①マドカノミコト
辺境の森での転移直後の騒乱と戦いから数日後、【真人】の治療も効果も有ってか不思議な程に傷も癒えた。
とは言え四人の大学生は精神的な疲労の方が酷く、そちらの回復の方は八割形と言った所である。
落ち着いて来れば、正人達はそろそろ起こった状況を詳しく知りたくもなる。
助けてくれたであろう男は此処は全くの異世界と云う訳では無く正人達の世界よりも上位に位置する並行世界の一つで有ると告げ、今は休めと治療と最低限の世話だけして直ぐに何処かに行ってしまう。
それ程広くは無い庵には必要最低限の物しか無く、外に出ても相当に標高が高いらしく断崖絶壁の先に見えるのは…果てしない海原と逆側はどこまでも続く…恐らくはあの赤い靄が掛かった森林地帯のみ、歩いて行ける場所には小さな森と灌木等が茂っては居るが、この場所は断崖の上らしく…全く持って信じ難い地形で…同じような断崖が何処までも続いている。
探そうにも何処を探せば良いのやら分からない、勝手に出歩いて危険な生物に遭遇したのでは目も当てられないし、そもそもこの断崖の上から降りる手段も無い。
それで助けてくれた男…【真人】マドカノミコト…彼が庵に戻って来た時に皆で詰め寄り説明を要求した。
彼の話しぶりからある程度は転移の状況を理解しているらしく、小鬼の正体をポロリと…とは言え彼に取っては当然の知識で特に憚る様な話では無かったらしい、正人達もそうなのか?と驚きはしたが、オカルト好きの正人、英二、涼夏の三人はそう言われるとしっくり来る程度の話ではあったのだ。
だが…直接戦い、手を下し…命を刈り取った美咲の反応は全く違った。
「うぅ……そんな……アタシは…そんなつもりじゃ…だってアレは天邪鬼…尾形左衛門だって…討鬼伝に出て…伝説に出てくる小鬼で…怪物で……なんてこと…グキッて…グニャって…うっ!ちょ…ゴメ…うぇぇ…ゲェ…」
「美咲ちゃん!大丈夫かい?!……すみません…僕らは少し外の空気吸ってきます…」
英二は美咲の背中をさすりながら、彼女の肩を抱いて庵の外に出て行った。
伊藤美咲は頭自体は別に悪い娘では無い。
だが多少視野が狭く、想像力に欠ける所は有るのかも知れない。
尾形から小似呼村の伝承を聞いてもいたし、少しだけ考えれば分かりそうなものだが肝心な考察が欠落しているのが彼女の至らなさであろう。
まぁ…それも個性ではある。
鬼の子を妊むと言う事は霊魂や肉体共に人間と全くの無関係と言うわけでも無いと云う事だ。
小鬼だけでは無く、サイズが違う大型獣人は難しいが他の獣人或いはかつて存在した亜人、そして黒き魂の眷属達は一部を除き現人との生殖行為が可能で有る。
「うん…確かに人間が主要の世界から来たら怪物にしか見えないか…堕落して人間に転生出来なくなったとは言え邪鬼やその眷属に宿っているのは紛れもない人間の、かつて知性体だった魂なんだよ、ただ君達の世界だけでは無く、三千世界、百万世界の地球に散らばる霊性と精神性が高くて魂を持つ人型生物は全て人間と言う括りになってはしまうんだけどね。」
マドカは息を継ぎ、正人と涼夏の反応を伺い話を続ける。
「だから君達の様なタイプを現人と呼ぶんだ、そして【人間】と呼ばれる魂を持つ知性体の進化先は、元が獣人であれ現人であれ全て【真人】或いはその先の上位種【神人】となる、肉体的な特徴よりも精神性や霊性の高さで判別されるわけだね。」
「興味深いデス…ですが私、少し、いえ…気になる事が沢山有りまして、えっとマドカノミコト様?質問宜しいでしょうか?私達の世界にも、その…上位種は存在すると?」
涼夏の些か堅苦しい問いかけにフッと笑い【真人】マドカは返答する。
「君等の分割して重なっている世界だと僕等と同種の存在は肉体を持てないし、一部の異能者以外には見えないのさ、ある程度は霊体や他のものを認知出来る人でも精神性の在り方によっては僕らの同族を認知出来ない人もいるみたいね。霊能力の才能があっても精神の在り方によっては神霊が見えない事も有る。」
正人が唸る。
「霊能者と言っても皆が皆、人格者ってコトでも無いのか…」
「そうだね、下の世界だと能力の高い者ほど気を付けねばならないだろうね。何かが優れていて特殊能力を持ってる訳じゃない。何故力を持っているかと言えば魂がそう言った人生を選んだだけなんだよね。だから精神性が低かったり傲慢で独善的で有ると逆に魔界に繋がって低級な邪霊…こっちで言う邪鬼の霊…それから亜次元の…【何者でもない存在】を神霊や聖霊と誤認して霊性を落とす能力者もいるからね。奴等は星神や僕等の真似をするから向こうの僕等と同等の存在も、そうなってしまうと…分断されているが故に、助ける事も出来ないかから…まぁ…その手の試練も織り込み済みで魂はそう言った人生を選択してるのだろうけど…周囲の人間には理解されない事も多いし…結構過酷だよ?」
星神…オカルト好きでも知らないワードがチラホラ…
涼夏が恐る恐るマドカに確認する。
「星神?…いえ…えっと…その…マドカ様なんかの神様的な方々への挨拶の仕方とかって…特殊な作法とか…しなくても良いのデスか?」
マドカも苦笑いしながら答える。
「………神仙扱いされてるのは知ってるけどね。向こうの同族は肉体も無いから、感覚も考え方も多少違う部分は有るけどさ、そんなに堅くらなくて大丈夫だよ?人と言うか存在にもよるけど、君等のそんな態度を淋しく感じてる場合も有ると思うよ?僕等は傲慢で居丈高な存在では無いからね。まぁ…説教臭い奴もたまにいるからそう見える事も無きにしもあらずなんだけど…それも個性の一つって事で…」
「なるほど…ふむふむ…興味深いデス…」
「…とは言え僕も君の世界と同レベルの並行世界で人として有った時はそんな態度だったかも知れないけどね。まぁ…こちらの僕らは肉体も有るから、もっとフランクに接してくれて大丈夫だよ♪今だって街に買い物に行くし、人間達に混じってこっそりと音楽や演劇を楽しんだりするんだぜ?…気軽にマドカと呼んでくれると嬉しいな♪」
涼夏はマドカのちょっとした説明にも目を輝かせ首をカクカクと何度も頷ける。
「うわぁ~もう今のお話しだけでも知りたかった事の洪水ですよぉ~それに、人はいつか神に至れるんですね…ふぁぁぁぁあ~♪」
マドカはその涼夏の様子に頭をポリポリと描きながら…困った顔をする。
「ん~だから別に神様ってわけじゃ、その先に終わりは無いわけだし、僕らより上の位階に存在する神人達だって、カミとは言っても通過点でしか無いんだから…カミってのは元々自分よりも上位の存在に対する敬称だからね…」
「あっ♪月間アトランティスでそんな説明見たことあるかもぉ~♪」
「ハハ…うちのカミさんがぁ、ってお父さんが言うの聞いた事無い?それと同じだとに思ってくれて良いからね?もう少し高度な話をするとカって言うのは外側を構成するモノで、ミって言うのは内側に入るもので、これはあらゆる事象に…物質文明と精神文明……西の文化と東の文化…陰と陽……男と女…」
涼夏に請われるままに様々な説明を始めるマドカを…やや煙たげに見つめつつ…正人が疑問を口にする。
「鈴本さんさぁ…色々と知りたいのは俺も同じだけど、今聞いて身に付かない知識ばかり詰め込まれても使いこなせないんじゃ意味なんか無いんじゃ無いか?普段ならそれも悪く無いけど、今はアイツら小鬼達の事をもっと詳しく…それに帰還の方法もな、そんで…これは俺の個人的に気になってる事なんだけど、マドカさん…アンタ…何で俺の事を兄弟って呼ぶんだ?」
涼夏が文句を言いつつ…不可解な表情をする、兄弟がどうこうの話は全く聞いていない。
「別に良いじゃない!異世界なんて不思議な場所、もし帰ったら二度と来られないんですよ!?それにまだ私の質問が有るでしょ?!…兄弟?正人君がマドカ様と?小鬼に頭でも殴られましたぁ?!」
だが…マドカは嬉しそうに正人を肯定する。
「おっ!良い事言うじゃ無い!やっと片鱗を見せてくれたのかい?確かに兄弟の言う通り、請われればいくらでも教えてあげられる。でも人伝に聞いた知識、或いは人に押し付けられた知識ってのは大抵は聞いた本人には身に付かないパターンが多い。」
マドカの言葉を聞いて涼夏が抗議の声を上げる。
「え~~~~!ちゃんと身に付いてますょう…ずっと知りたかった事なんだから…」
「…まぁ無駄にはならんがね、本人が成長して実力を付けて聞いた事も忘れ掛けた時に初めて生きて来る。でもそう言った兆しが有れば必要な時に身に付くか、勉強の機会が訪れる物だからね♪因果律の法則の一つでも有るのさ、それに今僕がした話は数え切れない程転生を繰り返し始めて生きて来るタチのものでもある。だからさ…今を生きろって話だよ♪」
「マドカ様ぁ~!うぅ~それでも私は聞きたいんですぅ~」
「そうじゃ無くて!奴らが何故ああなってしまったのかとか!俺等も死後…転生後ああなる可能性が有るのかって事と!後は帰還出来るのか?と…それと…それに何で兄弟なんだよ、わけわかんねーよ…」
二人はそれぞれに不満を口にする。
正人は邪鬼達が元々は人間だったと聞き、どう言った条件で小鬼になってしまうのかそれを知りたがった。
ひょっとしたら自分も既に黒い魂になっているのでは?
或いは、森を覆っていた瘴気に長時間晒されていた事が心配でならないのかも知れない。
「あ~はいはい順番に説明するからねぇ~質問にも答えるよ~兄弟ってのはほら、アレだよ…君は分かんないかも知れないけどさ…【真人】になるとね断片的だけど過去世の記憶や習得した技術を引き出せるのさ…あ!そうそう!過去世で兄弟だった事があったのよ!そんで…え~と、魂の共鳴っての?いや本当に…懐かしくて…へへ…」
何か…嘘くさい、だが神様的な奴にそんな魂の共鳴等と言われてしまえば、取りあえずは信じる他無いだろう、本当の事を言うつもりが無いならどうしょうもない。
庵の引き戸を開けて美咲と英二が戻って来た。
「ううっ流石に外は冷えるなぁ、向こうは結構暖かかったけど、こっちは何月なんだろう…?」
「うわぁ~やっぱり外寒い!ここ標高高過ぎて!雪とか残ってるし、でもなんで高山病にならないんだろ不思議~火に当たらせて!」
土間に半分靴底が溶けたスニーカーを脱いで、二人とも囲炉裏を囲む皆に加わる。
「今はまだ春先だよ、七区…魔界は根の国…冥府に近い土地も有ってさ、入口は僕にも分からないんだけど結構アチコチに有るらしいよ?魔界がある場所に冥府の入り口が現れる。なんて説も有る。冥府に近い土地ってのは冥府に入れないで追い出された黒い魂や穢れた霊気が溜まりやすい場所でさ、魔界になりやすいんだ。」
「え?何々?…あの世の話?怖い話は好きじゃ無いんだけど…」
分からないままに美咲がトンチンカンな事を言って話の腰を折る。
「…君等の世界と違ってこっちはみんな一緒だからねぇ、君達【重い世界】の人間が言う所の天界も魔界も冥府もね。こっちだとそれは場所や状態の違いでしか無いからさぁ…だからこのくらい標高が高く無いと瘴気の影響受けるってのも有るし、特に精神にね、一ヶ月程度なら大した影響も無いけど何十年も住むとなるとね、肉体…植物にも数世代は掛かるだろうけど影響も出たりもする。高山病にならないのはこの庵、辺境の監視所の近辺に言霊を刻んで調整してるからだね。」
「うわぁ、言霊ってそんな使い方もあるんですねぇ…」
涼夏が感心して、目を輝かせる。
「刻むってのは元々西洋人の技術でさ、…今は【魔法】ってのははちょっと悪い意味になっちゃうんだけど…ルーンとか聞いた事あるかなぁ?本来は魔法ってのはルーンの事を指すのよ、君達のラインに属する並行世界にもあった記憶が有るよ?まぁ向こうじゃお守り程度にしかならないけど、こっちじゃ古の西洋の神人達が力を込めた文字で、文字そのものに力があってさ、まぁ今はルーン使いはアシハラにも結構多いんだよね。」
「ふむ…海外由来の技術ですか…」
英二が相槌を打つ。
「そうそう技術の転用って奴だよ、今は復活してるけど、一時期、数百年くらいかな?悪神が幅を利かせる様になってから以降の西洋は、ルーンの技術も廃れちゃってさ、知識を受け継いだ現人達も悪神を崇める世界宗教に見つからない様にこそこそと活動する様になってね。【神聖魔法】以外の霊術は異端の技っさ…ルーン受け継いた者達も必死だったんだろうね…残念な事に…その中には邪気達が使う邪言の概念みたいのも取り込んでルーンの技を変質させた者達がいたんだよ、それで…そう…これがさっきの話にも繋がるんだ、君達が邪鬼に堕ちる可能性が有るか無いかってね…結論から言えば…」
正人はゴクリとツバを飲み込み聞き入る。
「……言えば?」
「基本的には一回の人生で魂が黒く染まる事なんて無いから心配無いよ?例外は有るけどね。でも西洋のルーンを変質させた【魔法】を使ったりすると若い魂でもそうなる可能性がある。…ルーンの石単体を霊力でで使うなら問題ない。精霊では無く古代の神人が意味と事象を込めた力を自分の精神力を消費して使う物だからさ…」
マドカが全員に…少し厳しい視線を向けながら注意喚起する。
「だけど【魔法】…本来で有れば邪術が適切かな?アレはルーンの力で無理矢理精霊を従わせる方法だから、精霊や他の霊の恨みを買って、最終的には異質な次元の思念、想念を受信させられる様になる、精霊達にそれ程の自我が有るわけじゃないけど、意に沿わない命令には隙間が発生する。その隙間から異質な次元に繋がって、使えば使う程に魂が穢れるから絶対に使用しない事だね。近代の魔法使い達がこれぞ魔法だ!なんて広めちゃったから…正当なルーンを継ぐ家系は腹立たしいだろうなぁ…」
「はぁ…良かった…死んで転生があれじゃ…希望も何もあったもんじゃない…」
だが…魔法の話を聞いた涼夏は少し残念そうである。
「魔法、魔術って聞くとちょっと憧れもあったんだけどな…そうなんだ…変な次元って何なんです?」
「そうだなぁ…悪神の信徒達は悪魔って呼んでたけど、我々が存在している百万世界…この地球を起点とした並行世界の上位次元から下位の次元…それらは細かな歴史や法則は違っても大体は似たような歴史を辿る。まぁ異世界とは言っても同じグループと言っても良い、それとは全く違う異質な価値観と法則を持つ場所の事だと言われているけど、そこにた揺蕩う存在…【何者でも無い存在】って呼ぶしか言い様も無いかな?世界宗教の連中はサタンとか色々と名付けてたみたいだけど…本来は名前なんか無いんじゃないの?霊でも魂でもない想念だけの個を維持出来ない集合知性とかエネルギー体みたいな存在らしいし…」
「悪神って悪魔の事じゃ無いんですか?宇宙人とかですかぁ?私あんまりそっちは信じて無いんですけどぉ…もしかして…」
「宇宙人?あぁ…星神の事だね?彼らは…僕らを作った…古くはそのプロトタイプで有る獣人も作った創造主だよ、まぁ今の星神ははその系譜を継ぐ者達ってトコかな?下の君達の世界には彼らとコンタクト取る人間もいるけど、あんまり真に受けちゃ駄目だよ?彼らも過去の記録なんか断片的にしか知らない筈だし、まぁ…多次元に存在出来る者さえ居る凄い種族もいるけどね。地球の並行世界で言えば精神性の高い神人や真人クラスの人々ってトコ。」
「星神?さっきも言ってたな?月刊アトランティスで近い話は見た事有るけど、銀河連合とか何とか…」
宇宙人の話に関しては正人は割と好きな方で有る。
「あ~それぞれ、彼らが語る事も結局それぞれの主観が入ってるし…当然文化も違うからねぇ…僕らも協力は受けてるし悪い連中じゃ無いけど、あんま真に受けてもね。話半分で聞いて使える部分だけ参考にするとか…彼らが語る未来の話も結局時間軸が進んだ平行世界の話とかだし、古い星神…創造主達はいくつかの別々の種族らしいけど、滅んでしまったり…進化してより上位の次元に移行して既にコンタクトなんか取れないからね、彼らの真の意図なんて系譜を引き継いだ今の星神達だって分かって無いのさ…まぁ異星の僕らの先輩くらいに思っておけば良いよ。」
マドカが凄い事をサラッと語ったせいで、情報過多になった涼夏がキョトンとしたマヌケな顔で思考停止している。
別の質問で英二が口を挟む。
「悪神は悪魔とは違う…って事は…便宜上悪神と呼んでいるって事ですか?」
マドカは少し難しい顔をしながら…答える。
「う~ん…便宜って言うか結果的にだね。悪神と定義してるのは僕ら上位者と二区や一区に住む精神性の高い人間たけで、世界宗教の信徒達に取っては今でも唯一神では有るよ…もう消滅しちゃって存在しないけどね。彼は…僕らよりも相当に古い真人だったのかな?詳しくは分からない、消滅後は信仰を吸い上げる事で大きくなった想念が分裂して世界に拡散しちゃってるし、それすらも大八島の大災害…世界では終末の大戦時に全て消えちゃったし、信徒達の歪んだ願望を吸収し過ぎてああなった部分は有るから可哀想な存在で有るとも言える。……世界の在り方や良い悪いってのはどうやって作ってるって思う?どうよ?兄弟分かるかい?」
「ん…と…そりゃあ唯一無二の神様…創造主とかが居て…ってそうか…古い星神達か…でももう居ないんだろ?…ん??どういう事だ?」
「そう…もしかしたら遠い上層次元でそう言った存在が何か決めている…そう考える者も多いだろうね。確かにそう言った存在は僕らも微かに知覚出来る。だけどコンタクトを取って来る事などあり得ないのさ…位階の低い人類とコンタクトが取れる上位存在なんて精々が僕らとか…他は星神と下位の龍種みたいな存在だけだろうね。僕らなら上位の龍種の姿は知覚出来るけど、意思の疎通は存在としてかけ離れ過ぎて無理だよね。ただ僕らが存在している事そのものが超越存在の愛であり祝福だとも言える。全ての生命は超越存在の一部…端末だと言って良い。だからさ…人間如きの価値観で定義出来る悪と戦う絶対神とか…いくらなんでもレベルが低すぎるだろう?人の世界は人に任せられているのだから僕ら自身が考えてより良い世界にしてかなくちゃね。絶対的な存在に全て委ねてしまうのは楽だし安心だろうけど…それじゃ奴隷と変わらない。それは怠惰と言って良い…世界を作るのは僕らの生きる意味でも有る。」
何か閃いた様な顔で美咲が議論に参戦する。
「あ~何だっけ?んじゃアレじゃ無い?友達に説教食らった時にさぁ…自分の世界は自分で作るんだとか…怒られた記憶あるけど…そんな話?してる?今…へへへ♪」
何か少しズレてる様な気もするが…
マドカはニッコリと微笑み美咲を褒める。
「おお!素晴らしい!これが無知の知!知識ばかりに頼ってはこうした発想は出ないね♪時には本能に従わないとね♪気付きは何時だって人生の経験の中に有る。世界とは一つの物を共有するのでは無く、それぞれの世界に存在するのを許しているから僕が君達の世界に存在しているとも言える。」
「へへ…褒められちゃった…フフ♪……無知…ん?それって褒められてる???」
美咲の疑問符は無視してマドカは続ける。
「当たらずとも遠からずってトコだけどね、つまり…魂を持つに至った生命体、霊性の高い生命体の認知で世界は作られている。…だからその認知が緩い時代には生命やその志向の在り方としてより純粋な獣人達から、真人や…今より精神性は低いけど神人が沢山生まれたのさ、本能を抑えて人々に尽くし修行で霊性を高めてね。まぁ今はショッキングな切っ掛けが無いと少し難しいんだけど…うん…まぁ…だから君達の世界でも古い神々は大体獣の頭を持っていたりするだろう?」
何かを思い出そうとし…微妙な顔で正人が訪ねる
「あぁ…そうかなぁ?確かにそんな神様が載ってる本も読んだ事あったかな?…で悪神ってのは結局獣人の神様ってコト?」
「まぁ…真人に進化した時点で種族はあまり関係ないんだけどね…悪神は人の顔に雄牛の角を持っていた…とも言われているね。ミノタウロスなどの大型獣人は見た目は牛だからね。現人との混血種とかだったんじゃ無い?交配はサイズ的に難しい気もするけど…?或いは羊人や山羊人の様な所謂、西洋由来の有角人だったのか?彼は優しい真人だったのかなぁ?今となっては分からない。…虐げられた民を憐れんで自分は唯一絶対の神だから自分を信じる様にと導き始めた。希望を持たせる為にね…上位者としては正義感と言うか…情に厚すぎたんだ、私の民を虐げる者は地獄に堕ちる。なんて言い出したりしてね。それが後の選民思想の元になってしまったんだけど…僕等の寿命がどれくらいか分かるかい?」
「え?長いのか?アンタは…今一体幾つなんだ?三十前後に見えるけど…」
「僕は…十七の時に色々あってね。その時に進化して…今年で七十二歳になるよ。肉体のままなら大体三百年くらいかなぁ?精神体で世界に残り続ければそれでも千年位?…それ以上粘ると流石に神性も記憶も拡散して…やがては霊体も魂も神気や霊素が少しづつ離散し全てを忘れて彷徨う霊体になる。…肉体ってのはただの入れ物では無いのさ、神人でもそれ程変わらない。精々は二倍くらいかな?…修行の途中だからね。さらなる高みを目指して他の並行世界…神人なら更に上位の世界へ転生しなければならない…魂ってのは決して一つの世界には留まる事は許されないんだ…」
「ふぅ~ん…爺さんにしては若者臭いぞ?…本当だったとしても…いやでも…そんなモンなのか…永遠に近いのかと…」
「あーね…あんまり長く同じ世界に留まってるとね、思念…厄って言うのかな…あんまり良い影響無いのよ…そんで年は君等から見れば爺さんだけど、精神は肉体に引っ張られるからねぇ…見た目が若けりゃ心も若い!霊性が高くて生殖能力は低いけど…性欲だってあるんだぜ?十年に一度くらいはエロい事もしたいとは思うからねぇ~♪」
創造主が宇宙人、で放心状態だった涼夏が突然ハッとした顔でマドカに迫る。
「マドカ様!私立候補します!是非夜伽のお相手を!……ああ…そうです!きっとこの日の為に私純潔を守って来たんです!初めての相手が…異世界の…人を超えた存在になるなんて…♡」
美咲がジト目で涼夏に突っ込む。
「ぇ………何その……ストレートな求愛?…マドカさんOKとも何とも…それに……涼夏ちゃん…アンタ…前に生身の男に興味無いって………言って無かったっけ?二次元が良いって……」
「美咲ちゃんたら!そんな古い話を持ち出して!過去の私は私じゃ無いんです!それに…マドカ様って…余裕があって…ちょっと素敵って言うか…好みのタイプで…へへ♡」
「えっと…十日前くらいの話だと思ったけど…別に良いんだけどね。マドカさんはどうなの?涼夏ちゃんとか…」
マドカは優しげに微笑むと…その件に付いては何も答えずに…
「まぁ…その話はまたいつかね?……んっ……で悪神は上位者の中でも相当に無茶な時間を生きたんだ。肉体を持ったまま千年…そして霊体になってから更に約二千年、それだけの長生きが出来たのは長期間に渡り数多の信仰を集めたからなのだけど、人の願いや欲望を長期間に渡って受け続ければ徐々に変質していく事になる。彼は…精神体になってからもずっと人々の祈りや勝手な願いをその身に受け続けた…それは…」
心境の変化でアップデート中…
m(_ _)m
人の最大の創造物それは神である…
byどっかの偉い人




