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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#03 黒の勇士編
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#scene 03-04



一夜明け、夜明け前のシャノンによる襲撃を何とか回避し、アーリックと落ち合うために“青の翼”へと向かう。

ドアは既に修理されていた。一応、かなりの額の金銭を扱う施設なので防犯はしっかりしなければならない。木工技師に無理を言って直させたのだろう。


「返事待ちをしている間、軽く依頼でもやっとくか。あんまり何もしてないと不自然だし」

「そうですね。リュディに戦闘経験を積ませるためにも少しやっておいた方がいいかもしれません」

「え!?私ですか?」

「きゅい?」

「案外スパルタだよな、お前」

「お褒め頂き光栄です」

「たぶん、褒めてないよ!?」

「さて、この辺りだと、魔物は少ないと思うんだが」

「そうですね。討伐系の依頼となると、盗賊や街の中ですと窃盗団がメインですね」

「なるほど、ということは」

「ええ、貴族が一枚噛んでるような奴らもいるでしょう」


シャノンが壁に貼ってある以来の中から、目についたものをすべて持ってくる。


「このあたりがよろしいかと」

「じゃあ、シャノン……とミトはリュディを頼む」

「わかりました」

「きゅい!」

「ナギさんは?」

「ナギさんはシャノンが大量に持ってる依頼から半分ほどを周って来るよ」


シャノンから10枚超の討伐依頼(全部盗賊や窃盗団)を受け取る。

それを確認している隣にいた壮年の冒険者が声をかける。


「おーい、兄ちゃんたち」

「ん?どうしたオッサン」

「その依頼だけど、あんまりお勧めしないぞ」

「理由を聞こうか」

「まず、報酬が安い。まあ、依頼主が一般市民だからだが。それに、貴族が雇ってるごろつきばかりだ、中途半端に強い。そして、捕まえてもすぐ出てくる」

「なるほど、忠告ありがとう。ま、腕慣らしには十分――そうだろう、アーリック」

「気づいたか」

「さすがにその背の高さだと気付くよ。で、どうする?」

「どうせ他にすることもないしな。話を受けようと思う」

「そうか。なら、先に“剣と車輪”だな」

「加入代は」

「それぐらいは持つよ」

「それではナギ様。私はリュディを連れて外の仕事を周ってきます」

「ああ、こっちに街の中の仕事ばっかり残ってるのはそのせいか……」


リュディを本気で戦わせるとなると、ミトを使うことになる。

町中を根城にしている盗賊団に使うには少し目立ちすぎる。


「じゃあ、アーリックはオレと一緒に町中の盗賊団潰しするか?」

「互いの腕を把握しておくのも重要だしな」


ナギとアーリックはギルドカードを更新した後、13件の討伐依頼を一気に引き受けた。

そもそも、これだけ犯罪者がのさばっていることも異常だが、騎士団が一切対応していないというのもおかしい。


「暴行、殺人、窃盗、強盗、強姦、放火、誘拐……まあ、一通りの事はしてるみたいだなぁ」

「ルーツよりも治安が悪いが、これで国が成り立っているのか?」

「形だけなってても中が腐ってるから。ああ、そうだ。ギルドに入ったことだしコイツをやろう」


ナギが賢者の腕輪をアーリックに投げ渡す。


「賢者の腕輪、という奴か。知識としては知っているが、本物を見たのは始めただ」

「ニセモノ結構出回ってるみたいだな。一度つけて魔力を流してくれ。大きさがピッタリに調整されるから。外そうと思えば外れる。で、一度つけたら本人と製作者にしか使えない」

「わかった」


すぐにアーリックが腕輪を付ける。


「ポーションやるからためしに入れて見てくれ。あと、装備一式は今度作る。機巧装置は使うか?」

「あまり魔法は得意でないからなくてもいい。身体強化ぐらいなら装置なしでも掛けれる」

「了解。あと、剣だな。いくつか打ってるんだが、一度戦闘スタイルを見てからだな」

「……武器商人なのか?」

「いや、錬金術師」

「その割には物騒な物ばかり作っている気が」

「まあ、こんなもんだよ。錬金術師なんて」


一件目の根城は王都のはずれの廃屋。規模も小さかったため、全員瞬殺。

二件目・三件目も無人の建物に勝手に住みついていて、これもすぐに叩き潰した。

四件目以降はなぜか貴族の私有地に根城があり、なぜか王宮から派遣されてきた警備員(騎士)まで立っていた。


「いやー、ここまであからさまだと逆に笑えてくるな」

「貴族とはなんなんだろうか」

「まあ、あまり失望しないでくれよ。この国がおかしいだけだから」


もちろんあっという間に叩き潰した。

アーリックが前衛、ナギが中遠距離でサポート。

お互い、戦闘センスは異常に高いのであっという間に完璧な連携を取り、かなり余裕で討伐を進めていく。

なお、余談であるが盗賊討伐の証明は本人の捕縛もしくギルドカードなど身分証の提出で決まる。

死体から“犯罪者”の刻印が入っているギルドカード(どういう仕組みか知らないが、自動で更新される)を剥ぎ取る。


「これってどういう基準で罪状認定してるんだろうか」

古代の至宝(アーティファクト)のコピーのような物だと聞いたことがある。まあ、判断基準は神のみぞ知るという感じらしい」

「だよな、オレのカードにまだ殺人も窃盗もついてないし……」

「なんだ。もっと真面目な生き方をしていると思っていたが」

「こんな法もまともに機能してないような国でそんなお上品な生き方で生きていけるかよ」

「そういえば、少し前に職業が“殺人鬼”の奴を倒したことがあるが、そいつは殺しまわってた割には犯罪者扱いになっていなかったな」

「ほんとにどういう基準なのか」

「神様にあったら直接訊いてみるのがいいだろう」

「そうだな。会ったら聞いとくよ」


既に数十枚あるギルドカードを弄びながら次の場所へ移動する。

13件すべて潰し終わるころには、カードは100枚を超えることになる。


「そういえば、昼飯を食べるのを忘れていたな」

「そうだな。男だけだと生活全般が適当になるな」

「確かに、俺は一人旅だったせいかかなり適当な生活をしていたな」

「あー、オレもこないだまでそうだったわ」


ギルドに入ると、中ではシャノンたちが待っていた。


「ああ、待たせたか?」

「今、清算を終わらせたところです」

「そうか。悪いけどもう少し待っててくれ」


カードを全て受付で渡すと受付嬢が急激に汗をかき始める。


「あ、あの。こちらの盗賊さんたちは?」

「無論、全部殺した。どうせ捕縛しても貴族の力ですぐ釈放されるんだろ?」

「ええ、まあ、そうですけど……うわー、これはまたすごい圧力がかかるなぁ……」

「お気の毒に……ん?ああ、通信か。悪い、アーリック。受け取りを任せた」

「?……ああ」


「ナギだ」

『アイヴィー・サイアーズです』

「通信機、家にあったのか?」

『いえ、今統轄ギルドでお借りしました』

「なるほど……そこまで出てきたってことは」

『はい。色々と考えた結果、私も面白い方に着くことにさせてもらいます』

「なるほど……じゃあ、すぐに迎えに行くよ」

『お願いします。今どこかの誰かさんが王都内の子飼いの盗賊を殲滅したようで、貴族たちは大混乱ですから。いまなら兄からの追手を巻けます』

「まあ、その犯人じゃないなら巻けるだろうな」

『え?』

「まあ、詳しいことは後で話す」


通信を切りながら、シャノンを呼び寄せる。


「シャノン、悪い。“剣と車輪”でアイヴィーを回収、そのまま王都の外で適当なところへ避難。無線はつけててくれ」

「ナギ様は?」

「ちょっとアーリックが絡まれてるからそっちを助けてから別ルートで逃げる」

「それではまた後で」


シャノンは頷くと、すぐにリュディを連れて姿を消した。


「さて、一つ上手くいったと思売ったらすぐ次の問題だよ」


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