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 一通り、ケーキを入れ終わった後、正面からショーケースをながめて私は腕を組みながら、まゆをしかめた。そんな時、階段から下りてくる足音が聞こえてくる。


「あ、おはようございます。セリナ様~!」


「セリナ様。おはようございます~!」


「うん。おはよう」


 笑顔の双子メイドと朝のあいさつを交わせば、猫耳の双子は大きな瞳を輝かせてショーケースの中をのぞき込む。


「うわ~。今日もケーキがキレイですね~!」


「本当! どれも美味しそうです~!」


「うーん。でも、ちょっと足りないと思うのよね……」


「え?」


「足りない?」


 どうやらルルとララにとっては何ら気になっていないようだが、実は個人的に気になっていたことがあるのだ。


「色が、ね……」


「へ?」


「色ですか?」


 私の発言の意図がイマイチ分からないらしく、小首をかしげて戸惑う双子に説明する。


「ええ。ショーケースの中にあるケーキってチーズケーキやパイは黄色、茶色系。ブルーベリーは青紫。フルーツケーキにはブルーベリーや柑橘系、皮付き赤リンゴを少し使用してるけど、これだけケーキが並んでるのに赤色はフルーツケーキに使われてるリンゴの赤色、少しだけなのよねぇ」


「言われてみれば……」


「確かに……」


 意図が伝わり、双子もショーケースに並ぶ複数種のケーキを眺めながら納得する。アップルパイに関してはリンゴの皮むいているため、色的には完全に黄色、茶色系で赤とはほど遠い。


 しかし、いくら赤色が欲しいからといっても、皮付きのリンゴを出すのはフルーツケーキで使用してる薄切りが限界だろう。


「食べ物って、パッと見た時に暖色の方が印象に残ると思うし、食欲も増すと思うのよ」


「だんしょく?」


「温かい系統の色のことよ。赤とか黄色とか」


「ああ、なるほど……」


「確かに赤とか黄色系の食べ物は、食欲が出ますね」


 赤色の果実であったり、肉や赤身の魚など、赤は食欲を増進させる色だ。そして黄色も、こんがり焼けたパンやパイ生地などを連想させて食欲をそそる色である。


「うん。逆に寒色系は、どちらかというと食欲が出ない色なのよね」


「かんしょく?」


「暖色の反対で寒いのを連想させる色よ。水色や青色とか」


「確かに、青い食べ物って聞くと……」


 ルルが苦笑いしながら言葉をにごすが、青い食べ物というのは自然界に少ない。それこそ青カビなどの細菌が繁殖した物を連想させる色のためか、場合によっては視覚で青色の食品を認識すると生理的に脳が一時、これは食品であるという認識を拒絶するような気さえする。

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