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「知らなかったのですか。それを身に着けているということは……」


「リオネーラ様。今日も麗しゅうございますな」


 王太后様の側に一際、豪奢な宮廷服を着た恰幅の良い貴族がにこやかに近づき、話しかけてくると王太后様も相好を崩した。


「おお、ハインではないですか。今までどこにいたのですか?」


「実は白虎王国の大使と話をしておりました。第二王子が白虎王国に滞在した際、世話になった礼を伝えておりました」


 宰相閣下が王太后様に話しかけたことで、二人の会話が始まってしまった。リオネーラ様が何かを言いかけていたようだったが王太后様の興味は私より、重臣である宰相閣下との会話へと完全に移ってしまった。二人の会話に加わることも出来ない私は軽く一礼して、その場を離れた。


「そういえば、リオネーラ王太后様から王弟にあいさつをしておくようにと言われていたわね」


「第二王子は……。あちらにいらっしゃるわ」


 茶髪の侍女ジョアンナに示された先に黄色を基調とした礼服を着た第二王子、ライガ殿下がいる。私は人々の波をすり抜け、第二王子の前に出た。


「ライガ殿下。お初にお目にかかります」


「そなたは?」


「ローザ・フォン・クオーツと申します」


「兄上がローザという寵妃を後宮に入れたと聞いたが、もしやそなたが?」


「はい。先日から後宮に住まわせて頂いております」


 自ら寵妃と名乗るのがおこがましいように思えて、後宮にいるという事実のみ伝えた。間近で見る第二王子は金褐色の髪と瞳、そしてガッシリとした見事な体躯で若々しさと共に力強さを感じる。


 レオン陛下と母親が違うというのもあって、顔立ちはあまり似ていないが王族に相応しい風格をそなえているように見えた。その第二王子が私が身に着けているブルーサファイアの首飾りに目をとめた。


「む、その首飾りは先代の王太后が持っていた物ではないか? 確か兄上が譲り受けた品だったような……」


「はい。レオン様のご厚意で身に着けております」


「兄上がそれを……。国王陛下の婚約者はあちらに居るフルオライト伯爵家の令嬢だと聞いていたが、本命は別にいたと言う訳か。堅物だと思っていたが、兄上も隅に置けぬな」


「そんな。そのような……」


 楽し気に口角を上げながら、少し離れた場所にいる金髪の国王陛下に視線を向けた第二王子に対して、何と言うべきか悩んでいると後方から高らかなハイヒールの靴音が近づいてきた。


「ライガ殿下!」


「おお、これはフルオライト伯爵令嬢」


 深紅のドレスに身を包んだフローラは、第二王子に対して艶やかに微笑んだ。

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