第7章ー1 試作兵器テスト依頼
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ギルドマスターからダリアたちの話を聞いた翌日。
朝のギルドは、いつも通りのざわめきに包まれていた。
依頼掲示板の前では新人ハンターたちが悩み、ベテランは食堂でコーヒーを飲みながら次の仕事を決めている。
その中で、エレナは一人、端末を操作していた。
ロゼッタのチームの窓口役はエレナが担当している。
理由は単純だった。
高度な情報機器を扱える人間が、
このチームにはほとんどいない。
機械に強いのは――
エレナか、ミレイアくらい。
そしてもう一つ。
高性能な通信端末や解析機器を持っているのが、エレナだった。
そのため、依頼受付、連絡、報酬確認、情報収集。
そういった役割は自然とエレナに集まっていた。
その朝。
端末に、一通のメールが届く。
「……?」
エレナは差出人を見て、少し目を細めた。
「珍しいわね」
ちょうどそこへロゼッタたちが食堂から戻ってくる。
「エレナ?」
ロゼッタが声をかける。
エレナは画面を見ながら言った。
「依頼よ」
リンが身を乗り出す。
「ギルド?」
「いいえ」
エレナは画面を軽く叩く。
「セリカのお父様から」
セリカが思わず声を上げる。
「え?」
エレナはメールの内容をざっと読み上げた。
「内容は単純明快」
「試作品車両兵器のテスト依頼」
リンの目が一気に輝く。
「それ絶対面白いやつ!」
ミレイアが冷静に聞く。
「兵装の種類は?」
エレナはスクロールする。
「詳細は現地説明」
「ただし――」
少しだけ口元が緩む。
「“かなり面白い物になっている”そうよ」
リンが笑う。
「それ絶対ヤバいやつじゃん!」
ロゼッタは腕を組み、少し考えた。
だがすぐに頷く。
「受けよう」
セリカが少し照れた顔をする。
「うちの親父、変なものばっか作るけど……」
ロゼッタは笑う。
「前の速射砲、すごく役に立った」
あの戦闘を思い出す。
車載速射砲。
大型の敵を足止めするには、非常に有効だった。
「今回も期待できると思う」
エレナはすぐに返信を打ち込む。
「了解。受けると送っておくわ」
送信完了。
その時。
後ろから低い声がした。
「面白そうな話してんな」
振り向くと、グレンが立っていた。
どうやら途中から聞いていたらしい。
「試作品の兵器テストだって?」
リンがニヤニヤする。
「グレンも来る?」
グレンは肩を回す。
「当然だろ」
「そんな面白そうなもん、見逃すか」
そしてロゼッタを見る。
「どうせジャンクタウンだろ?」
ロゼッタが頷く。
「うん」
「セリカのお父さんのガレージ」
グレンは笑った。
「あの速射砲を作ったところか!」
リンが拳を握る。
「よーし、出発!」
数十分後。
ギルド前の車両スペース。
装甲車両――ハンヴィが静かに待っていた。
リンが運転席へ滑り込む。
「エンジン問題なし」
ミレイアが後部座席で武装チェック。
「車載機関銃、弾薬良好」
エレナは通信機器を接続。
「ナビ更新。ジャンクタウン座標入力」
セリカは少しだけ懐かしそうに言う。
「親父、何作ったんだろ」
グレンは後ろに乗り込みながら笑う。
「即席であの速射砲だ」
「ろくでもないもんだろうな」
グレンの後に、アマルダが続く
「でも、あれは凄かったぞ」
ロゼッタも乗り込む。
ドアが閉まる。
リンがアクセルを踏む。
エンジンが低く唸った。
「よし!」
ハンヴィはゆっくり動き出す。
ギルドの門を抜け。
荒野へ。
目的地は――
ジャンクタウンのガレージ。
そしてそこで待っているのは。
セリカの父が作った――
新しい車両兵器だった。
ジャンクタウンのガレージに到着すると、ロゼッタたちは思わず周囲を見回した。
以前訪れた時よりも――
明らかに活気が増している。
巨大な鉄骨のガレージの扉は全開。
中では溶接の火花が散り、工具の音が響いている。
外の駐車スペースにも、改造途中の車両が何台も並んでいた。
軽装甲バギー、荷台に砲架を付けたトラック、エンジンを剥き出しにした荒々しい車両。
リンが感心した声を出す。
「前より人増えてない?」
ミレイアも周囲を観察する。
「整備員の数が増加」
エレナが静かに言う。
「仕事が増えてるみたいね」
その時。
駐車場の奥から声が飛んだ。
「おーい!」
そこに立っていたのは、油で汚れた作業服の男。
セリカの父だった。
腕を組みながら、ニヤニヤしている。
セリカが車から降りながら言う。
「親父」
そして腕を組む。
「また変な武器作ったんだって?」
男の眉がピクリと動いた。
「変なとは何だ」
腕を振りながら言う。
「見てみりゃ分かる」
その時、ロゼッタが一歩前に出た。
「この前の速射砲」
軽く頭を下げる。
「助かりました」
男は一瞬意外そうな顔をしたが、すぐに笑う。
「そうかい」
「ちゃんと役に立ったなら作った甲斐がある」
グレンも車から降り、腕を組む。
「試作品だったが」
軽く笑う。
「あれは軽車両のハンターなら欲しがる代物だ」
セリカの父が少し嬉しそうに鼻を鳴らす。
「だろ?」
その時、リンが思い出したように言った。
「そういえばさ」
首を傾げる。
「あの速射砲どうなったの?」
セリカの父は肩をすくめた。
「売った」
全員が同時に反応する。
「え?」
男は何でもないことのように続ける。
「どこから聞きつけたのか知らねぇが」
「ハンターが来てな」
「どうしても売ってくれって言うんだ」
グレンが笑う。
「ほう」
セリカの父は腕を組む。
「最初は断ったんだが」
「試作品で危険だってな」
リンがニヤニヤする。
「それでも欲しいって?」
「しつこかった」
男は少し笑う。
「“荒野で生き残るために必要だ”ってな」
ミレイアが短く言う。
「合理的判断」
エレナが静かに補足する。
「軽車両ハンターは火力不足になりやすいわ」
グレンが頷く。
「そうだ」
「あの速射砲がありゃ、戦い方が変わる」
セリカの父は親指でガレージの奥を指した。
「だから売ってやった」
そしてニヤリと笑う。
「その代わり」
「今回の試作品は――」
「もっと面白い」
リンが目を輝かせる。
「“面白い”!」
セリカは少し呆れた顔をする。
「だいたい危ないやつなんだよね」
男は笑いながら言う。
「危なくなきゃ荒野で使えねぇだろ」
そして振り返る。
「ついてこい」
ガレージの奥へ歩き出す。
ロゼッタたちは顔を見合わせる。
グレンが肩を回しながら言った。
「さて」
「どんな化け物兵器が出てくるかね」
リンがワクワクした声を出す。
「楽しみすぎる!」
工具の音が響くガレージの奥。
その奥に――
巨大な布で覆われた試作品車両兵器が静かに待っていた。
続く
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