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「利益率の高い商品と言うと?」
「ふむ。お嬢ちゃんの店で一番やりやすいのは飲み物じゃろうなぁ」
「飲み物ですか? 確かにケーキと飲み物はセットで出したら確実に需要があるとは思いますが、あの店だと飲食スペースが無いので……」
「うん。店の中では無理でも、外なら飲食スペースが設けられるんじゃないかい?」
「外って……。あっ! なるほど!」
屋外にテーブルとイスを置いて、オープンカフェという形式にすれば飲食スペースが確保できる。幸い、ウチの店舗は噴水広場に面している。あの噴水広場のスペースを有効活用してケーキセットを出せれば店舗の利益率は大幅にアップするだろう。
「確かに、それなら飲み物が出せますね!」
「そうじゃろ? しかし、外で飲食スペースを設けるなら役所の許可がいるぞい?」
「役所の許可ですね! じゃあ、今日の仕事が一段落したら早速、行ってみます! ラッセルさん、ありがとうございました!」
店舗に帰った私は追加のケーキを作って、早めに仕事を切り上げると店舗前の公園広場にテーブルやイスを置いて飲食営業できる許可をもらうために役所へと足を運び、窓口にいたチョビヒゲの役人に思いのたけをぶつけた。
「という訳で店舗の前に飲食スペースを設けたいんです! できれば、噴水広場にテーブルやイスを設置させて頂きたいんですが!」
「噴水広場で飲食営業の許可ねぇ……。無理だね」
「何でですか!?」
私が食い下がれば、役人は呆れ顔で大きな溜め息をつく。
「あんたねぇ……。百歩ゆずって、店舗の真ん前だけならともかく、噴水広場にテーブルとイスを設置したいってのは図々しすぎるよ? ああいう場所は公共の場って分かるだろう?」
「それは、そうですけど。テーブルとイスを設置すれば、誰でも気軽に休めますし……」
「ダメだね。おまえさんの店が利益を得るためにテーブルとイスを設置する許可を、俺の一存で出すわけにはいかないんでね」
「あなたの一存で許可を出せないというなら、誰の許可をもらえば良いんですか?」
「フン。もらうなら、もっと上の許可に決まってるだろう?」
「上の許可っていうと?」
「国王陛下や宰相なら一発で許可が出るだろうね」
「こ、国王陛下……」
「ハッ、無理だろう? さっさと諦めて帰りな」
チョビヒゲの役人に鼻で笑われ、アゴで出口から帰れとうながされるが、ここまで来たのだからタダで帰る訳にはいかない。
「ちょっと待ってください! じゃあ、店舗前のスペースだけでも飲食営業の許可を!」
「店舗前のスペースを利用する許可は出せない。通行のジャマになるからな」
「通行のジャマになんかならないですよ! だって、目の前は噴水広場なんですよ!?」
「うるさい! こっちは仕事が忙しいんだ! 小娘のワガママに付き合ってるヒマは無い! とっとと帰れ!」