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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#03 黒の勇士編
73/131

#scene03-14


その後、魔法で加工を手早く行ったイノシシの肉をコンロの上の鉄板で炒めるナギと、未知の味にわくわくする男4人。

ナギの使う調味料は、時魔法という高等な技術を無駄に使い、発酵を進めた醤油や味噌など。嗅ぎ慣れない匂いだが、鉄板の上で焼けるその香ばしい匂いに惹かれるのは確かである。


「お館様、こんな調味料初めて見たんですけど、どこで手に入れたんですか?」

「共和国に行けば売っているだろう?味噌とか醤油とか」

「共和国で見たものはもう少し完成度の低い、というか、そういう感じのものだった気がします」

「なるほど。テオドール、これはもう少しこだわって作った物だ。掛かっている時間が違う」

「なるほど……って、自分お館様に名乗りましたか?」

「名乗らなくても、オレには視える」

「まさか、魔眼って奴ですか!?」

「おい、ディルはしゃぐな。あと、お前もこのゆで卵を剥くの手伝え」

「オレは自分のノルマは達成しましたよ。カインこそいつまでやってるんですかそれ」

「うぐ」

「魔眼は珍しいか?」

「ええ、“太陽”に居た頃も幹部の連中のなかに数人持ってる奴がいたかな?ぐらいですね」

「なるほど……ああ、卵剥き終わったら潰してくれ。あと、ロド。こっちの皿を中にもって行ってくれ」


大皿2枚分の焼き肉をロドにもたせる。


「ナギさん。パンはこれでいいですか?」

「ああ、悪いな」

「いえ、私もこれぐらいはできますから」


ナギが即席で作ったアイヴィーに合わせた高さの調理台の上で野菜やパンを切っているアイヴィー。

それを受け取り、ナギはいくつかのサンドウィッチを作成していく。


「おおお、焼き肉のたれがパンに染み込んで」

「ディル、腹減ってるのはわかるが。落ち着け。お館様、潰した卵は?」

「おお、じゃあ、このマヨネーズをどばっと入れて……よし、混ぜてくれ」

「了解です」

「おおっと、そっちもなんかうまそう」

「ディル、口を開けろ」

「あ?」


口を開けてこちらを向いたディルの口に焼きたての肉を放り込むナギ。


「あっづ!?」

「テオ、薄切りパンの上にマーガリンを塗っていってくれ。アイヴィーは塗り終ったやつに野菜載せてこっちにくれ」

「「わかりました」」

「なんか、早速あだ名付けられてるじゃないか」

「まあ、碌でもない親に貰った名前だから特に思い入れはないから構わないが」

「――よーし、あとはこれを挟んで、完成」

「あまり見たことがない食べ方ですけど」

「まあ、食ってみればわかるさ」

「それと、卵のほうは野菜挟まなくてよかったんですか?」

「卵サンドは野菜ない方が好きでな。胡瓜なら許せたけど、持ち合わせにないし……さて、テオ、ロド、女衆のお気に召すかは謎だがこれも持って行ってくれ」

「オレは?」

「ディルは普通に焼いたパンを持って行ってくれ」

「あいさー」

「なんだかうちで食べていたものより豪勢な気がします」

「気のせいだ。さ、中にもどろう」


冷却したコンロを腕輪に格納し、作業台を消し去るとアイヴィーの車椅子を押して建物の中へと戻った。

部屋の中では既に全員着席しており、おとなしく待っている。


「なんだ、食べ始めてくれてもよかったんだが」

「いえ、家主を置いて食べ始めるわけには」

「ナギさん、私もお料理手伝いました!」

「そうか、ありがとうな」


リュディの頭を撫でてから席に座るナギ。


「さて、戴こうか」

「よっしゃ」

「ディル、お前はさっき味見させてもらっていただろう」

「アレによってオレの食欲に火がついた。というか舌火傷した」

「ナギ様、スープの味はどうですか?」

「ああ、美味しいよ」

「よかったです」


「シャノン様が女の顔をしている……」

「あのシャノン様が男相手にこんなに惚れこむとは」

「人って変わるんですね……」

「他の将官たちと違って無茶苦茶なことは言わない人だったけど、かなり厳しかったのに」

「確かに、いくらか優しくなってるような……」


「イルマ、ジリアン、レイラ、マチルダ、リーシャ」

「「「「「は、はい!?」」」」」

「聞こえてますよ」

「そんなに厳しかったか?シャノンは――その歳で幹部までいっただけはあるな」

「お恥ずかしいです。ナギ様あいてには全く敵わなかったというのに」


「……なあ、シャノンさんが全く敵わないって、お館様どれだけ強いんだろう」

「おい、カイン。声を落せ」

「気になるだろ、だって。なあ、ディル」

「うわあ、これも美味いなぁ……」

「「…………………」」

「……幸せだな、お前は」

「ん?どうかした?」

「「「なんでもない」」」


「一先ず、この先のことを考えないとな」

「我々はギルドの登録を済ませた後どうすればいいのでしょう」

「んー……ちょっと待ってくれよ。お嬢さん方」

「「「は、はい!」」」


テーブルの端で食事を貰って食べていた3人が驚いて背筋を伸ばす。


「君ら、最近攫われてきたばっかりだね?」

「え、えっと」

「はい……」

「信じてもらえるかはわかりませんが全員まだ手を出されていません」

「まあ、その辺はどうでもいいんだが……君たち、街に戻って行くところはあるか?」

「うちは商人でしたが、母は妹を生んだ時に死に、父は盗賊たちに……残っているのは私と妹だけですから……借家だったのでもう引き払われているかもしれないですし」

「私は、カントのほうから出稼ぎに来たのですが、期日からかなり時間が経ってますから住み込みの仕事を貰えるかどうかは……」

「やはりか……なんとか仕事ぐらいは用意してやりたいところだが、こちらもあまり資金がないしな……」

「ナギ様、事情を話して“剣と車輪”に保護してもらうのはどうでしょう。あそこなら、仕事も斡旋してもらえるかと」

「ああ、なるほど。3人はそれで構わないか?」

「「はい!」」

「ありがとうございます」

「じゃあ、すぐにでも街に戻ろうか。ディエリーの方へ移動しつつ今後の方針を考えよう」

「わかりました」

「我々もそれで構いません」


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