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 いつも穏やかな母の顔に憂いの影が落ちる。まさか『聖女』を取りあって戦争が起こった歴史があるとは思ってもみなかった為、私は目を見開き愕然とした。


「戦争……」


「もし、そんなことになったら戦争で多くの人が死んでしまうかも知れないから」


「怖いわ……。私、聖女じゃなくていい」


「そうね。お母さまもセリナは聖女じゃなくて良いと思うわ」


「……」


「たとえ、聖女じゃなくてもセリナはお母さまの大切な一人娘にかわりはないもの」


「お母さま……」



 後で、父の書斎にある歴史の本を読んで知ったことだが、聖女として認定されると基本的に神殿や国で手厚く保護されるが実質、軟禁状態で自由が無くなる。


 さらに聖女が見つかった国の王が暴君だった場合が最悪で、聖女が王の権威を脅かす存在、つまりクーデター要因となりかねないからという理由で殺害されたり、好色な老王が聖女を無理やり愛妾にしたこともあったという。それを知った私はますます聖女になりたくないと思ったのだった。



 ちなみに、この世界では多数の属性魔法を操れる人間は少なく、魔法の素養が高い者は、子供にもその魔力が受け継がれる可能性が高い。そのため、貴族である上に魔力が高い者には、良い条件の縁談が殺到する。


 そんなわけで、私の元には幼少期から「他国の王族の婚約者にならないか?」とか「魔力の高い者と婚約して、将来的に子供をたくさん産んで、国に貢献しないか?」という、呆れるような提案まで色んなお誘いがあった。



「これは、早めに婚約者を決めておかないと、やっかいなことになりかねないな……」


「そうですわね……。この子のためにも、今から婚約者を決めておいた方が……」



 何かと面倒なことになりかねないと懸念した両親は、他国だと外交で何かあった時に不安だからと言って国内の有力貴族から相手を絞り、結果的にオブシディア侯爵家の子息クラレンスという人が、私の婚約者に決まり、親同士が私の学園を卒業を待って婚姻させようと約束した。



「同国の貴族なら、少なくとも戦争で肉親同士が引き裂かれる。みたいな悲劇は起きないですものね」


「ああ……。それにオブシディア侯爵家はとても裕福な家柄だからな。経済的にも安泰だ」


「獣人の血を引く貴族からの縁談話もあったけど、獣人との結婚だと人側が遠慮しないといけない部分があるから良かったわ」


「お母様……。人側が遠慮しないといけない部分って何?」


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