#scene03-15
3人の少女を剣と車輪に連れてゆき、事情を説明した後、ギルド“昏き星夜”を設立。その後、西門から街を出た一行は街道は外れた場所でナギからの指示を待っていた。
「そうだな……テオドール、ミシェル、サルド」
「「「はい」」」
「お前らは集めてきてもらった伯爵家についての情報をオーシプ自治州ガルニカにいるジーナ・アルティエリという人物に渡してきてくれ。リーダーはテオだ」
「承知しました」
「没落したアウレッタ元子爵家の奴らが接触を彼女に試みる可能性がある。なるべく早く頼む。青の翼の受付嬢をしてるはずだ」
「はい」
「マチルダ、ヘレン、ジリアン」
「「「はい!」」」
「先行してツォーリに入ってくれ。何か問題があれば連絡する役目だ。特に何もなければ、適当にその辺の魔物でも狩りながら冒険者に擬態しててくれ。リーダーはマチルダ」
「承知しました」
「カイン、エリス、イルマ、レイラ」
「「「「はい」」」」
「グンナル公国ヒューゲル伯領コーニッシュに入ってヒューゲル家について調査を頼む。危険だと思ったら逃げろ。リーダーはカイン」
「わかりました」
「あとはアリンとロド、リリアナ、リーシャ、ディルは先行して帝都に入ってくれ。拠点にできそうな場所を探すのと、冒険者に混ざりながら情報収集を頼む」
「承知しました」
「全員に制服と武器、あとは少々の生活費を用意するから少し待ってくれ。ああ、制服は、今オレが着てるを少し地味にして、隠蔽系の機巧式を入れる。下着も一式用意するから任せろ」
ここまで話しながらも、何かを原料に大量の服を製造していくナギ。
完成した制服にアイヴィーが機巧式を刻み、シャノンが一人ずつ名前の書いたラベルを張っていく。流石に下着まで作られるとは思ってなかったようで若干困惑する女性メンバー。
一方男衆は、黒というやや着慣れない色だとしても、デザインや機能性が洗練されているのでかなり気に入ったようだ。
「シャノン、アイヴィーの着替えを手伝ってやってくれ」
「わかりました」
「この服、金属鎧よりも強いのか。凄まじいな」
「エクトル鋼糸なめんなよ。これ一着で屋敷が建つぐらいするからな」
「まじっすか」
「ディル、マジだ」
「すげぇ、お館様」
「だろう――まあ、日中は悪目立ちするから無理に着ろとは言わないけど、夜間はかなり使えると思う」
「ナギ様の作った機巧式を改良したかなり強めの隠蔽機巧式を刻みましたから、じっと見られない限りはバレないと思いますよ」
「アイヴィー着替えたのか。どうだ?」
「はい。私は走り回ることがありませんからスカートの方を選ばせて戴きました。膝までしかないものは初めてですが」
「うん。似合ってるよ――さて、あとは武器だが……シャノンのファルカタを作る練習に打った短剣が結構あるんだがこれでいいか?全部エクトル鋼製だから頑丈さは保証する」
ナギが全員に短剣を渡していく。そして、アリンとテオドール、マチルダ、カインには銀貨の入った袋と金塊を10個、そして賢者の腕輪を手渡した。
「これは……」
「金を一気に大量に換金すると怪しまれるからそれぞれ適当な街で換金していって、昏き星夜のギルド口座に入れておくといい。一応、少し金は入れてあるが、足りなくなったらここから使ってくれ。あと、賢者の腕輪だが持ち合わせがあんまりないから今日はそれで勘弁してくれ」
「わかりました。お金はむしろ増やすぐらいで行きます」
「お、おう、無理はしないでいいからな?――じゃあ、一応ここで解散にするが、どうやって移動する?」
「全員ネッティから舟に乗って移動します。何度も関所を通るのは面倒ですから」
「なるほど。じゃあ、また、帝国で会えるのを楽しみにしているよ。ああ、全員任務達成したらオレに連絡くれ。基本はすぐ帰ってくるように言うと思うけど、もしかしたら追加で仕事頼むかもしれない」
全員が頷くと南西の方向へと消えていく。
それを見送ってからナギたちもメリザンド法国の首都ティエリーへと移動を開始した。
◇
レムケの街で一泊した後、法国との国境の街ルッツへと移動したクレハ、キーリー、エレノラそれと猫一匹は、道中狩りまくった魔物たちを換金しちょっとした小金持ちになったところで、テンプレと言えばテンプレ、ガラの悪い傭兵に絡まれた。
「退いてくれない?邪魔よ」
「いいじゃねぇか姉ちゃん。オレらと遊ぼうぜ」
「悪いけど、旦那がいるの」
「んなこと気にすんなよ。オレは旦那よりもいいモノもってるぜ?どうだ?朝まで」
「私結構潔癖症なのよね。気持ちが悪いからそれ以上近づかないでくれる?吐き気がするわ」
「おうおう、威勢がいいねぇ。それじゃあ、こうしようじゃねぇか「しないわ。消えなさい雑魚」
ぶち、っと傭兵の男から何かが切れる音がした。
クレハに掴み掛ろうとするものの、クレハの方が何十倍も速く、いったんテーブルまで行き、椅子を一脚持ち上げ背後に潜り、後頭部に椅子を叩きつけて吹き飛ばした。
「あら、ごめんなさい。椅子は弁償するわ。ああ、あと正当防衛よね?」
野次馬全員が頷いたのを確認してキーリーを呼ぶ。
「キーリー、椅子直して」
「うちは便利屋やないんやで?まあ、ええけど」
「クレハ、今の加速すごかった」
「誰でも使えるわ、あれぐらいの加速術式」
「んじゃ、そろそろシュトフェルにいこっか?」
「そうね。移動手段が徒歩だから時間もかかるしね」
男の安否は全く気にせず、ギルドを出ると、東門へと向かう。
「今からだと野営しないとダメかしら?」
「そうやな。テントっていうか、ログハウスあるから何の問題もないけど」
「それ野営?」
「にー?」
「まあ、なんでもいいけど。あ、キーリー。昨日使ったあの異常に魔物が寄ってくる薬もうないの?」
「まだあるけど、またつかうん?」
「いいじゃない、いい稼ぎになるし、戦闘訓練にもなるのよ?」
「ガルニカで戦闘してたクレハは問題ないけど、ここのレベルでも数来るとつらいねんで?」
「確かに、詠唱がギリギリになるから」
「でも、ガルニカではナギと亜龍としかまともに戦ってないわよ?」
「ナギ兄を魔物枠に入れたらんといて」
「とりあえず、魔物の素材は錬金術に使えるんだから多めに集めとかないと」
「もっともらしいこと言ってごまかしたつもりなん?」
「うん」
「やっぱりクレハは大物?」
「にゃあ……」
徒歩と言っても、クレハが自然に使っている加速魔法によって移動速度は一般の旅人よりもかなり速いのだが、3人はそれに気づいていない。
昼前に街を出たため昼食をとっていないことに気づき、キーリーがお手製のテーブルをおきあらかじめ買っておいた昼食を取り出した。
「うまうま」
「結構いけるなぁ、このパン――って、クレハなんか別のもん食べてへん?」
「ああ、うん。ナギと一緒に作ったお弁当」
「一口頂戴」
「いやだ」
「何故そんなに頑なに」
「だって、これで最後なんだもん。くっ、こんなことならもっと作っておけばよかったわ」
「弁当1つでそこまで?」
「そんなの、その辺の屋台で売ってるものより自分で作った方がおいしいでしょうに」
「そんな、当たり前でしょう?みたいな顔されても……」
「ああ、キーリーに料理用のかまどを作らせればいいのね」
「だからうちは便利屋とちがうで?」
「キーリー、もう一つパンたべていい?」
「ええけど、君も大概自由やな……」




