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 先ほどパティスリーの調理場で作ったのは栗の渋皮を完全に除去してから甘露煮をベースにマロンクリームを作ったので黄金色のケーキ。いわゆる日本風の黄色いモンブランといった雰囲気のケーキになったけど、栗の甘露煮をベースに作らない場合は海外がルーツである茶色のモンブランになる。


 一度、黄金色の甘露煮にしてしまった方が保存性も高まるのだけど、賞味期限が当日中ならば茶色い栗ペーストでも問題ない。今日は作らなかった栗の渋皮ごと煮込んで渋皮煮にするのもやってみたいし、地面に転がった物以外も多めに栗を購入した上で、緑色や紫色のみずみずしい大粒ブドウ、輝く紅色のリンゴ、柑橘類などを購入した。


 手押し車に今日、買った果物を入れて市場を後にしてパティスリーに戻る途中、路地で複数の少年たちが言い争いをしている光景が視界に入った。


「聞いたぞ。おまえの姉は国王に寵愛されている寵姫の立場を利用して、国王陛下の婚約者である伯爵令嬢フローラ様を不当に貶めてるそうじゃないか?」


「そんなのは、いい加減な噂だ! 姉上は不当に他人を貶める様な人じゃない!」


 言い争いをしているのは身なりからして、王立学園に通う貴族の子供だった。そして複数の少年たちは金髪の少年。なんとローザの弟であるケヴィン君に言いがかりをつけている。


「しかし本来は後宮で過ごさないといけない立場なのに、寵姫の立場でありながら王妃の部屋に居座っているというじゃないか?」


「王の寵愛を良いことに陛下に取り入って、王妃気取りで陛下を操るなんてとんでもない悪女だと皆言っているぞ?」


「姉上を侮辱するな! 姉上は悪女なんかじゃない!」


 ケヴィン君が自身の金髪を揺らし、声を荒げて反論するが少年たちは皆あざ笑った。


「フン! 悪女の弟が言うことなんか信用できるもんか!」


「寵姫と言えば聞こえが良いが、寵姫ローザは魔力もロクに無い下級貴族の娘だというじゃないか?」


「陛下に取り立ててもらって寵姫にはなったが、ようするに高級売春婦と変わらないんだぜ?」


「売春婦が陛下に取り入って王妃の部屋に居座り、次期王妃を貶めてるなら悪女と言われるのも当然だな!」


「貴様ら!」


 怒りに震えるケヴィン君の足元を中心に地面が白く凍てつき、ピキピキと音を立てながら凍り始めた。大気も急激に冷えていき、吐く息が白くなっていく。


「な、なんだ?」


「急に寒くなって来たぞ」


 何が起こっているのか、まだ理解できていない少年たちは周囲の温度が急激に低くなっている原因が自分たちの暴言であり、眼前にいる金髪の少年が氷魔法で引き起こしている事態だということに全く気付かずキョロキョロと辺りを見回している。

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