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 椅子に座りながら窓の外に視線を向ければ青々とした芝生、手入れされた草花が咲き乱れる広い庭にシトシトと雨が降り続けている。王宮にある最初の門に最も近い、第一の庭。私が眺めているのはまさにそれだ。



「どうして、こうなったのかしら……」


 パティスリー・セリナにやって来た黒髪の女官長、ミランダさんに「良い話がある」と馬車に乗せられ、けっこう強引に王宮に連れて来られてしまった。ケーキが売切れたら早めに店仕舞いして良いと双子に言い残したが、私はいったい何の用件で王宮に呼ばれたのか……。馬車の中でミランダさんに尋ねても涼し気な笑顔で「現地で説明するわ」の一点張り。


 そして通されたテーブルとソファがあるこの部屋で、仕方なく説明を待っているのだが。ミランダさんは一体、いつ戻ってくるのだろうと思っているとわずかに靴音が聞こえて軽いノック音の後、木扉が開けられた。


 高い靴音を響かせて部屋に入ってきた黒髪の女官長の後ろには人影があった。藍玉色の瞳にプラチナブロンドが映える美しい萌葱色のドレスを着て現れた淑女は、私もよく知る人物で唖然とした。


「ローザ!?」


「セリナ! 久しぶりね……。会いたかったわ!」


 久しぶりの再会に、お互い手を取りあいながら喜ぶ。ローザの碧眼には薄っすら涙が浮かんでいるのが見えた。


「私も会えたのは嬉しいけど、何でローザがここに!?」


「え、ミランダ様から聞いてないの?」


「女官長さんには『現地で説明する』って言われてたから……」


「私が説明するよりもローザが説明した方が良いでしょう。私は料理長の所へ行って例の物を取ってきますから。ローザ、頼みましたよ」


 扉の傍にいた黒髪の女官長はそう言うと室内に私たち二人を残して、さっさと立ち去ってしまった。


「どういうことなの?」


「うん。とりあえず、座りましょうか。……私のことから話した方が良いわよね」


 二人ともソファに掛けて向き合い、改めて積もる話を再開する。


「ああ、そうだ。ローザ、侍女見習いはどう? 上手くやってる?」


「侍女見習いについては、見習い期間が終わって一応、侍女になったんだけど……」


「すごいじゃない!」


「でも、そのすぐ後に寵妃になったの」


「は?」


 ありえない単語が聞こえた気がして、我が耳を疑っているとローザが憂いを帯びた瞳で私の顔を見つめた。


「セリナ、私……。今、寵妃として後宮で暮らしているの」


「えっ! 嘘っ!?」


「嘘なら良かったけど、嘘じゃないのよ……」

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