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 経費で落ちるというなら、代金の心配はしなくて良さそうだ。それにしても今までとケタ違いの大口注文に汗が出る。頭の中で何枚のクッキーを焼かないといけないのか考えるが、これは休みを返上しないといけないのではないかと震えていると、黒髪の女官長は一歩前に出た。


「依頼を受けてくれるなら、ひとつ、お願いがあります」


「はい?」


「あなたの作ったクッキーは形は美しいけど。色味がないので、もっと見栄えするような色を入れて欲しいのです」


「色ですか……」


 着色というと以前購入したコチニールがある。あれを使えば赤色、ピンク色なら簡単に作れる。しかし、原材料のことを考えると、きっぱり使用に踏み切ることに抵抗もあり、どうするか少し悩む。


 すると、黒髪の女官長ミランダさんは持っていた編みカゴの中身を見せてきた。編みカゴの中には赤色、黄色、青色などの粉末が入ったガラスの小瓶、それに植物の根っこらしき物体が入っている。


「そこで、こういう物を使ってほしいのです」


「これは……?」


「王宮に出入りしている商人が東方などから仕入れた物を買い取って、宮廷料理人が料理にも使っている薬です」


「えっ、薬をクッキーに入れるんですか!?」


 唖然としているとミランダさんは黄色い粉末が入った小瓶を手にして、私の眼前に差し出した。


「薬といっても、そちらの黄色い粉が入っている小瓶の原材料は黄色ショウガ。こちらの、赤色の物は『赤根』という赤い根の植物を薬や染料として使っているのです。他のも同様です」


「こんなにいっぱい……。これ全部、食べ物に入れて大丈夫なんですか?」


「ええ。黄色ショウガは普段から米の着色などに利用されていますし、食欲を増進させる効果があり、胃腸や肝臓の健康効果、二日酔いの防止効果があると言われている物です」


 黄色ショウガ。つまり、前世で言う所のターメリックやウコンだ。確かにそれなら黄色の着色料として十分に活用できる品だ。


「この赤い粉末は『赤根』は解熱剤、強壮剤、咳止め、止血効果があると言われています。風邪や生理痛の予防効果が期待できるとされています」


 聞けば、どれも薬として薬効があり、人体に悪影響が無い粉末で、むしろ健康に良いとされる薬効のある粉末ばかりなのだという。


「確かに、これを使えば。カラフルなアイシングクッキーが作れますね……。分かりました。これでカラフルなクッキーを作ります!」

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