表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/449

183

『セリナへ


 前に街中で会った時、王宮で侍女見習いをするのが決まったって言ってたでしょう。実はあの後、人手が足りないからって予定より早く王宮に入って住み込みで働くことになったの。


 慣れないことも多いけど、私は侍女見習いとして何とか頑張ってます。最後に会った時はセリナがお婆様を亡くされたばかりの時だったし一度、王宮に入ると会いにくくなるのは分かっていたから、その前にゆっくり話がしたいと思っていたんだけど難しくなってしまったわね……。


 その代わりと言ってはなんだけど、私が元気にしてるってことを伝えたくて、こうして手紙を書いたの。手紙は弟のケヴィンに預けるわね。セリナが健やかで過ごしていることを祈ってるわ。


 ローザより』



 手紙を書き終わった私は羽ペンに残っていた没食子インクを布で綺麗に拭き取り、インクが渇いたのを確認して封筒に入れて王宮内にある、住み込み侍女用の部屋を出た。


 父が亡くなってから叔母の親戚が王宮で女官をやっていたこと、王宮の侍女職に欠員が出たことなどが上手く重なって私は侍女見習いとして王宮で働くこととなった。


 一応、知っていたつもりの知識でも実際に王宮で働くに当たって慣れるまでは緊張の連続だった。王族や明らかに目上の方、身分が高い方が通路を通るときは壁際に下がり、相手が通り過ぎるまで頭を下げる。


 目上の方に呼ばれたら、相手に顔を上げて良いと許可を出されるまで頭は垂れたまま控える。この辺りは無意識の動作として出来ないといけない上、きちんと出来ていない場合はマナーの基礎がなっていないと上役に叱責される。


 叱られるくらいで済むならいいが最悪、解雇されることもありうるだけに、いつも気が抜けない。もっとも、明らかに目上の……。例えば王族の方と直接、話をする機会はなどほぼ無いので私は通路などで王族の方を見かけた際には、上役である女官がするのと同じように頭を下げているだけの状態が続いている。



「今は侍女見習いということで、上役である女官の指示に従って言われた仕事をしてる状態だけど。見習い期間が過ぎて侍女になったら何かと大変そうね……」


 王宮内の長い通路を歩きながら、今朝のことを思い出す。金獅子国の第一王子である、王太子レオン殿下の婚約者候補として王宮に呼ばれた貴族令嬢達の魔力が、それぞれどれほどの物であるか金獅子国の重臣たちや王太子本人、王族の前で披露するということが行われた。


 上役であると同時に、私の叔母の親戚に当たる女官ミランダ様。同じ侍女見習いであるジョアンナと共に、王宮の敷地内にある屋外演習場の片隅で王太子妃候補たちが次々と自慢の魔法を披露する様子を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ