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秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!  作者: 中野莉央
『パティスリー・セリナ』開店日
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 果物屋の露店で、真っ赤なリンゴや緑色のナシ、美味しそうなイチジク、青いプルーン、紫色のブドウ、黄色く輝く柑橘類が山盛りに盛られているのを見ながら、何を購入するか考えこんでいると果物屋の店員に笑顔で話しかけられる。


「いらっしゃい! お嬢ちゃん! 何を探してるんだい?」


「うーん。出来るだけ日持ちする果物を……」


「日持ちするヤツかい? それじゃあ、リンゴとかどう?」


「そうですね……」


 悩んだ結果。比較的、日持ちがするリンゴやナシ、レモンなどを中心に購入した。これなら、売れ行きが悪くてケーキに使用しなかった場合、さらに翌日に使えるからだ。


「こんな後ろ向きに、果物を購入することになるなんて……」



 しかし、日持ちしない生洋菓子を販売している以上、当日中に販売しきれなかったケーキについては基本的に廃棄処分となる。


 数が少なければ、もちろん私や双子が食べるという手もあるが、今日のようにショーケースいっぱいに作ったケーキが仮に、ほとんど売れ残ってしまった場合はとても三人で食べきれる物では無い。


「今日は店舗オープンの初日だし。あまりにも売れないようなら、日が暮れる前に『試食』と称して店頭に通りかかった人に食べてもらおうかしら……」


 一度でも食べてもらえば、美味しい物だと分かってもらえるはずだし、丸ごと一個じゃなくて一切れをさらに、一口分にカットした状態で試食してもらえば「もっと食べたい」と思った人が購入してくれるかもしれない。


「それとも、売れ残った量にもよるがタダでご近所に配るべきか」


 一度はそう考えたが、やはりそれはダメだと首を横に振る。今回だけ、売れ残った時だけのつもりでも、ひとたびタダで配ってしまえば、ご近所の方から『ケーキはタダでもらえる』というのが当然になってしまい、客として来店して購入してくれる望みが無くなってしまうかもしれない。



「でも、お世話になってるご近所のラッセルさんや、魔道具屋のコルニクスさんあたりなら、タダでおすそわけしても……」


 いや、ラッセルさんは最近、肉よりもあっさり目の魚が好きだと言っていたし、高齢の老人に好きかどうかも分からない売れ残りのケーキを押し付けるのは、ありがた迷惑かも知れない。


 コルニクスさんにしても、あの人が甘い物を好むようには思えない。逆に甘い物が嫌いな場合、触れなくて良い逆鱗に触れそうだ。やっぱり、売れ残ったからと言って、相手の嗜好が分からないのにケーキを渡すのは止めておいた方が良いように思える。

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