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「正直、もっと高度な魔法授業があるのかと思っていたから、拍子抜けした部分はあるわね……」
私が一番、楽しみにしていた魔法の授業に関しては結局、初級の火魔法、水魔法、氷魔法、風魔法などを先生が軽くレクチャーするのみに留まり、上級者向けの魔法授業というのは通常の授業では行われなかった。
あまりにも高い魔力を要する魔法を使うとなると、ローザのような生まれつき魔力の低い生徒が授業内容についていけないからだ。
もっとも、ローザだけでなくクラスの大半は初級魔法しか使えないようだし、普通に生活する上では初級魔法さえ使えれば問題ないからというのも大きかった。
「もっと専門的なことを学びたいなら神殿に行けばいいんじゃない? セリナは回復魔法を使えるから貴重な人材だって喜ばれるわよ」
「いや、それはちょっと……」
「でも、もったいないわよ。魔法の力を伸ばしたいなら神殿か、あとは王宮で国王のお抱え魔術師にでも弟子入りするとかじゃないと」
「ああ、王宮ね……。それもパスだわ」
神殿の場合は万が一、聖女疑惑をかけられれば、そのまま真っすぐ軟禁コースになってしまうだろう。飛んで火に入る何とやらにはなりたくない。
王宮にしても国王お抱えの魔術師に聖女疑惑をかけられた挙げ句、ハーレムにでも放り込まれたら、たまったものではない。
もっとも父母や祖父が亡くなったときに『奇跡』を起こすことが出来なかった私が、聖女である可能性はほぼ無いとは思うが……。しかし、聖女の可能性を差し引いても、この世界では魔力の高さが遺伝しやすいと言われている。
魔力の高さに目をつけられ、獅子王家のハーレムに入れられるような可能性が高まる行動はつつしみたいのだ。
「もったいないわね……。私と違って魔法の素養があるのに」
「まぁ、生活する分には困らないし……」
「そうかしら?」
「うん。どうしてもマスターしたいなら、きっと独学でも何とかなると思うから……」
実際、王立学園の入学前に、自宅の書庫にある魔道書を読み込んで中級魔法までは自力でマスターしたのだ。やろうと思えば独学で、どうにかなる気がする。
少なくとも聖女疑惑をかけられるリスクや、魔力の高さが公になる危険をおかしてまで、神殿や王宮に出入りしようとは思えなかった。
「セリナは欲が無いわね。魔力を見込まれて召し抱えられるようになれば、好待遇だと思うわよ?」