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「ごめんなさい……。私のせいだわ」
「え?」
「私がウチのお父さまと、ローザのお父さまが一緒に領地へ行けばいいなんて言わなければ、こんなことには……」
「それは違うわ、セリナ。あなたのせいじゃない」
「でも!」
「こうなる運命だったのよ……。セリナのせいじゃないわ」
「運命……」
父母と祖父、そしてローザの父が亡くなってしまったのが、ローザの言う通り『運命』なのかどうかは分からない。ただ『自分が聖女なら、奇跡が起こせる』と思っていたのは完全な、思い違いだったのだということだけは、はっきりと理解できた。
泣き疲れて、ようやく少し落ち着いたころ「セリナを一人にできない」と私を心配する、祖母と共に馬車に乗り帰宅した。父母との思い出がつまった自宅だが、なにしろ両親が亡くなり葬儀が終わった直後だ。
家の中の何を見ても、死んだ父母を思い出してツラくなる。じわりと目頭が熱くなったその時、祖母が私の肩に手を置いた。
「ここに住むのもツラいでしょう」
「おばあ様……」
「私もメイドがいるとはいえ、寂しくなってしまったからセリナが一緒に住んでくれれば嬉しいわ」
祖母も急に祖父が亡くなって、息子夫婦に先立たれ寂しいのはよく分かる。両親に先立たれ一人になってしまった私を気遣う気持ちもあるだろう。
しかし、学園に通っているのに郊外にある祖母の邸宅に移り住むというのは、毎日の通学を考えると及び腰になってしまう。
「ありがとう、おばあ様……。でも通学に時間がかかってしまうから卒業までは」
「そう。そうね……。でも、ここは遅かれ早かれ引き払わないといけないのは覚えておいてね」
「え、なんで?」
「海難事故に遭った船には、セレニテス子爵家の領地で収穫された農作物や貿易品が多数、積み込まれていたのよ」
「そ、それは分かるけど、だからってこの家を引き払うのと何の関係が?」
困惑しながら私が尋ねれば、祖母は苦々しそうな表情で視線を床に落とす。
「セレニテス子爵家はオブシディア侯爵家に事業のお金を借りていたの」
「オブシディア侯爵家に、お金を借りてた」
そういえば、母が『今回は事業資金をヨソから借りてるのもあって、積み荷を売って借りていた事業資金を返さないといけない』と言っていたのを思い出す。お金を借りていた相手はオブシディア侯爵家だったのかと、今さらながら理解した。