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「つまり、魔力増強剤の効果が五倍になったのは、おまえが何かしたからじゃなく、種が原因だと?」


「ええ。きっとそうだと思います!」


 私に覚えが無い以上、種に原因があるとしか考えられない。そう断言すれば魔道具屋の店主はジト目で私を見つめた後、ボリボリと頭をかいた。


「はぁ……。分かった。もう良い、朝っぱらから邪魔したな」


「いえ……」


「ああ、そうだ。約束のブツだ。受け取れ」


 そう言いながらコルニクスさんは懐から何か取り出し、ダイニングテーブルの上に見覚えのある小さな透明ガラスの小ビンを三本を置いた。ガラスビンの中には濃い紫色の液体がたゆたっている。


「え、これって、もしかして……?」


「ああ。てめぇ育てた魔力の実で作った、魔力増強剤だ」


「うっ、受け取れませんよ! 魔力増強剤ってメチャクチャ高かったじゃないですか!?」


「そいつは従来の五倍、効果があるからな。通常の魔力増強剤より高価だ」


「よけい受け取れないですよ!」


 昨日、魔道具屋で見た値札はぼったくりを疑うレベルで高い値段が付けられていた。それを三本となるとアゴが外れそうになる金額だ。魔力の実は希少で今季は不作らしいが、タダで種を入手してほとんどお金をかけずに育てた身としては法外な謝礼に震えてしまう。


「ハァ……。魔力の実を持ってきたら、礼に魔力増強剤をくれてやると言っただろうが」


「確かに、そんなことを言っていたような……?」


「いらねぇなら、売っぱらえば良いだろうが」


「売るって……」


 確かに、それは魅力的な提案ではある。これを売り払えばまとまった額の臨時収入になるだろう。しかし、仮にも人から頂いた物を即座に売却するというのは如何なものか。


 しかも、魔力増強剤を販売しているのはコルニクスさんなのだから、謝礼として渡してくれた本人に「いらないから現金で」と言わなければいけない訳で……。


 魔力増強剤を作った本人に直接それを言うのは、いくらなんでもハードルが高すぎる。私が内心、葛藤していると魔道具屋の店主はしかめっ面のまま、大きな息を吐いた。


「約束は守る主義なんだ。とにかく確かに約束のブツは渡したからな。あと、魔力増強剤を飲むときは一日一本までにしておけ。特にソイツは効果が高すぎて、いっぺんに多量摂取すれば魔力が暴走する危険があるからな……」


「暴走? 具体的にはどうなるんですか?」


「そうだな……。多量に摂取すれば、高確率で死ぬだろうな」


 当然のことであるかのように、しれっと告げてくれたが予想だにしていなかった副作用に私は愕然とした。

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