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「そう、良かったわ! ありがとうフローラ」


「どういたしまして。クラスメイトの役に立てて嬉しいわ」


 赤髪の伯爵令嬢はにっこりと微笑んだ。彼女に対しては苦手意識があったが、悪い人ではなかったようだ。


 伯爵令嬢フローラに関して、魔力と身分至上主義者だと思い込んでいたが、先入観で決めつけるのは良くなかったなと反省する。その後、祖母とも話し合い、卒業までは自宅に住んで、その後は自宅を売却するという段取りを決めた。



 ひとまず、学園卒業までは現在の邸宅に住めるので、ホッとしていたある日の放課後、人気のない図書館で宿題の調べ物をしている時だった。


「痛っ!」


「どうしたの? ローザ」


「ちょっとペン先で指を……」


 ローザがいかにも痛そうに、まゆをしかめながら見つめている指先に視線を向ければ、傷ついた指先から血がにじんでいた。


「うっかりしてたわ。でも、この位は大丈夫よ。……セリナ?」


 真っ赤な血を目にした私は、衝動的に出血しているローザの指に手をかざす。そして、次の瞬間には治癒魔法を使っていた。私の手から魔力が流れローザの指先についた傷がふさがっていく。


「よかった。これで大丈夫ね」


「セリナ。回復魔法、使えたのね?」


「……あ!」


「すごいじゃない! 回復魔法って確か、使える人が少ないから神殿に行けば喜ばれるわよ!」



 ローザのアクアマリン色の瞳がキラキラと輝き、ほおを桃色に上気させ大興奮している。そういえば、回復魔法の使い手は少ないのだと母も祖母も言っていた。


 治癒の行為自体は後悔していないが、すっかりテンションが上がったローザの姿を見て、不用意に回復魔法を使ってしまったことに関しては、ちょっと早まったと思わずにはいられなかった。



「ちょ、ちょっと待ってローザ!」


「回復魔法をいかせば、貴重な人材として重宝されるわよ。きっと!」


「違うの! 誤解なの!」


「え?」


 私の言葉に対して、意味が分からないと小首をかしげるローザに、思いつく限りの弁明をする。



「その……。回復魔法が使えるって言っても、なんというか……。かすり傷をふさぐ程度しかできないのよ」


「そうなの?」


「うん。そうなの! かすり傷なんて数日で完治するのに、わざわざ回復魔法を使うのも微妙でしょ?」


「そうかしら? 小さな傷でも回復魔法で治せるなら、きっと喜ばれると思うわよ」

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