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「それは娘としては当然、心配になるわよね」


「でも、お父様は『ウチみたいな下級貴族は単身で充分だ』って……」


 自分の領地とはいえ、遠方に行くとなると何かと旅費や経費がかさむ。出費を抑えるなら必要最低限の人数、つまり一人で行くのが最もお金がかからない訳で、節約したいのであろうクオーツ男爵の気持ちも理解できる。


「領地って南方の?」


「うん……。あ、そういえばセリナの家の領地も南方だっけ?」


「そう、セレニテス家が持ってる南方の領地は、クオーツ男爵家の領地と近いって以前、お母さまが言ってたわ」


「領地が近い……」


 くちびるに指を当てて考え込むローザに、それならばと提案する。


「ねぇ、ローザ。そんなに心配なら、ウチのお父さまと一緒に領地へ向かえば良いんじゃないかしら?」


「え!? それは、ありがたいけど……。良いの?」


「うーん。聞いてみないと分からないけど毎年、お父さまも領地には行ってるし……。日程さえ合えば一緒に行けるんじゃないかしら?」


「ぜひ、お願いしたいわ! 私もお父さまにセレニテス子爵家とウチの領地が近いこと、話しておくから」


「うん。じゃあ、ウチのお父さまが了承してくれたら、また伝えるわね」



 前世のように自動車や電車、飛行機があるわけではない、この世界では交通手段は馬、船がメインだし、スマホや携帯電話も無いため一度、遠方へ旅に出ると連絡も取りづらい。


 ローザが不安になる気持ちはよく分かる。まして母親を亡くしていて、父親しかいないというならば尚更だろう。私も自分の父が領地に行く際、ローザの父と一緒なら心強い。


 これは一石二鳥だと、学園の授業が終わって自宅に帰った私は早速、居室でお茶を飲みながら書類に目を通していた父に事情を話す。



「お父様、ただいま帰りましたわ」


「セリナか。お帰り」


「あの……。実は親友のローザが、父親のクオーツ男爵が一人で南方の領地に行くことを心配してるの」


「クオーツ男爵が一人で……。まぁ、単身の方が経費はかからないからな」


「お父さま、もし良かったら途中まででもクオーツ男爵に同行できないかしら?」


「同行?」


 突然の話に驚いた父が、軽く目を見開く。


「クオーツ男爵と、我がセレニテス子爵家の領地は近いんでしょう?」


「ああ、確かにそうだな」


「片道の途中までだとしても、同行者がいるならローザも安心すると思うの」


「ふむ……」


「お父様も毎年、領地に行ってるし。時期が合えばと思ったんだけどダメかしら?」

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