思い出の城 2
城の中は予想通り不気味だった。どうやら、もう何年も使われてないようである。
埃っぽい城内を、先ほどであった謎の女の後についていきながら、俺達三人は歩き続けた。
「ごめんなさいねぇ。お掃除したいのだけれど、どうにも、私一人じゃできることに範囲があって……」
すまなそうにそういう女。
掃除といっても……掃除をしようとした形跡さえも見られない。
「アナタ、この城の持ち主なの?」
アニマが問いかけると、女は立ち止まってこちらを振り向いた。
「持ち主……そうねぇ。そんな所、なのかしら?」
まるでふわふわとした喋り方で、どうにも要領を得ない。持ち主でないとすれば、なぜ勝手に城に入っているのかが疑問である。
結局、俺達は城の中を連れまわされた。そして、最期に辿り着いたのは、どうやら元々は玉座の間と思われる場所であった。
「ここが、城主がいた椅子よ」
女はなぜか愛おしそうに、ボロボロに朽ちかけたその椅子に触れている。
「はぁ……まったく。よくもこんなくだらないことに付きあわせてくれたものね」
と、いきなりアニマはイラつき気味にそういった。
すると、女はこちらに振り返ってニンマリと微笑んだ。
「あら……アナタ、わかっていたのにどうして付き合ったの?」
「私は、代償魔宝具に対してしかるべき処置を取るためにここに来たの。だから、アナタのくだらないお遊びに付きあう必要があった……まったく。趣味の悪い魔女もいたものだわ」
さすがに俺もいい加減わけがわからなくなってきた。
アニマと女のしゃべっていことは理解できない。
「あ……おい。もういいんじゃないか。ここには魔宝具なんてないんだよ。とっとと帰ろうぜ?」
「いえ。あるわよ」
アニマがはっきりとそう言った。
その瞬間、いきなり玉座の間の扉が、バァンと大きな音を立てていきなり閉まってしまった。
「……はぁ? ど、どうなってんだ?」
「うふふ……さぁ、貴方達も、もう逃げられないわよ?」
女はなぜか嬉しそうに笑っている。俺は慌てて扉に駆け寄る。
しかし、蹴ったり、殴ったりしたが、ボロボロのドアのくせにびくともしなかった。
「ど、どうなってんだ……アニマ、この扉、魔宝具か?」
「いいえ。その扉は魔宝具じゃないわ」
「え……じゃ、じゃあどうなってんだ?」
俺が問いかけると、アニマはキッと鋭く、女の方を睨みつけた。
「それは……このお城の持ち主が知っているんじゃないかしら?」
アニマがそう言うと、女は不気味にニタニタと笑い出したのだった。




