14.静かなる眠り
どこか知らない砂浜で、アイカはゆっくりと瞼を開けた。
目の前に広がるのは、見知らぬ海と白い波。足元には、ぬるく湿った砂。
辺りを見回すと、見覚えのある仲間たちが倒れているのが目に入る。
アイカ「サクナ……タイガー……ナギ……」
アイカはふらつきながら立ち上がり、声をかける。
アイカ「お前ら、大丈夫か?」
その声に、タイガーが顔をしかめながら身を起こした。
タイガー「いてて……なんだここ……?」
次に、アイカはサクナのもとへ歩み寄り、その頬をそっとたたいた。
サクナ「ん……」
サクナがかすかにうめき、目を開ける。
アイカ「よかった……」アイカは安堵の息を漏らす。
けれど、まだ一人――ナギだけが、動かない。
なぜ、アイカは最初にナギの様子を見なかったのか。
心のどこかで、嫌な予感がしていたのだ。
その予感を、確かめるのが怖かった。
重い足取りでナギに近づくと、その身体に手を触れる。
――冷たい。
明らかに、他の誰よりも。
アイカ「ナギが……冷たい……火を……火を用意してくれ!」
声を震わせ、アイカが叫ぶ。
それを聞いて、立ち上がったサクナが静かに言った。
サクナ「変わって、アイカ」
そう言って、ナギの脈を確認する。
……数秒の沈黙の後。
サクナ「……脈が、動いていない。残念だけど……ナギは、もう……死んでる」
その言葉を聞いた瞬間、アイカの脚から力が抜けた。
膝から崩れ落ち、砂の上に手をつく。
目の前が滲む。
ナギと過ごした日々が、次々に脳裏によみがえる。
笑いあったこと、泣きながら支えあったこと――すべてが鮮やかに。
アイカ「……うそだ……」
アイカの声は、砂に吸い込まれるようにかすれていく。
やがて、涙が止めどなく頬を伝い、アイカはその場で泣きじゃくった。
心にぽっかりと空いた穴を抱えたまま、白い波がまた、静かに寄せては返した。