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1 光と、そして


 ん……?


 瞼は明るさを感じ、徐々に意識が浮上する。

 

 ――もう朝か……って?


 体にピタリと温もりを感じ、しかし何故か胸の辺りに不埒な動きをする何かに気付いてそっと目を開けば、そこには――――。


 「おはよう、ショーコ」


 「……っ!」


 朝日がジェネの背後からあたり、黒髪から透けて零れる光がキラキラと眩しい。丹精な面立ちは私に向けられ、その瞳に映る私の姿って、どういう風に見えているのかな、一体……あっ! そうだった!! コトが終わり他愛もない話をしているうちにジェネの低音が眠気を誘い、グッスリと今まで寝ちゃった……?

 

 「お、はよう、ジェネ」


 致したのを思い出しぽっと顔が火照る。うわああっ、どんな顔すればいいか分からないよっ! ……ん? ちょっと待ってこの手は何?

 片胸すっぽり覆うほどの大きな手が怪しく動いていたので、ぺちっと叩いて外させた。


 「……目の前にあるのに触らねば失礼だろう?」


 そんなわけないでしょっ!

 あれ、でも今何時なのかな? 起きなきゃ!

 ベッドから身を起こそうとすると、普段意識もしないような箇所があちこち悲鳴を上げた。


 「ああ、無理をするな。体が痛むだろう?」


 そういって体を支えてくれた。昨夜のままなので当然下は何もつけておらず、掛布団を手繰り寄せて体に纏わせたけど、何故かジェネはすっかりと着替え終わっていた。


 「あれ? ジェネ、先に起きていたんですか?」


 「先に起きたというより、寝ていない。ずっとショーコの顔を見ていたからな」


 「キャー! 何言ってるのジェネってば! 私の寝顔なんか見てたの?!」


 「当然だろう? やっと俺のものになった女だ。じわじわと全身に広がる喜びに浸りながら、この上ない幸福感に満たされた。ショーコの艶のある髪も、恥らう度に赤く染まる肌も、華奢に見えるのに脱げは扇情的な……」


 「やーっ!! もういいです! もういいですからやめてー!」


 掛布団を勢いよくジェネに被せて言葉を封じ、痛む体を押してベッドを降り衣服を手早く身に着けた。不服そうに唸るジェネだったけど、流石に仕事があるのでのんびりもしていられない様だ。押し付けられた布団を畳んで整え、「ショーコ、先に行く」と言って私にトンと軽く口付けてからジェネは部屋を出て行った。


 触れた唇を指でそっとなぞり、キスの余韻に浸る私。

 ――愛されている。愛している。

 もうそれは疑いようのない事実として私とジェネの間にある。人を好きになるというのはこんなにも満ち足りる物かと幸福感で一杯になった。


 ――ひめさまー……


 その時随分とか細い声が心の片隅に聞こえてきた。様子を窺うような……。

 

 ――姫君……


 うわっ! そうだったー!

 精霊達を部屋の外に追いやったまま放置しちゃってたわ!


 「うわっ、ごめんねっ! (ほむら)飛沫(しぶき)疾風(はやて)息吹(いぶき)(とばり)、それから光の子、みんな集まってー!」


 声に出して呼び寄せると、即座に現れた6人の子供サイズの精霊達。


 「待ちくたびれたっつーの!」

 「事態の推移を息を殺して待ち、光のが降りて即座に捕獲しておりましたが如何せん遅すぎですね」

 「ひめさまおっそーい!」

 「……」

 「姫、まさかお忘れで?」

 

 一度に言わないでー! だからごめんなさいってば!

 しゅんと肩を落として反省しながらも、焔と息吹に両腕掴まれている「光の子」に目をやる。銀糸のような美しい髪を肩まで伸ばしたいわゆるおかっぱスタイルで、瞳も銀にきらめく。


 「お姫様、ようやく繋がりをもてたのですね! ふむふむ、ちゃんと貫……」


 「イヤー! ダメダメ言わないでっ!!」


 遠慮のない光の子の口をぎゅうと押さえてこれ以上の言葉の暴走を止めた。


 「もがが!! もがっ!」


 「姫君、光のは名前の契約を求めていますよ?」


 「わっ! そうだった!」


 ようやく全ての精霊が揃う。この時の為に考えていた名前を付けるんだ。

 押し付けていた手を離して光の子と向かい立ち、すうっと息を吸い込む。


 「光の子、名前を授けます。――――ひかる!」


 「――――ひかる」


 ぽうっと光の繭に包まれ、強烈な光が辺りを支配する。そして徐々に柔らかな光と変化して収束すると、光の子――ひかるの額の中心に、ダイヤモンドのようにキラキラと美しく反射する宝珠が現れ、私の耳にも一つ追加された。

 左右どちらも三つずつの宝珠が私の耳朶を彩り、これでこの国の精霊達の気配が全て私の知る所となった。少し意識を向けるだけで、どこになにが、どんなことをしているか。そしてそれらを意のままに動かせる……力を手に入れたことを理解した。


 「みんな、ありがとう。それから、これからもよろしくね?」


 大きすぎる責任に不安や恐れはあるけれど、私には色々な人が付いている。支えたり、支えられたりしてこの国の為に一つの役目をになえればいい。

 私の言葉に、みんなはそれぞれの言葉で決意を述べてくれるけど……。


 「ちょっと! 一人ずつ喋ってよ!」


 わーわーと一度に大きな声で自己主張を始めるから全く聞き取れない。一喝でピタリと静かになったけど、今度は一人ずつ言う順番をそれぞれが肘で後にしろと隣を小突く。


 「てめーあとにしろよ」

 「やだー、ぼくさいしょにいって、ひめさまにだっこされたいのー!」

 「私も後は嫌ですね。印象薄くなりますし」

 「お姫様、私からですよね?!」

 「やはりここは私から姫に……!」

 「……」


 コソコソ……コソコソ……


 「あー! もううるせえっ! 俺に先に言わせろっ!」


 『どうぞどうぞ』


 「……!!」


 ちょ、ちょっとー!

 焔が叫ぶと同時に残りの五人が焔に向かい手を差し出し、うわこれ何度目? と目が点になった。

 お約束ってのは、つまりこういう事なんだけどね……。呆れるやら可笑しいやらで、お腹がよじれるほど笑った。


 




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