22話
楽しかった(一部の人だけ)体育祭から一ヶ月程が経過したある日
「また唐突で済まないが、再来週に期末試験をすることに決まった」
「…っしゃい!」
「何を勘違いしているディラン生徒、言っておくが期末試験は筆記だからな」
「……へっ?」
そ、そんなヴァカな…だって中間試験がアレだったんだよ?なのに急に筆記て、嘘だろおい
「入学時に既に説明されているが……まあ、お前が聞いている訳が無いか」
「よくお分かりで先生」
「はぁ、全く……ああ、因みに科目は歴史と計算技術だ」
「え?それだけなんですか?もっとほら、戦闘理論とかは?」
「異能科は色々と複雑でな、他の科と違って共通する科目が無いんだ」
ああ、成程ね…騎士科は戦闘、魔法科は魔法っていう共通のものがあるけど異能科ってのはそういうものが無いのか
「そのため、他の科は配点が100・100・100のところが150・150にとなる」
「へぇ…え?重くね?」
「あと試験の範囲だが、歴史は12~60ページ…計算技術は2~75ページだから留意しておくよう」
「「「「「「「えっ!?範囲広っ!!」」」」」」」
一年一同の声が合わさり、教室に響いた瞬間だった
…ってか待って、本当に範囲広過ぎじゃね?
放課後
「何あの範囲、学園からの殺意しか感じられないんだが」
「流石にあの範囲はエグ過ぎるわよね」
「……まあ、頑張れよオリヴァー」
「やめろよその哀れみの視線!」
にしても、あの範囲はエグ過ぎると思うんだが…しかも二つしか試験教科が無くて得点が重いってのに
そんな所へソフィアさんがやって来た
「まあ、本来数年かけてやるべき事を四年ちょっとで終わらせようとしてるからね」
「何でそんなに超特急何ですかね、オリヴァー君泣きそうだよ本当……」
「それよりディラン、貴方は余裕そうだけれども大丈夫なのかしら?」
「まあ俺は……と言うよりどうしたんですか?急に声かけるなんて」
「あの範囲見たでしょ?だから毎年、放課後にこの教室で勉強会をしてるのだけれど…参加する?」
「「します!」」
「そう、分かったわ…それで、ディランはどうするの?」
「んー…面倒くさそうなんで止めときます」
「……はぁ、まあ貴方ならそういうと思ったわ…精々テストで後悔しないようにしなさいよ」
「分かってますよ…じゃ、お先に帰りますね」
そう言いながら教室を出ていく、取り敢えず眠いし帰って寝よ
「本当に帰っちゃったわね」
「まあアイツはあんな感じですから放っておいて大丈夫ですよ」
「……そう、じゃあ人も集まってきたみたいだしそろそろ始めましょうか」
「因みに誰が講師をするんですか?まさかツツジ先生じゃ無いですよね」
「そんな訳ないじゃない、私とカルロスよ」
という訳で幕が上がった異能科勉強会
各々、自分の勉強を始めていく…カルロスは教室内を巡回するように歩いており、ソフィアはオリヴァーとレヴィの所にいた
「ああそうそう…ここの学園、計算技術の問題は本当にえげつないから徹底的に勉強しなさい」
「うげっ!?マジっすか…あんなもん良くやりますね〜」
「もうダーリン、計算技術は何処へ出ても役立つのよ…覚えておいて損は無いわ」
「うぐっ……わ、分かってるよハニー」
「ダーリンは…私が手取り足取り教えてあ・げ・る」
「頼んだぜハニー(激イケボ)」
「……まあ、オリヴァーはレヴィに任せておいて大丈夫そうね…私は他の子達を見てきましょう」
こうして、試験当日まで殆どの異能科生徒達は放課後に教室で勉強会をしていた
「あ゛あ゛〜もうダメだ…頭がパンクする」
「もう、頑張ってダーリン…ちゃんとご褒美あげるから…ね?」
「OKハニー、俄然やる気が出てきたね」
「……あの二人はアレでいいのかしら…まあ、何となく大丈夫なような気はするけど」
そして13日が過ぎた、ディランは一度たりとも勉強会に顔を出すことすら無かった
流石のソフィアもほんの少しだけ心配の色を見せた
「……本当にディランは大丈夫なのかしら」
「まあ気にすることはないと思うぞソフィア、ディランはディランでもしかすると勉強しているのかもしれないからな」
「……貴方はそう思うかしら?カルロス」
「………自分で言っておきながら些か信じられないな」
「でしょうね、寮に帰り次第スグに眠りにつく様子しか浮かばないわね」
「まあ、ここで壊滅的な点数をディランが取れば少しでも反省を感じさせることができるかもしれん」
「…はぁ、まあそうよね…馬鹿にはいい薬になるわ」
そして次の日、試験日を迎えた
教室内はやけに重苦しく、皆表情から読み取れるくらいに緊張していた
まあ、例外もいるようだが
「ちょっとディラン、貴方ちゃんと勉強してきたのかしら?」
「俺がするように見えますかソフィアさん」
「……だろうと思ったけど、一応聞いただけよ」
「分かってるじゃないですか」
「はぁ…もう、本当にどうなっても知らないわよ」
そう言い、ソフィアは自席へと戻っていった
するとタイミングを見計らったかのようにツツジが教室へ入ってきた
「静かにしろお前ら、これから計算技術の試験用紙を配る…合図があるまで見るんじゃないぞ」
お決まりの台詞を言い、紙を回していく
「全員に行き渡ったな、試験時間は60分とする……あぁ、あと…カンニングや不正行為をした者は……言わずとも分かるな?」
一斉に皆勢いよく頭を縦に振る、それ程ツツジから滲み出るオーラが凄まじかったのだ
まあディランは「ははっ、怖〜」だけで済ましていたようだが
「そろそろ時間だな……では始め」
ツツジの合図と同時に皆ペンを走らせる
が、スグに一部の者以外はペンが止まる…何故か、それは簡単な話
問題がえげつないということである
しかしながらソフィアは順調にペンを走らせていく、まあ優等生のソフィアからすれば造作もないことの様だ
不意にディランの事が頭を過ぎり、なんとなく気になってしまった
顔を上げ、斜め後ろ方向に座っているディランの方をチラッと見る
まあ予想通り既に机に突っ伏していた、はぁ…と溜息をつき問題の方へ視線を戻すソフィアであった
一方オリヴァーとレヴィはと言うと、オリヴァーは初めの書き出しは良かったのだが徐々に問題が難しくなっていき四苦八苦していた
レヴィの方はソフィアと同じ様に順調にペンを進めていったり、偶に手を止めたりという様子だ
そして遂にオリヴァーは机へと突っ伏してしまい、それを隣から見ていたレヴィは口パクで「頑張ったね」とオリヴァーへ送っていた
因みにオリヴァーは小さく親指を立てた
相変わらずどこまで行ってもバカップルなのである
「そこまで、全員ペンを机に置け」
鐘の音と共にツツジの声が静かだった教室へ響く
皆指示通りペンを置き、顔を上げ始める…そして後ろから答案を前へと回していく
「……よし、全員分あるな…ではこれから15分間は休憩とする、時間になったら自席へ戻っておけ」
そう言って教室から出ていくツツジ、それと同時に一気に教室が騒がしくなった
やれあの問題はどうだのやれこの問題は簡単だった
などとありきたりでありふれた話をし始めたのだった
「それでダーリン、どうだったの?」
「まあ任せとけハニー…恐らく大丈夫だから」
「その台詞を言う人は大体、大丈夫じゃないのよ」
「あ、どうもソフィアさん…そう言えばディランの奴は?」
「あそこで寝てるわよ…はぁ、試験始まって15分後にはもう既に寝てたのよ」
未だに突っ伏して爆睡しているディランの方を見て溜息をつくソフィア
「ははは…まあ、アイツですから」
「はぁ……じゃあ貴方達は次の教科も頑張ってね」
「はい」
「ありがとうございます」
自席へと戻って行ったソフィア
「あの人も随分と苦労人だな」
「まあディランがあいてじゃあ、ね?ディランは放っておいてあげるのが一番いいのよね」
「だな、何だかんだと自分で済ませるし…多分問題の殆どを真面目にやって無いだろうけど」
「それが一番ディランらしいって言えるわよね」
「ああ…さて、じゃあ次も頑張りますか」
「ふふ、頑張ってダーリン」
「おうよ!」
相も変わらずバカップルな二人、それは試験如きでは変わらないのであった




