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 それにしても、一階の店舗スペースにいると、まだ開店日前だというのに興味津々な様子で窓の外からのぞいてくる人が多い。これには私も双子も面食らう。


「セリナお嬢様、なんだか……」


「このお店って、ウワサになってるみたいですね」


「うん。お肉屋さんとか、不動産屋さん、仕立屋さんとかに宣伝広告を貼ってもらったりしたんだけど、興味を持ってくれた人が、結構いるみたいね」


「この分なら、セリナお嬢様のお店は間違いなく客が入りますね!」


 嬉しそうに微笑む双子に、私は大事なことを言ってなかったと気付いた。


「あ、その呼び方なんだけど……」


「え?」


「お店がオープンしたら、店舗で『セリナお嬢様』って言うのはやめてね」


「セリナお嬢様って呼んだら、ダメなんですか!?」


「それじゃあ、私たちは何てお呼びしたら良いんでしょう?」


 どう呼ぶべきなのか皆目、見当がつかない様子で困惑する双子に、私は苦笑する。


「一応、ここの店長だから普通に『店長』って呼んでくれたら良いわ」


「店長ですか……」


「が、がんばります」


 今まで、ずっと『セリナお嬢様』と呼んでいたのだから、ルルとララにとっては違和感がすごいだろうけど、ケーキ屋の店頭で働いている売り子が、ケーキを作ってる人間を『お嬢様』と呼ぶというのは、お客さんもビックリするだろうし避けたい。


 やはり、無難に『店長』と呼んでもらうのが一番だろう。そう思っていた時、不意に外から店舗のドアが開けられた。


「あの、すいません……」


「あ、お店のオープンはまだなんですけど……。ってレイチェル?」


 てっきり店舗がオープンしたのだと思った人かと思いきや、そこにいたのは針子の少女レイチェルだった。


「こんにちは、セリナさん。今、大丈夫ですか?」


「ええ。もしかして、アレが出来たのかしら?」


「はい。セリナさんに頼まれてた魔石のカスを袋詰めした物、百個できあがったので持ってきたんです」


「わぁ、ありがとう! 助かるわ!」


 針子の少女レイチェルは持参した袋を店舗のカウンターに置き、中身を見せてくれた。袋の中には氷魔石のカスをつめた小袋、百個がつまっている。


 袋はそれぞれがしっかりと密封され、表面に『保冷用です。食べられません』という赤文字も入っている。みごとな仕事っぷりに、やはりプロに頼んで正解だったと感心する。


「それと、もう一つ頼まれてた物も……」


「出来たの!?」


「はい、無事に出来ました。こちらです」


「開けても良いかしら?」


「もちろんです。ご確認お願いします」

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