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その後、招集された重臣たちによって今晩にも、王太子レオン殿下が即位の儀をすること。ライオネル王の国葬の日程。戴冠式の式典を半年後にするなどの予定が速やかに決定が下された。
そして、会議の場では王太子妃候補についても議題に上り、伯爵令嬢フローラが王太子殿下の婚約者となる事と同時に、伯爵令嬢フローラとの結婚も戴冠式と同日に行われる事が確定した。
しかし、自分が不在の間に会議で婚約と結婚の日程を決められたと知って、金髪の王太子はリオネーラ王妃や宰相の前で大いに激怒した。
「何故だ! 父上が逝去された今、私が新王のはずだろう!? 何故、私の承認を得ずに伯爵令嬢を婚約者に決めたのだ!?」
「私が伯爵令嬢フローラを婚約者とすることに承認しました」
リオネーラ王妃が眉ひとつ動かさずに告げれれば、王太子殿下の琥珀色の瞳が怒りの色を帯びた。
「母上!? 何故ですか! 父上が逝去されて間もないというのに、私の結婚など……!」
「だからこそです! あなたが婚約者候補の件を乗り気で無かったのは、この私も存じています。あなたが王となれば、自分で婚約者を決定し、結婚するのがいつになるのか皆目、見当もつきません。だからこそ戴冠式の前に婚約者を選んであげたのです!」
「レオン殿下は次期国王であらせられる。ですが戴冠式どころか、即位の儀すら終えられていない現状、王妃であるリオネーラ様のご意向が優先されます」
「くっ!」
王妃と宰相に反論され、金髪の王太子は悔しそうに唇を噛んだ。実際、ライオネル国王が逝去されたとはいえ、厳密に言うと自身の立場が王太子のままであるレオン様より、王妃リオネーラ様の方が身分も発言権も大きい。今の段階で王太子が王妃の決定に逆らうことは許されない。
「何をそんなに嫌がっているのですか、レオン? 伯爵令嬢フローラは王立学園を首席で卒業したほどの才媛で、しかも高い魔力を持っているというではないですか?」
「しかし、私は……」
「伯爵令嬢フローラを愛していなくても、世継ぎの王子さえ作れば良いのですよ。レオン」
「そんな……」
「伴侶を周囲の者によって決定されるのに、抵抗があるという気持ちは理解できます。ですが、母や重臣たちも吟味に吟味を重ねて、これぞと思う婚約者を選定したのです。私たちの気持ちも汲んでおくれ」
「母上……」
「そなたは王となる身。もし、伯爵令嬢フローラが不満ならば、後宮にいる側女の中から適当な娘を見繕って伽をさせれば良い。これぞと思う者がいれば寵妃を持つのも良いでしょう。それで、子供が生まれれば母も嬉しく思いますよ……。子宝は多い方が良いですからね」
にこやかに微笑む王妃リオネーラ様と対照的に、王太子殿下は苦々しい表情をしていた。