人生の終わりは胸骨圧迫から
「ご来店ありがとうございましたーっ!」
カラカラとベルの音が鳴る。
「ふんふんふふーん♪」
20過ぎの一人の男が小躍りしながら店を出る。
「はぁ…至福のひとときだった…」
紙袋を抱きながらそう答える。
「あのぷにぷにの肉球…フワフワな毛並み…きっと店員のみんなが相当な猫好きだ…猫ちゃん一匹一匹に愛情込めてお世話してるんだろうな…」
後ろ髪を引かれる思いでゆっくりと道を歩く。
「流石☆4.5の猫カフェ…上司を言いくるめて有給取ってまで来た甲斐があるというもの…写真フォルダがいっぱいだ…」
スマホの写真を眺め、恍惚とした顔を浮かべる。
「写真集も素晴らしい…思わず一冊買ってしまった…うふふ…しばらくモヤシ生活か…悔いはない…」
周りの歩行者から白い目で見られているがそんなのは気にしない。
すると隅に生えていたサツキの木からカサカサと枝が擦れる音がした。
「うん?」
じっくりと茂みを眺めると、真っ黒な猫が飛び出してきた。
「あっ猫ちゃん!かぁわいいなぁ…綺麗な黒だぁ…」
手をそっと差し出し、におわせる。
ふふん、心惜しくはあったがちゃんと手を洗っていたからな。
しばらくすると気を許してくれたのか近くに寄り添ってきてくれた。
アゴのしたを撫でてあげるとゴロゴロと喉を鳴らした。
「初対面でここまで許してくれるの珍しいなぁ…元々飼い猫だったのかな?」
頭からそっと撫でてみるとゴロンと腹を見せてきた。
「いい子だなぁ…飼いたいけど一人暮らしだから責任持てないしなぁ…」
すると身体の体勢を戻し、歩き出した。
「あっ猫ちゃん待って!」
後を追いかけ、道路に飛び出し…
一人と一匹はトラックに跳ねられた。
大きく吹き飛ばされ、仰向けで地面に転がる。
紙袋の中身の写真集も地面に散らばった。
「いっ、た、い…」
動けない。
立ち上がれない。
現場を目撃した人達が駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫ですか?!すぐに救急車を!」
「聞こえますか?!話せますか?!」
そう聞こえた気がする。
生憎、男の鼓膜の片方が割れていた。
耳鳴りと痛みで頭の中がグチャグチャになる。
身体が…熱…い…?!
気がつけば、ナイフで刺されたような熱い痛みが全身を襲っていた。
「かほっげほっ…?!」
口から赤い何かが出てくる。
血…?血…?!
「はぁっ!…ひゅー…!ひゅー…!」
息、が…でき…な、い…
肺、が、つ、つぶ…れ、た…んだ…!
痛、たい…痛、い…!!!
血、が、血が、と、止まら、な、な、い…
顔を地面に向けると、ルージュ色の水たまりが徐々に身体を濡らしていくのが見える。
それを意識すると、さっきまでの身体の熱が引き、反対に身体が氷のように冷たく感じた。
ちく、しょう…
い、い、いた、い…
死、ぬの…か…?私…?
「ま、だ…ひゅーっ…!」
「喋った!私達の声が聞こえますか?!」
少しずつ意識が遠のいていく…
「ま、だ…ね、こ…ちゃ…やん、の…ふう、ぅっっ!…しゃ、しゃ、写真集…よ…で…ない、の、に…」
声を絞り出してそう言った。
「こ、この人息ができてない!」
「ど、どうする?!」
「学校で習ったやつだ!胸を押すやつ!」
聞きたくもないことだけはっきりと、聞こえてしまった。
ちが、ちが、違う…
は、いが…潰れ、て…るん、だ、よ…!!!
それ、は…
あっ、あ、悪化…させ、さささせ…!
男が喋ることも許されず―――
「イチ!ニ!サン!」
無駄にリズム良く潰れた肺をさらに刺激する。
ばきばきと、肋骨が音を立てて折れる。
折れた肋骨が潰れた肺に突き刺さる。
善意の人命救助によって男を死に追いやっている事を知らない彼らは決して手を緩める事をしない。
男の口がさらに血を吐き出し、男は無様にも自分の血で濡れたアスファルトの上で溺れる。
とっくのとうに冷たく、痺れだした自分の手の平を見ると、自分の血で赤く汚れたいる指先が青紫に変色していくのがよく見える。
そして…
男は、もう何も考える事はなかった。
何も、聞こえなかった。
最後に共に跳ねられた猫を見つめながら…
男とその猫はその短い生涯に幕を降ろした。
「………にゃあ」
A級戦犯がたっくさん!
まぁ実際自分達がやろうとしても多分同じ事になるとは思います。
血溜まりができはじめているんだもん。そりゃ誰だってパニックになるよ。
先に書いた別の小説も同時進行でやってくよ!
絶ッッッッ対にエタらせないから安心せえ!




