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「……ローザを、寵妃に?」


「ああ。後宮に寵妃の部屋を用意してくれ。薔薇の庭が見える部屋が良いな。空いていたか?」


「はい、空いております。……ですがローザを寵妃とする件、本人には?」


「今晩、後宮でローザに直接話す」


「かしこまりました。早急に部屋を整えます」



 頭を垂れて国王執務室を退出した私は、靴音を鳴らしながら足早に白大理石の廊下を歩いた。そしてジョアンナと共にいたローザに自室の手荷物をまとめるよう告げ、女官には後宮へ寵妃を入れるため、部屋を整えるよう指示を出す。


 幸い、いつ側女が格上げされて寵妃になっても良いよう、後宮には寵妃用の部屋が常に複数用意されている。その中の一つに薔薇の庭が見える部屋がある。そこをローザ用にするだけだから部屋の用意自体に時間は然程かからない筈。そんなことを思案していると手荷物を持ったローザがやって来た。



「ミランダ様。ご指示通り、手荷物をまとめましたが?」


「じゃあ、こっちに来てちょうだい」


 ローザの荷物はカバン一つ分と少なかった為、まとめるのも時間がかからなかったと見える。こちらも今は、時間がないのでありがたい。手荷物を持ったローザを伴って後宮へと向かう道すがら、不安げな表情のローザが私の顔色を窺う。


「あの、ミランダ様。私は侍女を解雇されて、王宮を出て行かなくてはいけないのでしょうか?」


「ローザ。あなたは解雇された訳ではありません。……ただ、今度は後宮に入って貰うことになったのです」


「後宮に? 私は後宮で侍女の仕事をするのですか?」


「いいえ。もう侍女の仕事をやる必要はありません」


「では、何のために後宮に?」


「国王陛下の勅命です」


「陛下の勅命? 何故、私が?」


「ローザ……。落ち着いて聞きなさい。レオン陛下はあなたを寵妃にするとおっしゃられました」


「私が寵妃!? そんな……。何かの間違いでは?」


 驚愕し、信じられないといった表情のローザに、こちらも少し戸惑う。


「いいえ。間違いではありません。あなたを後宮に移すというのは、陛下から直々に指示されたことです。陛下はあなたのことをご存知でしたよ。ローザ、あなたも身に覚えがあるのでは?」


「身に覚えなんて……。レオン様が王太子の時に偶然、私の部屋に入って来られたことがあって。その時に少し、話をしたことがあるだけで……」


 困惑しながらローザは語ったが成程、その時に陛下はローザのことを見初めたのだろうと納得した。プラチナブロンドの髪に藍玉色の瞳。化粧っ気のない娘だが、白い肌は新雪を思わせるような透明感があるし、きちんと化粧を施して着飾れば、そこらの美姫にも決して見劣りしないだろう。


「とにかく、あなたを後宮に移すのは王命であり、決定事項です。ついて来なさい」


「は、はい」

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