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 店員に笑顔で勧められて考える。生ものだというケーキは、まずローザに食べさせるのは当然として、余った分は女官や侍女たちに分けてやれば喜ぶだろう。


 そして明日、明後日も食べられる焼き菓子もあるなら、食欲が無いローザが少し食べたい時、明日、明後日、いつでも摘まめるし、消費できそうにないなら大部屋の側女たちにやれば彼女らは喜んで食べるに違いない。


 特に今回はレオン陛下から直々に金貨を頂いているので、私の懐は一切傷まない。むしろ今買わずに、いつ買うのかという状況だ。



「そうね……。じゃあ、そのクッキーをガラス瓶ごと二つ。はちみつケーキを二つ、一緒に頂くわ」


「ありがとうございますっ!」


「すごいっ! セリナ様の販促が炸裂しました!」


「さすがですっ!」


 猫耳メイド二人が次々とケーキを詰めながらも、小声で妙に盛り上がっているのが気になるが、会計を済ませなければならない。


「合計でおいくらかしら?」


「はい! 全部でお値段は…………」



 ざっと計算して提示された金額は思っていたより、ずっと安価な物だった。倍以上の値段でも全く問題ない気がするが、庶民向けの値段設定ということなのだろう。それにしても、かなりの良心価格で他人事ながら、店の経営が心配になりつつ金貨で支払いを済ませた。


「ああ、箱に詰めたケーキや焼き菓子は、店の外に停めてる馬車の馭者に渡してもらえるかしら?」


「あの馬車ですね!」


「分かりましたっ!」


 猫耳の双子メイドに指示を出すと、二人は重ねたケーキの箱を素早く運んで馭者に渡している。その様子を目を細めながら見守る若草色エプロンの娘を前にして思い出す。


 レオン陛下は確か『セリナ』という娘がローザの友人だと言っていた。そして眼前にいる娘は、猫耳メイドに『セリナ様』と呼ばれていた。ということは、つまり……。


「あなたが、ローザの友人っていう『セリナ』かしら?」


「え? 私は確かにセリナですけど、お客様はローザをご存じなんですか?」


「私は……。王宮で女官長をやっているミランダと申します」


 自らの身分と名前を明かすと、セリナという娘は目を見開い唖然とした。


「女官長!? 確かローザは王宮の侍女見習いで、女官は侍女より偉い人だから。……女官長ってことは、すごく偉い人なんじゃないですか!?」


「すごく偉いという程ではないと思うけど……。まぁ、立場的には、侍女や女官の上司になりますね」


 何しろ、国王陛下の命令で下町のケーキ屋にお菓子を買いに行かねばならないような身分だ。これが果たして『すごく偉い』と言えるのか甚だ疑問だ。

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