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気が進まないながらも、私はコルニクス魔道具店のドアを叩いた。
「すいません~」
きしむ木製トビラを開けて中に入れば以前、来店した時は薄暗かった内部が、今日は明るい。見ればランプを灯して、カウンターの台で、黒髪の店主がザリザリと音を立てながら何やら作業をしているようだ。
「あの、コルニクスさん……。ちょっと良いですか?」
「チッ。てめぇか」
「す、すいません……」
「作業中なんだよ。見て分からねぇのか」
相変わらず、目の下に黒いクマを作って寝不足そうな店主は、私を一瞥した後、いかにも面倒そうな表情で舌打ちした。
思わず反射的に謝罪の言葉が出てしまったが、客として来たはずなのに何故、私は謝っているのだろうか? むしろ客として相応の態度を取っていいはずなんじゃないか? という疑念もわいてきた。
「でも今日は一応、客として来たので……」
「ほぉ? 何が欲しいんだ?」
青い石を研磨していたコルニクスさんは手を止めて、カウンター上に積もった青い石の削りカスを手で一払いし、床に置いてある木箱に落とすと、ようやく視線をこちらに向けた。
「実は先ほど、ラッセルさんに会った時に、コルニクスさんが『保冷箱を作ってくれた』という話を聞きまして……」
「ああ。そういやぁ、あのクソジジイが『魚を冷やす道具を作ってくれ』と言って時に、作ってやった事があったな」
「私も新店舗を始めるに当たって、保冷が必要な商品や材料があるので……。コルニクスさんにショーケースや材料を保冷する、道具を作ってもらえないかと思いまして……」
「なるほど。用件は分かった」
「作って頂けますか?」
「ああ。作ることはできる」
「やった! ありがとうございます!」
私は喜んで感謝を伝えたが、コルニクスさんは冷淡な瞳で軽く首をかしげた。
「それで、金は払えるのか?」
「え、それはもちろん、お支払いしますが。……おいくらですか?」
「そうだな。ショーケースと保冷庫に冷却効果がある魔道具を設置した場合、経費と技術料で価格はこんな所だな」
コルニクスさんが計算しながら紙に数字を書き込み、はじき出した合計金額を見せてくれたが、私はその金額に我が目をうたがった。
「こ、この金額ですか!?」
「ああ」
「いくら何でも、高すぎませんか!?」
考えていた金額より、はるかに高い。とても購入にふみきれるレベルでは無い。私が抗議するとコルニクスさんは、みけんに深いシワを寄せた。




