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「そうだな。聖女が見つかれば、国で保護しないといけないし、ハーレムに入れてやれば一石二鳥だな。聖女が見つかって、その時に俺が国王なら聖女をハーレムに入れるだろうな」
「でも、獅子王家のハーレムって確か、代替わりしたら前王の子供は殺されるんだよな?」
「ああ。まぁ、それが獅子王家の宿命だからな」
血の気が引く思いでダーク王子と取り巻きの会話を聞いていた私はその後、学園内の図書館で獅子王家について調べた。すると、恐るべき事実が明らかになった。
金獅子国の王様はハーレムを作って複数の女性に子供を産ませるが、王様がほかの獅子王家の男性に殺害されたり、追放された場合、前王のハーレムにいた複数の女性はそのまま、次の王がハーレムを受け継ぐ形になるのだという。
そこまでなら、あくまで国王の座を狙う者同士の争いで歴史上、よくあることだと理解できるのだが問題はその後だ。金獅子国王がほかの獅子王家の男性に負けた場合、ただ次の王にハーレムが引き継がれるだけではなく、前王とハーレム女性との間に生まれた子供は、残らず次の王に殺害されてしまうのだ。
たとえば、私が『聖女』であると発覚した場合、強制的に金獅子国王のハーレムに入れられる可能性がある。もしハーレムに入れたら、私が獅子国王の子供を産むのは時間の問題だろう。
しかし、金獅子国王の子供を産んでも、それで私と子供が一生安心という訳では無い。ほかの獅子王家の王位継承権がある者が獅子国王の命を狙う。
そして国王が倒されれば、国王の子供を産んでいた場合、私は自分の子供を殺害された上、その子供を殺した男に犯され、また子供を産むことを強要されるのだ。
獅子王家に生まれていれば、ダーク王子のように「獅子王家の宿命だ」と割り切れるのかも知れないが、きっすいの人間で、前世の記憶もある私には、とても理解できないし理解したくもない運命である。
ちなみに図書館の本でこの金獅子国の歴史を見ると、現王ライオネルは前王レーベの弟という立場で、前王を殺害して現王の座を手に入れ、その際に前王のハーレムを引き継ぎ、前王レーベとの間に生まれていたハーレムの子供は慣習に従い全員、殺したのだと記されている。
そして、現在の王位継承権第一位である王太子レオンには弟が複数いる。つまり、仮にレオン王子が国王になった後、彼の座を狙う存在が複数いるということなのだ。