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 おまけに部下だったローザが寵妃となった為に女官長とはいえ、かなり微妙な中間管理職のような立場となっている。しかし、そんなことは露ほども知らないケーキ屋の店長セリナは、とても嬉しそうな表情を浮かべた。


「あ! もしかして女官長さんは、ローザからウチの店を聞いて来て下さったんですか!?」


「そういう訳では……。いえ、間接的にはそうなるわね」


「女官長さん! ローザは元気ですか!?」


 瞳に期待の色を浮かべながら尋ねられ、私は返事に窮する。


「ローザは……。元気と言いたい所だけど」


「えっ! どこか悪いんですか!?」


「それが、精神的に少し落ち込んでいるようでね……。昨晩から、食欲を失ってるみたいなのよ」


 王宮で見聞きしたことは基本的に、王宮外には他言無用ということになっている。しかし、セリナはローザの友人……。寵妃の件はともかく、ローザ個人の健康状態に関しては伝えても問題ないだろう。


 それに、このセリナという娘が心配していたと聞けば、ローザもちゃんと食事を取るのではという打算もあって話せばケーキ屋の店長、セリナから笑顔が消えた。


「昨晩からローザはずっと、ごはんを食べてないんですか?」


「全然という訳では無いけど……。今日の朝食も昼食も、ほとんど手を付けていなかったから、私も心配しているのよ……。今買ったケーキや焼き菓子を、少しは食べてくれたら良いんだけど」


「あ……。そういうことなら、ちょっと待って頂けますか?」


「え? ええ」


 一度、扉の奥に引っ込んだと思ったらセリナは、ごく短い時間でレモンの輪切りが入ったガラス瓶を抱えて出てきた。フタで密封された透明なガラス瓶の中には、輪切りレモンと共に黄金色の液体がたゆたっている。


「お待たせしました! これをローザに飲ませて頂けますか?」


「これは?」


「経口補水液……。というか、水とハチミツと、輪切りレモンに少量の塩を加えた飲料で、体調不良の時に飲むと身体に良い飲み物なんです」


「へぇ。これが?」


「はい。それと、このハチミツ飲料も賞味期限は今日中です」


「……分かったわ」


「あと、ハチミツは水と混ざりにくいので。これは一度、温めてホットはちみつレモンにしてから、早めに飲むようにとローザに……」


「ええ。必ずローザに渡して、貴方の言葉も伝えましょう」


 水とハチミツと、輪切りレモンと塩が材料の飲み物なら、身体に悪いことは無いだろう。昨日から水分も碌に取って無さそうな様子だったローザに飲ませるのにはちょうど良い。私は輪切りレモンのハチミツ飲料を受け取り、購入したケーキや焼き菓子と共に馬車に乗り、王宮へと戻った。

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