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「その通りだ。この実を食べれば短時間の間、魔力が増強する。みんな、食べて試してみるといい」


 先生にうながされ、クラスメイト達がおずおずと口にする。隣にいるローザも食べている。もっとも魔力が増強された実感は無いようで、食べながらしきりに首をひねっている。


「これで本当に魔力が増強されるのかしら? 強いて言うと胃が若干、熱くなってきたような」


「食べたら、指先に魔力を集中して魔法を使ってみてごらん」


 先生の指示通り、指先に魔力を集中させ初級の火魔法を使おうとした者は、想定より大きな火力が指先から出現し驚きの声を上げ、氷魔法を使った者は想像以上の氷塊が出現し目を丸くし、風魔法を使おうとした者は小さなつむじ風を出すつもりが周囲の紙を巻き上げるという軽い惨状を作り出していた。


「信じられない……」


 いつもなら小さな火花を起こすのが精いっぱいのローザは、指先に小さな火を出していた。何ということはない初級魔法だが、魔力が低いローザにとっては驚異的なことだろう。魔力の実が確かに魔力増強効果がある何よりの証だ。しかし、ローザのの小さな火はすぐに細くなっていく。


「あ、消えちゃった」


「みんなも分かったと思うが『魔力の実』を使うと短期的に魔力が上がる。ただし、これは食べた直後のごく短時間しか効果がない上、希少な実だから市場の流通量が少ない」


「そうなんだ」


「近年は『魔力の実』を服用して、自分の魔力を高く見せかけるという詐欺行為をする者も世の中にはいるそうだ。そういう輩にだまされることが無いよう啓発の意味も込めて『魔力の実』の実物を用意した」


「こんな物を使って、人をだますなんて……」


「世の中には、ひどい人もいるものねぇ」


 私とローザが顔を合わせてあきれる。魔力至上主義な者にしてみれば、高い魔力を保持していると思われた方が何かと有利ということなのだろうが、こんな物を使ってまで他人をだますなんて信じられない。



「今回は勉強の一環として実物の魔力の実を用意して、その威力を見てもらった」


「なるほど……」


「魔力が無いのに、こういう物を利用して魔力があるように見せかける行為は『魔力ドーピング』と呼ばれ、忌避される恥知らずな行いだ」


 先生の説明に私もローザも、クラスの生徒たちも皆、うなづく。


「まぁ、そうよね。他人を騙すことになるんですものね……」


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