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 レオン兄上の母はリオネーラ王太后。ライガ兄上は母親が白虎王国の王族、ブランシュ兄上の母親は金獅子国の王族。外部から見れば俺は王子だが、実際は王族の一員として助言を求められる機会は少ない。


 しかも、本来なら金獅子国の慣習に従って第一王子であるレオン兄上が新王となった時に王弟は処刑されるはずだったのだ。おかげで前王ライオネル陛下が臥せった時はいよいよ俺の命もあと僅かかと荒れた物だが、レオン兄上のおかげで処刑されずに済んだ。


「まぁ、そう腐るな……。ライガ兄上がわざわざ呼び出したのだ。おまえにも何らかの話があるのだろう」


「そうですね。やはり、今後の事で?」


「それしかないだろうな。国王執務室に呼び出したと言う事は、第二王子が新王として王位を継いだ後について話があるのだろうが……」


 階段を上がりながら話している内に国王代理であるライガ兄上が待つ、国王執務室の前に到着した。執務室の前では大きな扉の左右に長槍を持って警護をしている屈強そうな近衛兵の男が二人立っていた。


「ライガ兄上に取り次いでくれ」


「少々、お待ちください」


 近衛兵の一人が扉をノックして国王執務室に入ると、ほどなく近衛兵が再び姿を現して国王執務室の扉を開けた。


「ブランシュ殿下、ダーク殿下。どうぞお入りください」


「ああ」


 促されて国王執務室に入れば天井からクリスタルシャンデリアが吊るされている部屋で、獅子の意匠が施された重厚な執務机の奥に、曲線美と透かし彫りが美しい肘掛け椅子に足を組んで座っていた第二王子の姿があった。


 病床で危うい状況とは言え、レオン国王がいまだ健在だと言うのに国王の椅子に堂々と座っているのかと鼻白んでいると金褐色の髪を揺らしてライガ兄上は立ち上がった。


 その腰には普段から帯びている長剣と共に、柄の部分に大粒のエメラルドがはめ込まれ、曲線の刃を納める鞘の部分には大小さまざまな大きさのダイヤモンドとエメラルドが埋め込まれている三日月型をした黄金の短剣があった。


 確か、あれは王宮の宝物殿に収められている我が国でも屈指の宝剣だったはず。それを何故、このタイミングでライガ兄上が身に着けているのかと怪訝に思ったが、肝心の第二王子は気にする様子もなく国王執務室の中央にやって来た。


「ブランシュ、ダーク。よく来てくれたな」


「ライガ兄上、レオン陛下の容態は?」


「ああ、すでに聞いていると思うがレオン兄上は容態が急変した。麻痺症状が呼吸器にまで本格的に影響を及ぼし始めたそうだ。長くは持たぬだろうと医師も言っている」

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