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「は? こんな紙切れが何だというのだ!? 話をそらそうとしても……。何々『噴水広場でパティスリー・セリナがテーブルと椅子を設置して飲食物を提供し、営業することを認める。金獅子国王、レオン』……!?」


「はい。ご覧の通り、レオン陛下からご許可を頂いております! 問題ないですよね?」


 国王陛下が書いて下さった許可証を提示しながら満面の笑みで微笑むと、チョビ髭の役人は顔を引きつらせながら書状を凝視した。


「ば、バカな! この書状は? ニセモノじゃないのか!?」


「いえいえ、ニセモノだなんてめっそうも無い! よくご覧下さい。この通り、しっかりとレオン陛下の直筆でサインと国璽も押されております。国王陛下、直筆の書状ですから手荒に扱わないで下さいね?」


 国の最重要文章のみに押されるという、国王陛下が認可した証である国璽がこの許可証にはしっかりと押されている。こんな物を偽造すれば即刻、処刑されてもおかしくない。つまり、この書状がニセモノというのはまずありえないのだ。


「そ、そんな……。貴様いったいどうやって、国王陛下からこのような書状を?」


「いやぁ~。私、王宮にちょっとしたコネがあるんですよ。おほほ……」


 悔しそうに歯がみするチョビ髭の役人に対して、にこやかに微笑みながら思い返す。数日前、謁見の間でレオン陛下に麻痺症状から救ってくれた礼として、望むなら両親を亡くした時。一度は手放したセレニテス子爵家の領地を用意しようと告げられた。


 セレニテス子爵家の領地が戻れば国王陛下が話した通り、私は女子爵として領地収入を得ながら貴族として生活することが出来る。しかし、貴族として生活するということは毎日、市場へ行って果物を購入したりパティスリーの調理場に入ってケーキやお菓子を作るというのも出来なくなる事につながる。


 何しろ身分の高い貴族令嬢や夫人は基本的に、食料の買い出しや料理などをメイドや使用人にさせるのが当然という世界なのだ。国王陛下から直々に領地をたまわった女子爵となれば、貴族らしくない振る舞いをすることは控えねばならないだろう。


 領地収入で暮らす女子爵となるか、パティスリーを続けるか。かなり心がグラついたし悩んだが、私はパティスリーを続けることを選んだ。せっかく軌道に乗りかけているパティスリーを道半ばで諦めれば一生、後悔すると思ったからだ。


 そして、パティスリーを続けるなら店舗前で飲食物を提供する許可を望めば良いという事を思いついたのだ。国王陛下から店舗前と噴水広場で飲食物を提供する許可さえ頂ければ、パティスリー・セリナで念願だったオープンカフェの営業が可能になるのだから!

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