差し出せばローザの顔がほころんだ。


「ありがとう。ジョアンナ、保冷室に持って行ってもらえるかしら? 私はセリナと庭園で話をしてるわ」


「分かりました」


 茶髪の侍女ジョアンナは木の皮で編まれたケーキの箱を受け取ると下がっていった。


「天気も良いし、庭園を散歩しながら話しましょうか」


「うん」


 広大な第一の庭には石畳の歩道が整備されていて歩道脇には宮廷庭師によって形を整えられた背の低い樹木が植えこまれている。手入れの行き届いた樹木に囲まれた部分は青々とした色の良い芝生、そして赤や白、紫色のダリアや黄色やオレンジ色が鮮やかなマリーゴールドといった可愛らしい花々が見る者の目を楽しませてくれる。


「季節の花がきれいね……」


 水宝玉色の瞳が色とりどりの小花を見つめていた時、庭園の中を気持ちの良い風が吹き抜け、ほおをなでる。ローザの美しいプラチナブロンドの髪が風にゆれているが、ローザの表情はどことなく浮かない。少し、元気が無さそうなのが気になるが、私は意を決した。


「ローザ……。今日は伝えたいことがあって来たの」


「何かしら?」


「実は城下でウワサになってる話があるんだけど」


 本人を目の前に少しためらっていると、ローザは少しまゆをひそめた。


「……私が伯爵令嬢フローラをないがしろにしている悪女だっていうウワサかしら?」


「知ってたの!?」


「ええ」


「そう。知ってたのなら話は早いわ……。ウワサの大元はフローラの実家であるフルオライト伯爵家よ。私、自分の目でフルオライト伯爵家のメイドが市場であること無いこと言いふらしてるのをこの目で見たわ。国王陛下にお願いして事実無根のデマを広めるのは止めさせましょう?」


「その件はもういいの」


「え?」


「すでにレオン陛下のお耳にも入ってるわ」


「じゃあ、フローラの実家は?」


「そんなウワサが流れていると知ったレオン陛下は大層、お怒りになってフルオライト伯爵家にどういうことなのかと昨日、早馬を出したわ。フルオライト伯爵家の当主はウワサについて全く関知していなかったそうで偶然、早馬がくる前にウワサを広めていたメイドがいた事実を把握して当事者のメイドは解雇したそうよ」


「そんな……」


 フルオライト伯爵家の指示でローザの悪評を広めていたのではなく、あくまでもメイド単独での行動だったってそれは本当なのだろうか。

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