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第7章ー35  ウエストリバータウン防衛戦29

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。

αチームを見送った後――

ロゼッタ達は、ゆっくりと街へ戻っていった。


その途中、グレンは腕を組んだまま、何かを考え込んでいた。


「……バルカが言ってたことが、気になる」


低く呟いた。


"人為的な可能性"


あの一言が、頭から離れなかった。


「俺はギルドマスターと話してくる」


そう言い残すと、グレンは一人、足早にギルドへ向かっていった。




――街は、戦いの後始末に追われていた。

河岸には、モンスターの死骸が無数に転がっている。


だが、そこに漂う空気は決して暗くはなかった。

むしろ――どこか明るい。


ハンター達も、街の人々も、生き残った安堵を感じていた。


ギルドの職員が、山のように積み上がった死骸を見て、頭をかく。


「……これ、全部解体するのに何日かかるんだよ」


心底うんざりしたような声。


だが、すぐに苦笑へと変わる。


「まぁでも、人気素材だからな」


近くにいたハンターが反応する。


「確かに。甲殻類系は軽くて硬いしな」


職員も頷く。


「こんだけ市場に出たら……価格、暴落するかもな」


その言葉に、周囲から笑いが起きる。


「いいじゃねぇか、安く装備揃えられるんだろ?」


「この辺のハンター、みんなカニかエビの防具になるんじゃねぇか?」


「殻背負ったやつが街中うろつくな」


そんな軽口が飛び交う。

戦いの直後とは思えない、どこか穏やかな空気。


だが――その裏で。

グレンはギルドの扉を押し開けていた。


バルカの言葉の意味を確かめるために。


この戦いが、本当に“偶然”だったのか――


それとも、何かが裏で動いているのか。


その答えを求めて。





ギルドマスターの部屋で、

机を挟み、グレンとギルドマスターが向かい合っていた。


部屋の中は静かだったが――

張り詰めた空気が、重く漂っている。


ギルドマスターは、グレンの表情を見た瞬間に察していた。


ただ事ではない、と。


グレンもまた、その視線の意味を感じ取り、余計な前置きはせず口を開いた。


「……少し前から、モンスターの大型化が始まってるって話は聞いてるな」


低く、落ち着いた声。


「この大型化……人為的な可能性がある」


その言葉に、部屋の空気がさらに重くなる。


「モンスターと河の水……それと、この街みたいに大型化が確認された場所」


「全部、調査した方がいい」


ギルドマスターは腕を組み、静かに問いかける。


「……その根拠は?」


視線は鋭い。


だが、頭ごなしに否定する気配はない。


グレンは一瞬だけ言葉を選び、答えた。


「俺の勘だ……って言いてぇところだが」


小さく息を吐く。


()()()()()()が言ってた」


ギルドマスターの眉がわずかに動く。


「……あいつらか」


グレンは頷く。


「言われてみて、俺も妙に引っかかった」


「……嫌な感じがする」


その言葉は、戦場を何度も潜り抜けてきた者の直感だった。


ギルドマスターはしばらく黙り込み――


やがて、静かに口を開いた。


「あの傭兵達か……」


椅子に深く腰を預け、天井を見上げる。


「お前だから話すが……あいつら」


「“αチーム”じゃないのか?」


その名が出た瞬間、空気がわずかに変わる。


グレンは否定も肯定もせず、ただ黙っていた。


ギルドマスターは続ける。


「神出鬼没の凄腕傭兵」


「筋が通らない依頼は、どんな大金を積まれても受けない」


指で机を軽く叩く。


「だが……筋が通れば、驚くほど安く引き受ける」


「そして、確実に結果を出す」


ゆっくりと、グレンを見る。


「そんな連中が、“おかしい”と感じた」


一拍置く。


「……そして、お前も同じ違和感を持った」


部屋の静寂が、決断を待っている。


やがて――

ギルドマスターは、はっきりと頷いた。


「わかった……調べよう」


短く、だが力強い言葉。


「モンスターと水の調査、過去の発生地点の洗い出しもやる」


「ギルドとして正式に動く」


「何もなかったら、()()()()()


グレンは小さく息を吐いた。


「助かる」


ギルドマスターは、ふっと苦笑する。


「助かる、か……」


そして、少しだけ真剣な顔に戻る。


「……何もなければいいがな」


その言葉に、グレンも同意するように頷く。


だが――

二人とも、心のどこかで分かっていた。


これは、ただの偶然では終わらない。


そんな予感が二人にはあった。




一方その頃、街ではセリカの父が作った試作車と試作連装砲を、

ホワイトファングのハンター達が取り囲むようにして眺めていた。


「こんな武装を乗せてる割には、ずいぶんコンパクトな車だな」


一人が感心したように呟くと、別のハンターが車体に手を当てながら首を横に振る。


「よく見ろ。無理やり詰め込んだんじゃない。一つ一つがきちんと計算されてる。

武装と車体がバラバラじゃなくて……これ自体が一つの“武器”だ」


その言葉に、周囲のハンター達も頷く。


「この連装砲、弾倉交換できるのか。しかも各種砲弾対応……

状況に応じて役割変えられるな」


「軽車両でここまでやるか普通……」


最前線で戦う彼らだからこそ、その異質さと完成度の高さがよく分かっていた。




そんな中、ロゼッタ達が戻ってくる。

指揮官のソニアが振り向き、真っ直ぐロゼッタを見た。


「これ、あなた達の車?」


その問いに、セリカが一歩前に出る。


「はい……私の父が作ったものです」


少し緊張した様子だったが、その声には誇りが滲んでいた。


ソニアは静かに頷き、改めて車体へと視線を向ける。


「いい車です。軽車両でありながら火力もある。完成度が高い」


その言葉に、セリカの目がわずかに見開かれる。


さらに別のハンターが口を開いた。


「これが一台あるだけで戦場の流れ変わるな。機動力とこの連装砲でモンスターを散らして、

その隙を戦車で仕留める……連携前提の機体だ」


「ウチの高機動部隊が見たら欲しがるぞ、これ」


軽い調子で言っているが、その評価は本気だった。


セリカは戸惑いながらも、

どこか信じられないものを見るような表情をしていた。


自分達が使っていたものが、

最前線のハンター達にここまで評価されるとは思っていなかったのだ。


その横でリンが腕を組み、じっと車を見つめる。


(なるほど……ね)


心の中で静かに考える。


(この車は、単独で戦うためのものじゃない)


機動力、火力、そして柔軟性。

それらはすべて、「戦場を動かす」ためにある。


敵を倒し切るのではなく、状況を作る。

そして、その状況を利用して、より大きな戦力が仕留める。


(連携してこそ真価を発揮する……そういう設計なんだ)


リンの視線の先で、ソニアがふっと微笑んだ。


「大事に使ってください。この車は……戦場を変えられる力があります」


その言葉は静かだったが、重みがあった。


セリカは小さく頷く。

その手は、わずかに震えていた。


だがそれは不安ではなく――確かな手応えと、自分の作るものへの新しい自覚だった。




続く

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