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 国王陛下に命令された侍従トーランスはただちに指示を出し、レオン陛下が残した琥珀色のスープに毒物が混入しているのか調べさせた。


 また陛下が口にした朝食に関わった者、すべてが別室で取り調べを受けたが皆、一様に「陛下の食事に毒物を混入させることなどありえない」と容疑を否認したという。


 実際、国王陛下の食事を運ぶ召使いたちの部屋や、朝食を作っている料理人たちの部屋が捜索されたが怪しげな薬品、毒物が発見されることも無かった上、レオン陛下が残したスープから毒物が混入された形跡は見つからなかったということで、朝食に関わっていた料理人や召使いたちの嫌疑は晴れた。


 しかし右手右脚から始まった国王陛下の麻痺はその後、左脚にまで症状が出始めてしまったことで、もはや自力での歩行が不可能となってしまった。これを受けて本来なら外傷の治療を専門とする治癒術師の老女が召喚された。



「国王陛下、妾をお呼びとお聞きし参上いたしました。症状はどのような具合でしょうか?」


「右手右脚の麻痺症状が以前よりも酷くなっている」


「陛下、恐れながら治癒術は主にケガなどの外傷を治癒させるものでございます……。必ずしも陛下の症状に治癒術が効くかは分かりかねますが」


「構わぬ。宮廷医師は原因不明、治療法も不明と言っておるのだ。試すだけ、試してみてくれ」


「かしこまりました……。では麻痺しているという右手をお出しください」


「うむ」


 金髪の国王陛下が右手を出すと治癒術師の老女が陛下に治癒術をかけ始める。それを見守る、侍従や銀髪の宰相、近衛兵らが一様に陛下の快癒を祈りながら見守っていた時だった。


「くっ! これはっ!?」


「ぐ、何が!?」


 治癒術師の老女と国王陛下は、何故か同時に苦しみ出し、うめき声をあげ始めた。


「いかん! 引き離せ!」


「はっ!」


 侍従の指示で近衛兵の手により、治癒術師の老婆が国王陛下の寝台から引きはがされると、レオン陛下はぐったりとした様子で明らかに消耗した表情をしていた。


「陛下、大丈夫ですか?」


「ああ……。突然、身体が熱くなったと思ったが今は問題ない。治癒術師は?」


 近衛兵が引きはがした治癒術師を見れば、老婆はゼイゼイと息を荒げながら冷や汗をかいて床の上で腰を抜かしていた。その姿に長髪の侍従トーランスが眉をしかめた。


「一体どうしたのだ? 陛下に治癒術をかけていたのではないのか?」


「わ、妾にも何がなんだか……。ただ」


「ただ、何だと言うのだ?」

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