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 そうしている間にも地面の凍結は増していき、少年たちの革靴が凍り付き白くなった地面と一体化していく。


「わ……!? なんだ、凍ってる!」


「クツが地面から離れない!」


 ようやく自身の足元が凍てついていることに気付いた少年たちが、必死に凍り付いた地面から足を離そうとし始めたが革靴が完全に氷に取り込まれている状態で子供の力ではどうにもならないのだろう。足はみじんも動かすことが出来ず、少年たちは移動することが出来ない。


「汚らわしい言葉で姉上を侮辱した報い、その身で受けろ!」


「ヒッ!」


「うわぁ!」


 金髪の少年が蒼玉色の瞳に怒りの色を浮かべながら叫んだ時、少年たちを捕らえていた氷がビキビキと大きな音を立てながら一気に革靴から脚、腰まで伸びる。瞬く間に氷は小年達の上半身に到達し、先ほどまで寵姫とその弟を罵っていた口を塞ごうとしていた。


「だめよ! ケヴィン君!」


「えっ」


 同年代の少年たちを今まさに氷漬けにしようとしている光景を見て私は思わず飛び出し、金髪の少年を後ろから抱きしめた。


「気持ちは分かるけど落ち着いて!」


「セリナさん……?」


 突然、背後から抱きつかれてケヴィン君の注意が完全に私に向いたことで、少年たちを取り込もうとしていた氷魔法が解けたのだろう。氷漬けにされようとしていた少年らの上半身から順番にパラパラと氷が砕け散っていくのが見えて、私はひとまず安堵の息を吐いた。そしてケヴィン君を抱きしめていた腕をほどいて、今度は顔色を失って戸惑っている少年たちを見すえた。


「あなた達、王立学園に通う生徒ね? ケヴィン君のお姉さんが寵姫だと知って侮辱している先ほどの言葉。国王陛下の耳に入ればあなた達だけでなく、あなた達の実家も陛下の不興を買うことになるのだけど、そうなれば一族に迷惑がかかるのよ? 分かっているの?」


「うっ、うるさい!」


「偉そうなことを言っているがキサマの身なり、ただの平民だろう? ボクの実家は上級貴族なんだ! キサマごとき平民に指図されるいわれは無いぞっ!」


「下賤な女に擁護してもらうなんて、やっぱり悪女の弟はロクなものではない!」


「お、おまえ達のような身分の低い者にかまってられないな!」


 少年たちは顔を引きつらせながら精いっぱい虚勢をはっているが明らかに腰が引けていて、じりじりと後ずさりしながら最後は我先にと走って逃げていった。


 口ではああ言っていたけど、私が止めなかったらケヴィン君の氷魔法で全身を氷漬けにされていたのは間違いないというのは自分たちも分かっているのだろう。

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