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 姿見鏡には白いフリルやレースが多用された、いかにも貴族令嬢といった淡い色のドレスに身を包まれた自分の姿が映っている。


「まぁ、それなりに見えますね」


「女官長ったら! セリナ、とっても綺麗よ」


「あ、ありがとう」


 満足そうに屈託のない笑みを浮かべるローザに若干、顔を引きつらせながら私は微笑み返した。早くも帰りたい気持ちでいっぱいだったのだが、これで許される筈も無く妙に明るいローザにがっつりと腕を組まれながら謁見の間へと連れていかれた。


 謁見の間へ行くと白大理石の柱が等間隔で並び、天井からは豪奢なクリスタルのシャンデリアが吊るされた大広間で、見るからに重臣であろうと思われる壮年の貴族たちが並んでいた。


 そして、よくよく見れば赤髪の伯爵令嬢フローラもいる。内心「聞いてない!」と再び叫びながら、何とかこの場から逃げ出せない物かと、この後に及んで真剣に考えてしまう。しかし、いつになく上機嫌なローザが腕を組んでいるので物理的に不可能だった。


 そうこうしている内に大きな扉が開くと侍従が現れた。長い髪を後ろで一括りにした侍従は切れ長の瞳で一同を見渡すと、広間にいる者たちへ高らかに告げる。


「国王陛下と王太后様が参られました!」


 重臣らは一斉に頭を垂れた。ローザも優雅にスカートをつまんで一礼する。私も慌てて淑女らしくローザと同じように一礼した。


 頭を下げながら密かに上目づかいで見ていると、白いマントをたなびかせながら歩いて来た金髪の国王と王太后は青いじゅうたんが敷かれている、ひときわ高い玉座へと腰を下ろした。黄金に青い布張りの玉座の左右には、今にも動きそうな黄金の獅子像が二体設置されていて見る者を畏怖させるようだった。


「皆、頭を上げてくれ」


「国王陛下、今回はどのようなご用件で?」


 重臣たちの中でもかなり、豪華な宮廷服を身にまとった銀髪の宰相が尋ねれば、金髪の国王は鷹揚に頷いた。


「うむ、これから説明する……。まずは先日、第二王子ライガが王位簒奪を謀り、第三王子ブランシュ及び第四王子ダークを殺害したのは皆も知る通りだ」


「はい。おいたわしいことで……」


「余の治世では兄弟で殺し合う事態にはしたくないと考えていたが、こうなってしまったからには最早しかたない。しかし、これ以降はこのような事態にならぬよう最大限、配慮したいと思う」


「配慮と申しますと?」


「うむ……。具体的にはハーレムを解散させようと思う」


「な!?」


 国王の発言に一同はざわめいた。銀髪の宰相や重臣をはじめ、国王陛下の横にいる王太后ですら、これは初耳だったようで眼を丸くして唖然としている。

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