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 その時、面会室の木扉が開いて長いプラチナブロンドを揺らしながら、手に何か持ったローザがやって来た。黒髪の女官長ミランダさんはローザと目くばせした後、退室して部屋の中にはローザと私の二人きりとなった。


「セリナ、お願いがあるの」


「何?」


「この手紙を弟に。ケヴィンに渡して欲しいの」


 赤い封蝋がされた手紙を差し出されるが、少し考えてしまう。今のローザの立場は寵妃。仕事優先の私が預かるより、後宮から普通に出した方がローザの弟に手紙が届くのは早い気がしたからだ。


「別にいいけど……。私なんかでいいの? 急ぎの手紙なら、王宮で早馬か何か出してもらった方が早いんじゃ?」


「実はこの手紙には、私が寵妃になったって書いてあるの」


「え、まだケヴィン君には寵妃の件、連絡してなかったの?」


「うん。寵妃になったと言っても名ばかりだし……。正妃と違って、寵妃に関しては公式発表なんてされないからレオン陛下に頼んで、弟への連絡は見送らせて頂いていたの」


「ああ、なるほどね……」



 ただでさえ両親に先立たれ、姉一人、弟一人の姉弟なのに住み込みの職場だった筈の王宮で突然、寵妃として召し上げられ戸惑うローザが弟に何と言うべきか迷っていたのは理解できる。


 まして、実際は寵妃になったとはいえ名ばかりなど普通に考えれば、ありえない話で弟にどう説明した物かと頭を悩ませてしまうのも分かる気がした。


「でも、後宮の皆に挨拶代わりのお菓子を配った以上は、私が寵妃になった事が城下にいる弟の耳に入ってしまう可能性が高くなるだろうし……。人の噂で聞くよりは手紙で知らせようと思って」


「そうね。確かに真偽不明の噂で聞くよりは、ローザから手紙で知らせた方が、ケヴィン君も冷静に受け止めてくれる筈よね」


「ただ、手紙には寵妃になった事と、心配しないで欲しいって書いたんだけど……。それ以上くわしいことを書いて万が一、手紙が第三者に見られると色々、問題があるだろうから。セリナから弟に伝えて欲しいの」


「えっ、私!?」


 ただ手紙を届けるだけなのかと思っていたので名前を出されて驚いたが、ローザは床に落としていた視線を私に向け憂いを帯びた表情を浮かべた。


「正直なところ……。後宮関係者以外で、国王陛下が寵妃として召し上げた私に、何もしてないって事実を知ってるのはセリナだけなのよ」


「そうなの!?」


「ええ。本当はセリナにも、国王陛下との事を話すのはどうかと思って悩んでいたけど……。久しぶりに会ったらセリナは私が寵妃にされて酷い目に遭わされたんだと勘違いして泣いてしまったし……。あの時は誤解を解いて、セリナを泣き止ませる為にも、つい話してしまったのよね……」

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