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「使えます! お父様と、お母さまは私のことを『聖女のようだ』とよく言っていました。もし、私が本当に『聖女』なら、奇跡が起こせるはず!」


「セリナ……」


 私は棺の中で横たわる母に「生き返って!」とつぶやき、願いながら魔力を送り込み続けた。しかし、どんなに魔力を送り込んでも、冷たくなった母の遺体はぬくもりを取り戻さない。


 急激に魔力を消費し、心拍数と息が上がり呼吸が苦しくなる。今まで生きて来て、ここまで連続で大量の魔力を消耗したことは無い。いつか、学園の先生が「子供が連続で魔法を使うと危険」と言っていたのを思い出す。


 せめて少しでも外傷を負っている部位が治癒なりしてくれていれば希望が持てるというのに、血の気が失せた肌は回復の兆しすら見せてくれず母の骸は冷たいまま、傷口が塞がることすら無い。


「なんでっ!」


「もうおやめなさい、セリナ……。これ以上はあなたの命に関わります」


「おばあ様! でもっ!」


「魂の抜けた身体に、いくら回復魔法をかけても無駄です」


「いいえ、もっと魔力を送れば!」


 再び手に魔力を集め、母の遺体に魔力を送ろうとする姿を見た祖母は、いたわしそうに私を抱きしめた。


「例えどれだけ魔力を送っても、死んだ人間が生き返ることはありません」


「そんな……」


「命とはそういう物なのです」


「おばあ様」


「命は一つしかないから尊い物なのですよ」


「一つしかない……」


「お父さまと、お母さまに貰った命を大切になさい。それが何よりの手向けとなるはずです」


「っ!」


 祖母の言葉を聞き、涙が止まらなくなった。どこかで『自分は聖女だから、何とかなるんじゃないか』という甘い気持ちがあった。


 でも、現実はそんなに甘い物ではないのだ。一度、死んでしまった人は二度と帰ってこない。私が無力感に打ちひしがれ、嗚咽をもらしながら涙を流している間、父母と祖父の埋葬はすみやかに行われた。


 常人より魔力が高い私ではあるが、あまりにも魔力を消費してしまった事と、両親と祖父をいっぺんに失った精神的なダメージもあり、祖母にもたれるように墓地を後にした。



 墓地を出ると、私たちと同じく黒い喪服に身を包んだプラチナブロンドの少女ローザと、そのかたわらには弟らしき金髪の少年がいた。


「ローザ……」


「セリナ。私のお父さまの葬儀も、さっき終わったの」

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