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一つの終わり、一つの死

ユニーク900、PV3000。本当うれしいです。

この話にて第一章終了です!

 罪人の斧が、セールスマンに届くことはなかった。

 別に止めようとして止めた訳ではない。

 強制的に、動きを制限させられたのだ。

 そのことに気づいたセールスマンが、振り向かず背後に向けて指弾を放つ.

 二つの弾丸は、正確に人形の核を破壊する。

「てめぇ、なにしやがる」

 銀髪の幽霊を見る。困ったような笑みを浮かべている。

『ポルターガイスト』

 念動力(サイコキネシス)と同等の効果をもつ幽霊固有の能力だ。

 遠くにあるものを動かすような、シンプルな能力だがシンプルであるがゆえ、その力は強い。

 四肢を固められ、全く身動きがとれない。

「くそっ」

 耳に意識を向け、魔術を使おうとするが、そのタイミングを逃すセールスマンではない。

 斧を払いのけられ、地面に落ちる。からん、と音を立てる斧を蹴り、部屋の隅へ。

 同時に、ポケットからコインを取り出し、罪人に向ける。

「形成逆転ですね」

 そういう、セールスマンの表情は完全に無表情。

 罪人には自分を黄泉へと導く死神のようにしか見えない。

(考えろ。考えろ! この状況を打破する何か! 指弾を真似する? いや、無理だ。その前にあっちの指弾のほうが早い。くそ、何か! 他に何か!)

 そして、銀髪の幽霊と目が合う。

(そうだ、こいつの魔術ならっ!)

そう考えた瞬間、腕に焼けるような激痛が走る。

 手を地面に縫い付けるように、手の甲にナイフが突き立てられる。

「あああああああああああああああ!」

 意識が飛びそうになる。涙が溢れそうになるのを、堪えセールスマンを睨みつける。

「て、めぇ」

「痛いでしょう? わざと痛い箇所を刺させていただきました」

「セールスマン! 何しているの! 必要以上の暴力はしないって約束だよっ」

「必要だからやりました。彼は戦意を失っていません。魔術を使おうとしたので、無理矢理キャンセルさせていただきました」

 魔術をキャンセルさせるには痛みが一番ですから、とセールスマンがいう。

「ったりめぇだ。魔王を殺すまで、死ねるかっ」

「その程度の魔術でですか」

「ああ! てめぇ、今、何言った!」

 セールスマンの言葉にかっとなる。

「相手の魔術をコピーする魔術。どういった原理かしりませんが、本来の術者の魔術よりワンランク下がります。素晴らしい魔術だとは思いますが一度知ってしまえば、対処の仕方もあります。負けた私が言うのもなんですが、その程度で魔王に対抗出来るとはとても思えませんね」

 そう、罪人の魔術は、手品と同じだ。中身が分からずとも仕掛けが見えてしまえば効果は半減する。ゆえに、使うならば確実に短期決戦で相手を仕留める必要があったのだ。

 これが、魔王に有効か、罪人自身も半信半疑だ。しかし……

「いえ、確かに、この魔術は暴食(グーラ)にとっては致命的な毒ですよ」

 セールスマンの言葉を否定する幽霊の少女。まるで、暴食(グーラ)のことを知っているかのような口ぶりに、罪人は呆気を取られる。

 そんな少女が、這いつくばった罪人の前に膝をつき、語りかけてくる。

「あ、あの私は、空鳴 葵っていいます。あなたは?」

 突然、意味不明な行動に出る彼女に戸惑いながらも、答える。

「あ? 俺か、てめぇも知っているだろう? 俺はざいに……」

「違う。あなたの本当の名前を教えて欲しい」

「……なんでだよ?」

「君の本当の名前、誰も知らないなんて、悲しいから」

(ここまで、か)

 万事が尽きた。

つまり、彼女はこう言いたいのだ。お前はここで死ぬ。だから、せめて、名前だけでも覚えてやろう、と

 最後は彼女に生を乞おうとまで思ったが彼女も自分を生かすつもりはないらしい。

彼女がこのような手間をかけてまで自分を殺そうとしているのかは解らない。

自分に罪人の名を与えた母国の暗殺者かもしれないし、案外、暴食(グーラ)の魔王が関与しているのかもしれない。

だが、自分より明らかに強いセールスマンに捕らえられ、身動き取れないこの状況。今更、どうしようもないこの状況下では、どうでもいい話だ。

「俺の、名前はーー」

彼女にしか聞こえないような、声で呟く。頷いたのを確認し、目を瞑る。

つまらない、人生だった。

魔王を倒す、その目的以外は伽藍堂な人生。

当たるかどうかも解らない予言にすがり、こうして命を落とす。

覚悟はしていた。ろくな死に方はしないだろう、と。それでも、自らの意思で選んだ道だった。

だから、せめて最後くらいは潔く……



 ――だから、死を受け入れるのか? あの負け犬のように?――



 古い記憶の残滓が、耳元で囁く。

 記憶に浮かぶは、天井からぶら下がった『あいつ』の姿。

 いつもと変わらない黒のロープに、変わり果てた表情。それは、まるで黒いてるてる坊主。

 そういった風になりたくないと誓い。『あいつ』の思いを無駄にしたくないと思い。しかし、自分もこうして命を諦めようとしている。

「時間がありません。そろそろ……」

「ええ、ヤッちゃってください」

 空鳴とセールスマンの会話。空鳴の眼がごめんなさい、と訴えかけてくる。

「ざけんな」

 そんな、空鳴に対し、罪人の口から漏れたのはそんな言葉。口にすることでその思いは強くなる。

「言っただろっ! 俺は、暴食(グーラ)を! 魔王を殺すまではっ! 死ぬ訳にはいかねぇンだよ!!」

 四肢に力を込める。

 ブチブチと何かの千切れるような音が体内から聞こえてきそうだ。だが、関係ない。  

「ああああああああああああああああ!!」

「うそっ」

 彼女が。驚いた声を上げる。

 魔術ではなく、力づくで、身体を縛るナイフを、念動力(サイコキネシス)を、あらゆる拘束を打ち破る。

 そのまま、罪人は、目の前のセールスマンへ飛びかかる。

 武器はない。拳も使えない。だが、最後の武器が残っている。

 それは、歯だ。原始の時代、獣を食い破った歯をその首へ食いつこうとし……

「やれやれ、本当に獣のようだ」

 そう、セールスマンは呟き、罪人の胸に手を当てる。

「……偶像破壊イドロ・カタストロフィ

 瞬間、罪人の体中に裂傷が走り、血が噴き出す。

「あ? え?」

 そのまま地面に崩れ落ちる。

(な、にが……)

 言葉が出ない。出るのは、ヒュー、ヒューと言葉にならない呼吸のみ。

 痛みはない。あるのは、迫りくる死の気配。

「私の魔術は、物体に込められた念を力に変える能力。モノもそうですが、人間も、常に様々な人達の思いに晒され続けています。これは、そういった個人に向けられた念を爆発させる技」

 はぁ、とセールスマンは息を吐く。

「……所謂、必殺技という訳です。身体の内面からの攻撃です。私が手加減しない限りは、まず死に至る魔術ですよ」

 意識が遠ざかる。彼が何言っているのか、聞き取れない。

「ああ、伝え忘れました。雇い主からの伝言です。『今日、出会った奴の誰かが暴食(グーラ)だ』と……」

 魔王? 出会っていた? くそ、折角、ここまで来て……

 

 落ちる。落ちる。どんどん底へ沈んでいく。

「それでは、おやすみなさい」

 寒さが体を包む。しかし、身体が全く動くことなく、罪人はゆっくりと意識を手放した。



 こうして、罪人としての人生は、一人、孤独に幕を閉じた。





 ~間章~



 そこは、玉座だった。

 黄金と宝石がこれでもか、と散りばめられた王者のみが座ることの出来る椅子。

「かの有名な英雄魔王殺しの一人、『人形卿』とはいえ、座れる椅子ではないのぉ」

 その椅子に座るのは、褐色の肌の少女。

 幼くもあるが、その健康的な肌と笑みは蠱惑的で、男共を引き寄せる魅力を体中から放っている。

「或いは……それが主の願いだったのかの? 王になりたかったのか? ン?」

 横に立つ老人の頬を撫でる。それはまるで恋人かのように、官能的だ。

 そんな彼女の行動に老人はピクリとも動かない。ただ、眼球のみを動かして、こちらを見る。

 そこに浮かぶ感情は恐怖。その姿は蜘蛛に捉えられた虫のようだ。その視線を浴びただけで、背筋がゾクゾクする。

 その真っ赤な舌で伯爵の首筋を舐めて、牙を通そうとし……

「こんな処にいましたか」

 側近の吸血鬼が階段から姿を現す。

「……失礼、お食事中でしたか」

 側近は周囲を見る。立派な玉座に一人の男。そして、その周囲に散らばるのは、何百という人形の残骸と瓦礫の山。

 上には天井がなく、覗きこんでいるのは活動を停止した巨大な人型。恐らく人形卿の秘密兵器だったのだろう。

 下から、巨大な人形と主との戦い、その光景を見ていた。

 その時を思い出すたびに、側近は胸が熱くなる。が、そんな状況に何もなかったかのように伯爵が側近に話しかける。

「よい、で? 状況はどうだ?」

 あの後、この城に伯爵の部下達が一斉に乗り込んだ。

 始まったのは虐殺だ。

 伯爵からすれば、あの場にいる魔族は、単なる裏切り者だし、人間は最初から捕食の対象にしか過ぎない。

 結果として、あのエルフ二人には逃げられることになったが、それなりに楽しめたので良しとしよう。

「残念ながら、エルフの邪魔も入り、裏切り者達の大半は逃げられてしまいました」

 部下の男が悔しそうに報告する。そういえば、こいつは魔族史上主義だったなぁ、と思い出す。

 それにしても、あの変なエルフの二人組、なかなかやるとは思ったが、自分の部下達を相手にそこまでやるとは、何とかして手下にしたいものだ。

「まぁ、よい。所詮は予言のついでのゲームじゃ」

 そう、裏切り者の粛清など、伯爵からすれば、余興に過ぎない。

 所詮は有象無象の輩。蟻が邪魔だったからつぶしたくなった。その程度の感覚だ。逃げられたとしても気にもしない。

「それにしても、戯れが過ぎます。あの神父、勇者なのでしょう? 御身に何かあったら私はっ!」

 大袈裟な、と思いながらも伯爵はいう。

「のぅ、貴様はゲームが好きか?」

「は? チェスなどは好みますが」

「なら、分かるだろう? 勝つことが決まっているゲーム程つまらんものはない。ギリギリの勝負も刺激的だが、疲れるじゃろ? 程よいのは、油断したら負ける程度の勝負じゃ」

「私は、戦うならば、全力で戦いたいですが……」

「それは好みの世界だの? まぁ、我が言いたいのはそういったことだ」

 つまりは、伯爵は退屈していた、と。そこに現れたのは暴食(グラトニー)魔王を倒すと言われる勇者……の候補。

「なるほど、あなた様にとっては程よい相手であったと。勇者を前にしてその余裕。さすがが我らが主。暴食(グラトニー)の称号を持つ魔王。屍喰い(グール・イーター)様」

 その言葉に、伯爵は苦笑する。

「まぁ、その勇者も死んでしまったからのぉ。全く、本当に人間に殺されよって、折角の玩具が台無しじゃ」

 彼とこの城に入る前に話した会話をふと思いだす。

「そうなると予言が……」

「ふん、過去にもそういったことは幾度とあった。最悪の事態は予言が達成されず、期日を過ぎること。狡猾な予言者じゃ、恐らく代理を立てるじゃろ」

「そんなことが、出来るのですか?」

「まぁ、容易ではないが、の」

 しかし、過去にそういった事例がない訳ではない。

 手に持った『罪人の書(クリミナル・サイン)』を見る。

 この城を舞台とした予言。14ページを見る。

 そこには、今まで無かった予言者の真っ赤なサインが書かれている。

 それは予言を達成したということ。

 予言が無効になれば、『罪人の書(クリミナル・サイン)』は何の魔力のないただの紙となるだろう。

「で? 次の予言はどこかの?」

「はっ! この国の神奈川という場所にある予言の町。魔族と魔術師の共存する町。七森町です」

 ああ、と思い出す。あの胸糞悪い町。しかし、大ぴらに暴れると後々厄介だ。

 何しろ、あの町は強欲(グリード)の魔王が肩入れしている。直接戦えば勝てるが、組織で考えると手を出さないほうが得策だ。

「まぁ、ばれなければいいのだ。ばれなければ、の?」

 方針が決まれば、お腹がすいてきた。

 人形卿を見て、舌なめずりをする。

「や、やめ……」

「ほう? 言葉を発するだけの力が残っているか。安心しろ。我は屍喰い(グール・イーター)。血だけ吸うなど勿体ない。肉ごとくらい、文字通り我が血肉とさせてもらうぞ」

 人形卿の眼が見開き、涙があふれ出る。

 その様子に満足し、屍喰い(グール・イーター)は人形卿の頭から齧り付いた。









と、いう訳で主人公が亡くなりました。

これにて、このお話は終了とさせていただきます。

ご愛読ありがとうございました。









……ごめんなさい。冗談です!

次回の話から男の娘登場です!(その前に、一話、入るかもしれませんが(汗)

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