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 顔から火が出る、まさに言葉の通り、いやそれ以上に体中が羞恥で熱くなりながらも思い切って。口に出したものの何故かジェネから何の反応もなく、不安になった私は俯きながらもチラリと視線をジェネに向けると――。

 『無表情』『鉄面皮』など言われていたジェネシズ・バルドゥ・レーン、この国の近衛騎士七番隊隊長を務める元王位継承権第一位の彼が……口をぽかんと開けて、呆けたように私を見た。

 

 や、やだっ! これ人に見せていい顔じゃないよっ! 何ジェネどうしたのっ?? ――ああでも私ってこの表情見れただけでなんか得したかも……?

 ジェネの顔をコレ幸いとじっくり見ていたら「くそ……」と唸る様に呟き、ふいと横を向いてしまった。

 

 え……私なにか悪い事言った? って、まさに言ったわ! そうだよね、ドン引きしちゃうよね。いきなりしてくださいなんて、何言っちゃってるのだよね!


 ゴメンナサイ、聞かなかったことにして! とパッと離れようとした私の右手をジェネの右手が押さえる。片膝をついたままのジェネは、横を向いたまま私に幾分怒りを押さえた声を絞り出す。

 

 「二点、確認したいことがあるんだが」


 「……ハイ」


 「何故(・・)だ?」


 そうだよね、そりゃ気になるよね。いきなり『してください』なんて色々段階すっ飛ばしてるからね。母親は、『光の精霊との契約方法はね、代々の精霊姫じゃないと知らないのよ。翔も知らないし、私はアルゼルにも言ってないのよ。だから安心してね?』と軽く笑って言ったけど。私はこれから相手を頼むのに、黙っていられそうもない。

 そこで、とにかく『繋がる喜び』という条件を云々という話を、たどたどしく伝えたら「あの庭で知ったのか」と聞かれた。わーっ! そ、そうなのよっ! ジェネから落とされた唇により現れた光の精霊。その時に契約条件を知ったのよね。不自然に走り去ったから、理由が気になっていたらしい。


 「あともう一点。――それ、ハルにも言っただろ」


 「えっ、やっ、やあっ! 聞いちゃ……いましたか」


 「ああ、俺はそれを耳に入れたとき猛烈に悔しい思いをした。何故俺に言わないのかと」


 わああっ、そこなんだ?!

 慌ててジェネの手を両手で握っていい訳をする。


 「だって! 私その頃は、イル・メル・ジーンは女性だと思っていて、なんだかジェネといい雰囲気だし……頼めないもの、そんなこと」


 「そう……言っていたな、あの時。そんなにも俺とイル・メル・ジーンの仲を気にしていたのか?」


 口角を少し上げて、握り合う私の手をジェネの指がゆっくりと撫でる。――それだけでぞわっと腰の辺りに痺れが襲う。なんだろ、とても変な……感覚。


 「気に……なりますよ、好きな人ですから。好きな人の邪魔にはなりたくないから、頼めなかったんです」


 あの時の苦しい気持ちがじわりと滲む……兄と思い込もうと気持ちに蓋をしたけれど、気持ちが後から後から溢れて。イル・メル・ジーンとの仲を考えて無理矢理感情を押し込めたあの夜の長さといったら、今までで一番長く感じたと思う。


 「そうか、分かった。……だがとても帳消しには出来ない、超過分は覚悟しろよ?」


 「か、覚悟って!」


 途端情欲溢れる目で私をみつめるジェネ。わ、私からお願いしておいてなんだけど……! 若干のけぞる私に――。


 「改めて言わせて欲しい。俺はショーコを守ることを魂に懸けてここに誓う」


 そしてジェネは真剣な顔をして左手を自分の胸へ、右手は私の右手を取りキスをした。今までにないくらい強い意志に、私の心は存分に包まれた。

 ――わ、私もっ!

 私の掌に添えられたジェネの厚い手を、今度は私がぎゅうっと両手で掴んでジェネに負けないくらいの力を声にこめた。

 

 「私も! 私にも誓わせて? 私もジェネを守ることを、魂に懸けて誓います!」


 知略、剣術、体術……どれも私がジェネを守れるほどの力は無い。しかし、大きく聳え立つ杭も、添え木となる物があればもっと地に対して真っ直ぐに立っていられると思うんだ。

 どんな大雨でも、どんな風でも、二人一緒なら。


 私とジェネは目を合わせると、お互いにふふっと笑った。――っと思ったら!


 「きゃっ!!」


 「では全てをいただく」


 いわゆるお姫様抱っこで私を軽々と抱き上げ、隣の部屋――私が使わせてもらっている仮眠室へと扉が開かれる。わっ! 確かにここならベッドがあるけど!


 体に密着しているジェネの厚い胸板に縋ると、「怖いか?」と探るように声が落とされる。

 うん、怖い。怖いけれど……。

 

 「ジェネなら怖くないよ。でも……私、は、初めてだからっ」


 「そうか。それは……」


 ――いいことを聞いた。そんな言葉が聞こえたような? そして、扉はそっと閉められた。


 

 


 




大人は月に行くことにします☆

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