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 薄紅色のクチビルをとがらせて疑問を口にするローザに、私はあせりながら具体的な例をあげることにした。


「で、でもね……。一般的に考えて『回復魔法が使える』って言うと、魔法でどんなケガでも完治できるイメージじゃない?」


「確かにそういうイメージね」


「でも、実際に私が出てきて『かすり傷しか治せないです』って言ったら、きっと超ガッカリされるでしょう!?」


「うん……。そう言われてみると、そうかも……」


 私の意見にうなづいた後、腕を組んで考え込むローザに、もう一押しだと追い打ちをかける。


「でしょう! 回復魔法が使えるって言うと過剰に期待されるけど、かすり傷をふさぐだけなんて、ほとんど役に立たないから! だから、知られたくなかったの!」


「あ、そうだったのね。そんな事情が……」


 ローザの私を見る目が、気の毒そうな物に変わる。今がチャンスと懇願する。


「だから、ローザも私が回復魔法が使えるってことは黙っててくれない?」


「そういうことなら……。分かったわ」


「ありがとう! ローザ!」


 こうして、何とかローザには私が回復魔法が使える件を口外しないと約束してもらうことが出来た。下手に回復魔法が使えることが、おおやけになれば自然と注目されてしまう。


 注目されることはイコール、神殿に軟禁されるリスクや獅子王家のハーレムに入れられるリスクが跳ね上がるのと同じことだろう。


 ローザは無邪気に「神殿に行けば」などと言うが、私がもっとも避けたい場所の一つなのだから、全力で回避しなければならない。


 ひとまず、ローザをごまかすことは出来たが、目の前にケガをしている人がいても助けないという選択肢は、私にとってなかなか忍耐力をためされることだと痛感した。


 両親や祖父が先日、亡くなったばかりなので、つい「すぐに治さなければ!」と思ってしまったのだ。次からは気をつけないと……。




 その後、王立学園で様々な授業を受けたおかげで、この世界での私の知識も増えた。周辺国の地理、歴史、一般的な常識は蓄えられたはずなので、ごく普通の一般人として生きていくことも可能だろう。


 学園での授業が終わり、帰宅途中にローザと話しながら、思わずため息をつく。



「それにしても、学園で教わる魔法は初級魔法だけなんて……」


「セリナは魔法の素養があるから、初級魔法じゃあ物足りなさそうね」


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