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「いえ、今のローザにドレスを贈るのはある意味、宝飾品より好ましくないかと」


「そうなのか?」


 何しろ男性が女性にドレスを贈るのは『あなたにそのドレスを着せて、脱がせたい』という意味合いもある。寵妃になったローザが国王陛下からドレスを受け取れば、そちらの意味を深読みせずにはいられないだろう。


 王太子時代には浮いた噂が無く品行方正だと言われていたが、まともに女性と付き合っていなかった為に、このような弊害が生まれていたとは夢にも思わず天を仰ぎたくなる。


「親密な女性への贈り物に、宝飾品やドレスを選ぶのは決して悪くないと思いますが、ローザは未だ寵妃となった事実に戸惑っておりますので……。高価な贈り物はローザの心がもう少し、落ち着いてからの方がよろしいかと……。別に高価な物じゃ無くても、陛下がローザのことをよく考えて選んだ物なら喜ぶと思いますし……」


「ローザが喜ぶ物とは何だ?」


「そうですね……。例えば、花束とか」


 多くの女性は花を贈られれば喜ぶ。花ならば観賞用に部屋に飾っておけるし、日が経てば枯れる物だから高価な宝飾品やドレスに比べれば、かなり受け取りやすいだろう。


「薔薇の庭が見える部屋にローザは居る訳だが、さらに花束を贈って喜ぶのだろうか?」


「花束以外の方が良いかもしれませんね……。しかし、ローザは食事も碌に咽喉を通らないほど気が塞いでいるようですから、プレッシャーがかかるような物を贈るのは逆効果かと……」


「そうなのか?」


「はい。昨晩から、今日の朝食、昼食も、ほとんど手をつけておりません」


「ローザは体調が優れぬのか?」


「病気とまでは行きませんが、心因的なことが原因の食欲不振ですね」


 そう告げれば、金髪の王は顎に指を当てて考え込んだ。


「食欲不振か……。そうだ! ローザの友人が、ケーキを販売する店をやっていると言っていた!」


「え?」


「確か『セリナ』という名前の者だ。食欲不振でも、気心の知れた友人が作った物なら口にするのではないか?」


「それは……。そうですね。確かにその可能性は……」


「うむ。では、これで『セリナ』という者のケーキを買いに行って、ローザに食べさせてやってくれ」


「私がですか!?」


 驚きながらレオン陛下が差し出した小袋を両手で受け取る。この重み、中身は間違いなく金貨であろうと感じながら唖然としていると金髪の新王は、さも当然という顔をした。


「余はこれから公務がある。ケーキの件、頼んだぞ女官長」


「は、はい……」


 国王陛下から直々に命じられれば選択の余地など無い。私は一礼して国王執務室を後にした。

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