表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山間討鬼伝…【R15】  作者: くとぉ
四章 ジョーイ=ドワイトの受難
17/24

③現実逃避


安普請なバーの中、くすんだ金髪に無精髭、汚れたシャツの男がグラスに注がれた透明の液体を飲み干す。


バーの中には客はその男一人、後は黒髪に髭面の厳つい白人男性…恐らくはマスターだろうか?


店の中には僅かではあるが赤い瘴気が揺蕩っている。


【有徳律】の結界がより強い上位の一区から四区では絶対あり得ない光景、魔界の玄関口と呼ばれる五区であってさえも少なくとも町中では見ない光景で有る。


だが六区の町では空気中に薄っすらと赤い瘴気が混じっているのは当たり前の光景でしか無い。


金髪の男…ジョーイは飲み干したグラスを無言でマスターに差し出し、透明の液体がグラスに注がれるのを虚ろな瞳で見つめる。



◆ ◆ ◆



それは突然の災厄だった。


いや…恐らく最初から狙われていたのかも知れない、森に入った時から…


災厄はおかしいだろうか?


だがジョーイにとっては災厄でしか無かった。


邪鬼の話はある程度は聞いており、知っているつもりでいた。


台地となった山の中腹に出来た村…故郷のドワイトヴィレッジから五区の方向に下った場所に魔界と化した沼が有り、【沼の幼女】と呼ばれる小型の邪鬼が生息していると言う話も聞いた事が有る。


沼地に足を踏み入れれば厄介な相手だが、半植物の肉体故に沼地からそう遠くには離れられないし、毒と小さな爪、数の多さが厄介なくらいで、それ程の脅威では無いとも聞いていた。


焔の巫女のパーティーは大森林の中で突然小鬼の集団に襲われた。


森の中で小鬼と出くわすのは珍しい事では無いと、守護ギルドの同僚から聞いた事がある。


ジョーイは小鬼を目にするのは初めてだった。


だが…あれは本当に邪鬼…話に聞く小鬼だったのだろうか?


あれはそんなレベルのモノでは無かった。


(もう…商人と丁稚(でっち)の少年と…ムトゥバは死んだ。鈴華もカレンも生きているのか死んでいるのか…巫女様はあの落雷では確実に感電死している筈、そう、死んで無ければおかしい!だからっ!…俺があの場に残った所で意味なんか無い!戦う意味なんて無いだろ?!だから!だから!だから!俺は悪く無い!仕方なかったんだ!)


だが…子鬼に捕らえられた女は滅多に殺される事など無い、脳裏にアイラやカレン、鈴華の顔がチラ付いた。



そしてジョーイ=ドワイトは…苦悶の表情を浮かべ、脳裏に浮かんだパーティーメンバーを掻き消すが如く、頭を振り、焼酎が注がれたグラスに手を伸ばした。…



◆ ◆ ◆



東大陸の避難民の子孫達が人口の大部分を占める街


ここは第六居住可能区域…スス原と呼ばれる。


森からは遠いが、ここも半分魔界の様な場所だ。


前時代の廃墟を再利用した街。


かつては大八島国の中で五大都市と呼ばれる街の一つではあった。


廃材を利用した防壁はスキマが多く、小鬼が侵入して女を攫って行ったケースも有ると聞く。


ほぼ壊れかけの古いビルディングが軒を連ね、壁にヒビが入り、繁茂した蔦が少しづつコンクリート建築を侵食する。


かつての集合住宅が立ち並び、ツタが絡みつき、いつ崩れてもおかしくは無さそうだが、こういった西方文化の影響を受けた建築物でも、かつて技術立国として栄えた大八島の技術力の賜物なのだろうか?


二百年以上前のコンクリート建物でも、ボロボロなのに未だに使える建物は多い。


多くの住民達の先祖の故郷、東大陸では世界宗教の分派の信仰をベースとした赤の魔人の派閥と【魔法】と科学による発展と過激な多様性を推進する青の魔人の派閥の二大勢力による争いが激しくなった結果…


荒れ過ぎて人の住めなくなった都市部は放置され、数十年で高層建築は崩れ始め、瘴気によって植物は歪に、異常なスピードで成長し始め、それと同時に増え始めた野生の邪鬼が跋扈する【魔界】と化した。


前時代には東大陸の【銃の国】と大八島国は戦争した事も有るらしい。


戦争の結果は、東大陸の世界最強国家、銃の国の圧倒的な物量と魔法と科学の融合物…魔法兵器により八島の一つ那禍(なか)大島の殆どが破壊され、大八島国は降伏の道を選んだ。


そう、銃の国は一時期旧大八島国、アシハラを支配していた事さえ有るのだ。


だが、これは意図した物で有るかどうかは未だに議論されてはいるのだが…


時代を追うごとに大八島国の文化が東大陸を侵食した。


つまり…大八島国の創作物や思想が大量に東大陸に広まった結果…


当然大きな反発は有りはしたが、その中で一部の者達、若い世代の精神性を大きく高める現象が起きた。


これは善悪二元論に縛られ、誰しもが自身の正義を振りかざし、対立した相手を悪と断じ常に小さな対立を繰り返す【銃の国】の大人達…為政者達には頭の痛い事象であったかも知れない。


自国民に思想の対立を起こさせ、分断統治し、気付かぬ間に民衆から搾取する。


…かの国はそう言った側面の有る国ではあったのだ。


その行き着く先の対立が赤の陣営と青の陣営の内戦に近い対立に発展してしまったが、途中までは支配者達…企業家や政治家達の思い通りになってはいたのだろう。


つまり、やり過ぎた結果、広大な国土の殆どは魔界に覆われ、他国との戦争では無く自分達の首を絞める形で滅びを迎える事になった。


とはいえ…結果を見れば大八島の思想価値観が広まった事で、かの国の若者達が生き残る道を見つける事にも繋がったとも言える。


大八島の価値観が広まら無ければ生き残りなどおらず、対立の果てに全て滅んでいた可能性もあるのだから…


◆ ◆ ◆


ジョーイ達の避難民の先祖は聖暦1999年に始まった【終末の大戦】の後に来た者達では有り、東大陸で生きながら邪鬼に近い存在…魔人となってしまった多くの人々と比べ、比較的精神性の高い者達ではあった。


そもそも大八島国は当時の世界の人々に取っては既に滅びた国だったのだ。


聖暦1999年に急な地殻変動で地形が大幅に変わり、周囲に高い岩山が隆起し、様相を大きく変えた大八島国は世界から見捨てられた。


各国は生存者は少ないと見て恩を売っても仕方が無いと判断したのだろう。


調査隊すら派遣されなかった。


というのも、周囲を囲む高い岩壁の上には【谷の妖女】が巣を作り、航空機等で調査するのも危険極まり無く、岸壁の上の殆どには赤い瘴気が立ち込め…全てが魔界に覆われたと思われたのだ。


冷静に考えれば、【重く、低い場所に滞留する瘴気】が高い岸壁の上に留まっている時点で不自然極まりない無いのだが、当時の世界の国々は自国の事で手一杯で極東の島国に目を向ける余裕も無かったのだ。


その結果、現在のアシハラは当時の混沌とした世界の影響から隔離され、【大戦末期の十二年】で世界が魔界に覆われた後は最後の聖域、東のエデンと呼ばれる事になったのだ。




外部と接触不能と成り、音信不通となって久しかった大八島に生き残る道が有ると直感的に判断した者達、それは西大陸極東地域の者と東大陸の者にも同時に起こった事から、ある種の啓示だったのでは無いかと言われている。


何者かの啓示を受けた、或いは己の直観を信じた二つの大陸の者達と、生き残る為に仕方無く移住を決意した縁者達がジョーイ達の祖先に当たる。


所謂…大戦後の避難民とされる人々で有る。


そうした決断を鼻で笑い、或いは運命を共にすると国に残った者達はどうなったかは分からない。  


東大陸は結界封鎖されて久しく、他の大陸…西大陸や南大陸の沿岸部やアシハラの南の島々に数千から数万規模の小さなコミュニティが点在し、魔界の侵食に抵抗している悲惨な状況で有る。


アシハラに来た避難民達の直感は正しかったと言える。


しかし船に乗ってかつての大八島をその目で見た者は、皆一度は絶望したのだと伝え聞く。


何故なら、かつての大八島の周囲に屹立する岩の崖、【大岩壁】を目にして、船の上で途方に暮れていたのだが…


突然に一部の崖が崩れだした。


今にして見ればそれは、神人達上位者のはからいだったのだろうか?


或いは啓示を送ったのもアシハラに集結した神格者だったのかも知れない。


こうして…西大陸や東大陸の避難民達は入島を許された。


当時、アシハラの人口は災害の結果、数百万人程度まで人口を減らしていた。


世界中から集まっていた神格者は、世界には次世代の戦士達が必要だと判断したのだろう。


いずれ魔界を祓い、西大陸を解放する為に…


だが多重に張られた結界の為に入島してからも、数十万人の避難民はその精神性に応じてバラバラに生活する事を余儀なくされた。


第一居住可能区域に行けた者は存在しなかった。


第二居住可能区域に住めたのは僅か数名の東大陸の先住民の子孫のみ。


西方系の現人や獣人は誰も入れなかった。


第三居住可能区域に入れたが…そこで生活する事が出来た者は僅か数百名しか居なかった。


ジョーイの祖先、初代のドワイト家は紆余曲折の末に、第四居住区域に辿り着いた。


ここには当時東西の大陸からの数千人の移住者が住み着いた。


この区域は都市部で生活していた人間はほぼおらず、皆西大陸や東大陸の田舎で農業を生業にしていた者が多かった。


そして残りの数十万の者は第五や第六居住可能区域、そして魔界…第七…居住不可区域へと散って行った。


これらの下位の区域に行った者は現地のアシハラ人の文化に馴染もうとせず、居丈高に振る舞い、西方の文化が、或いは西大陸極東の文化が至上であると現地のアシハラ人を教化してやると、迷惑行為を繰り返した。


或いは我々の植民地にするのだと、国を作るのだと略奪を繰り返す者達さえ存在した。


勿論、結界の制約の一つに国を作る事を禁じる制約も含まれている。


集まった神々…神格者はそれを許さない。


アシハラには法も罰則も無い、街毎の決まり事が有るのみ。


人を打つ者は打たれ、人を傷付ける者は傷つけられても文句は言えない。


人を隷属させようとする精神性の低い者は、殺されても文句は言えない。


それが新世界の理…【有徳律】


国が無くとも秩序を保つシステム。


つまりは…棲み分け、真の多様性を維持する為のシステムにほかならない。


精神性が合致しない者は同じ場所で長く共に住む事は許されない、それが例え家族、親類縁者で有ろうとも…


東大陸や西大陸極東の殆どの避難民達は悪神やその残滓の影響で、祖先から受け継ぐべき霊術や技を持っていなかった。


魔法を使う者は東大陸で生きながら邪鬼の領域に足を踏み入れた者が多いとされている。


祖先の霊術を受け継ぐアシハラの住人や、終末以前に祖霊の啓示により西大陸から辿り着いた、祖先の術を受け継ぐ、大戦前に祖霊の導きに依って移住して来た先達の相手にならなかった。


強烈な反撃、それを止める法律など無い、ここは既に【終末の大戦】以前の強国の言いなりになっていた大八島国では無く、最後の神域アシハラなのだ。


その為、避難民の国造りは悉く未遂に終わった。


だが、彼らの殆どはアシハラ人の抵抗によって辺境に追いやられたわけでは無い。


全ては有徳律の法則故である。


また魔界の近辺…辺境に住むアシハラ人は盲目的に西方の文化を崇拝する軸の無い達であったり、或いは同じ様な精神性の低い犯罪者予備軍で、新たな支配者となった避難民達の機嫌を取って逆に、避難民の財産や商売の上前を跳ねる様な、一癖も二癖も有る歪んだ性根の腐った者達であったからだ。


だが下位の区域は精神性が低い、現地人や避難民に取っては過ごしやすい場所で有る。


最初こそ不平不満を零し傲慢に振る舞っていた東西の大陸から来た避難民も結局は諦めた。


彼らの不平不満を大人しく聞く様な現地人も国も役所も存在しないのだ。


結界の影響で辺境に近い場所に、自分が住みやすい場所に徐々に、自ら向かって行く事になった。


勿論、自身の勘違いに気付き、精神性を高め、四区や三区の上位の居住可能区域に向かった者も存在するが、それはごく少数だった。


現在、辺境地域に現地アシハラの獣人、現人は少ない、アシハラ人の人口比率はそれぞれ、上位の第一から第四の住人の七割近くが現地のアシハラ人と大戦以前に移住してきた者達で占められており、魔界の玄関口と呼ばれる第五居住区で住人の五割弱、第六で三割、第七では一割に満たない、魔界に近付く程に外国から来た者達の子孫が多くなる。




◆ ◆ ◆



つまり…ジョーイの祖先ドワイト氏は心正しく賢明であったと言う事だ。


第四居住可能区域とは、少々保守的で排他的な面は有りはするが、他者に自分達の主義思想を押し付ける事も無く、基本的には親切で礼節をわきまえた者が暮らす区域である。


自称先進的な者達はと言えば、所詮は自分の思想を至上としエゴの押し付けをする者達である。


彼等が住むのは第五居住可能区域以降の区域になってしまった。


ジョーイの祖先ドワイト氏は第三居住可能区域に比較的近い場所、第四居住可能区域西部に拠点を構え、山の多い土地故に平地での農業を生業として来たドワイト一族は、そこで作物を育てる知識は無かった。


彼らは、現地のアシハラ人に頭を下げ、教えを請い、山の斜面に畑を作り、慎ましく、少ない物質で工夫し、それは賢明な努力の末に村を築き上げるに至った。


カレンがその名を知っていた様に、今ではアシハラに於いて小麦の一大生産拠点にさえなっている。


牧歌的では有るが、何不自由無い恵まれた村…故郷。


だが…ジョーイはそんな村を飛び出してしまった。


東大陸からの避難民の一部…ドワイト一族、彼らが信仰する世界宗教から派生宗派で有るアーミンズの掟では、コミュニティを出た者は再び戻る事は許されない。


これはかつて世界宗教の神父であり、教会内の政治闘争に敗れ異端のレッテルを貼られ…拷問の最中に真人への覚醒を果たした聖者アーミンが定めた掟の一つである。


現在の不遇極まりない状況に有るジョーイは思わずにいられない。


あのまま村にいればこんな目に遭わずに済んだのでは?…と。


退屈では有るが安全で牧歌的な村で、稀に来る行商人から、外の話しを聞き、珍しい物を稀に取り引きしながら、基本的には慎ましく暮らし、一生を終える事が出来たであろう。


第四居住区域の田舎の生活は都市部の生活に比べ不便な事も多かったが、ここに比べれば…例え不便であっても牧歌的で平和な生活だった。


ここは生まれ故郷、ドワイトヴィレッジに比べれば都市部故に便利な部分も有る。


珍しい旧世界の遺物、美味い酒、珍しい食べ物、手軽な快楽、嗜好品、水道…水洗トイレ…一部ではあるが電灯の灯りさえも…


だが、人は住めても酷い場所で有るのは変わりない、人々の心は貧しく、欲望に満ち、ほんの一ヶ月前に逃げ込んで来たばかりだと言うのに、絶望は加速する。


こうして席に座って酒を飲んでいる間も瘴気、赤い霊素が僅かながら目視出来る。


夜中に路地裏を歩けば、邪霊に取り憑かれたり襲われる事など日常茶飯事で有る。


襲われるならまだ良い、逃げるなり、霊よけの呪いを持つ者なら対処も出来る。


取り憑かれたら、奴らは徐々に宿主の霊体を侵食し、いずれは同化する、同化された者は邪霊の過去の断片的な記憶に悩まされ精神性を大きく堕とす事になる。


その辺の知識はエマの私塾でも一般教養として講義を受ける為にジョーイも良く知っている。




◆ ◆ ◆


【肉体、霊体、魂、霊素、瘴気】


霊とは、より元素の霊素により近く、原子も元は霊素では有るのだが、霊を構成するのは物質を構成する原子とは霊素の配列異なる構造体として、物質と言う属性を与えられた霊素は更に上位世界の何者か…に創造されたとされているが…下の世界の我々に知る術は無い。


全てを構成する元となった原子よりも遥かに小さいモノは、物質としてでは無く…


そう…仮に名称を付けるなら霊素の更に細かい単位、【霊子】と名付けた方が良いかも知れない。


基本的には【物質で有ると言う属性】を与えられた霊素を除く、瘴気、霊気、神気はその霊子が元になっており、集まれば目視は出来るが、物理的な干渉を一切受け付けない。


人間、生物、肉体とは、生命が形作られる状況に於いて、例えば交配、或いは単性生殖であれ、若しくは分裂であっても、生物の肉体が構成される段階で同時に霊気を取り込み、霊素を作り、霊体を構成して行くのだと云う。


これは魂が宿らぬ段階の生命体であっても、動物植物…あらゆる物に霊体は作り上げられ生物、或いは植物として、共に成長する。


霊子、霊素の面白い特性は事象や無機物に宿り、それに見合った霊体となる事が有る。


つまりは、この事象の霊体、自然霊とでも言うべき存在が土、火、水、風、光、闇、大気等々を司る精霊である。


発生は定かでは無いが、多少でも知恵と想像力の有る生物が想像し認知した結果、発生したのだと言う説もある。


例えば、氷の国のエルフ達は精霊がより進化し魂を得るに至った存在で有り、現地の民の信仰を得てはいるが、それは鶏が先か卵が先かと言う順序で信仰したから発生したのかそもそも何らかの下地があって発生したのか未だにその誕生には謎が多い。


人間の様に話し、食物を摂取し、現地民の信仰から誕生し進化した存在では有るけれど、神の様に人々を守り導き、同時に男性、女性などの生物としての区別の有る知性体でも有り…そんな稀有な存在としても知られる。


で有るので既に精霊では無い人類に近い存在…元、精霊とでも言った方が良いのかも知れない。


霊から肉体を持つに至ったエルフとは違い、高度な知性と精神、魂を持つ者に取っての霊体とは、人間の、或いは肉体を持つ者の意識そのもので有る。


そして霊体は肉体から離れてしまうと、少々記憶が断片的なる現象が起こる。


霊体の記憶は肉体や魂に依存しなければ、機能がかなり制限される。


だが、肉体や魂とは比べるべくも無いが、ある程度の記憶の保持は可能で有るともされている。


また一部の肉体由来の感情や欲望は希薄にはなるが、感情や自我もちゃんと備えている。


肉体から離れた霊体は肉体機能に依存しない感情は逆により強くなるとされる。


それはつまり…怒り…悲しみ…喜び…など基礎的で原初的な感情の事を指す。


肉体に依存する性欲や睡眠欲、食欲などは霊体は本来は持たない。


それを持つ霊体は構成する霊素が赤く穢れておらずとも悪霊化する恐れが有る。


また同じ性質の霊体と共に過ごす習性がある為、善霊は善霊で集まり、悪霊は同じ様な悪霊でで集まる事が多い。


前者は慰霊の森へ、そして後者は魔界へと流れて行く。


肉体を離れた霊体は生前の在り方によって、善霊、悪霊、神霊へと分かれ、悪霊を除く他の霊の中には魂へと進化を果たす霊体も存在する。


それ以外の霊体は…慰霊の森などが無かった前時代には二百年程世界の各所を彷徨い、記憶を散らし、やがて形を保てなくなり徐々に細かな霊素に分解されてしまっていた。


現在は慰霊の森は一区から五区まで存在し、死者だけで無く、霊術の修行者は慰霊の森で修行し、霊体から拡散した揺蕩う霊素を内に取り込み内蔵霊力の上昇を目指す者も居る。


誰それの偉人の生まれ変わりであると主張する者が稀にいるが、その認識は正しく、そして間違っている。


恐らく…それは誰かしらの分解された霊素を取り込んだだけで有るパターンが多く…つまりは記憶の欠片でしか無いのだ。


偉人の生まれ変わりなど、そう言った意味では、同じ生まれ変わりは五万と存在する事になる。


魔界とは高濃度の穢れた霊素に汚染された忌み地(いみち)の事を指す。


肉体は感情と理性、自我を司り記憶容量も大きいが限界も有る。


加齢と共に徐々に記憶は薄くなる傾向にあるとされる。


また精神的なエネルギーや意識を司る霊体が無ければ、肉体は糸の切れた呼吸をするだけの肉人形と化す。


肉体は霊体の精神力を肉体の力に変換する機能も有る。


言霊にしろ他の術にしろ過度に使用すれば霊体や肉体が持つパワーを消費し尽くして、昏倒する。


これがマインドダウンと云う現象で有る。


魂は、自我や意識、感情は希薄だが記憶容量は肉体や霊体を凌駕し人間の視点では無限に近い記憶容量を持つ。


その容量は転生を繰り返し、全ての人生を記憶する事が出来る程で、更にもう一つ上げるので有れば魂には使命が存在する。


経験を積み位階を上げ、より上位の存在として昇華する事、また上位の魂は下位の魂を生み出す事も有る。


或いは統合の末の無駄な記憶の排泄とも取れるが…


黒き魂とは、欲望や邪念により黒く染まり、使命を果たす機能を忘れてしまった、或いは機能が消滅してしまった魂の成れの果ての事を指す。


肉体、霊体、魂の三位一体で現人や獣人を含む【人間】となり、これを霊長類と呼ぶ。


そんな人間に全く別の意識と自我がを持った悪霊が入って来たらどうなるのか?


初期段階なら祓えもするが、時が経てば侵食は進み、最終的には以前とは全く違う性格と、生き方にガラリと変わってしまう。


犯罪を犯す様になったり、自害する者もいるのだと言う。


また、例え強い魂を持つ者であっても精神や肉体に大きな負荷が掛かる感覚に陥り、病や怪我を発症しやすくなる。


この状態を霊障と呼ぶ。


悪霊付きとは、体、霊、魂の三つの要素の一つが霊体偏重(れいたいへんじゅう)となったバランスの悪い状態を指す。


相当な(けがれ)をも取り込み、特に魂が未熟であった場合などの場合は肉体にも良くない影響が発生し、その穢れた霊素は少しづつ魂を黒く蝕む事さえあるのだ。



◆ ◆ ◆



エマの私塾の授業で聞いた話ではあるが、ジョーイは疑問に思う、何故に神格者はこの様な場所、魔界を放っておくのかと?


一般的には手が足りないと言われてはいるが、別の意図が有る様な気がしてならない。


魔界なんて無ければ……


(こんな…穢れた霊素がそこら中に揺蕩(たゆた)う街になんか居るからっ!あぁ!クソっ!分かってる…授業で聞いた話なんて思い出して…クソっ…現実逃避だって…)


「マスター!酒だ!もっと…」


「フン…出してはやれるが…この前の拳銃は割と高値で売れたがよ…飲めるのは…後数杯ってトコだぜ?次に何を差し出すか考えておけよ?」


マスターは不機嫌な様子で空いたグラスに焼酎を注ぐ…


時折…中空や店の隅にモヤの様に染み出す赤い霊素の集まりを睨みながら酒を煽る。


だが、それは今のジョーイにはどうでも良い事だ、どうでも良いが、何かしら考えずには居られない、なのにどうしても、何者かへの…恨み事に変わってしまう。


他責思考の果てに…良くないサイクルに陥っていた。


あの時の事を、ひたすら繰り返し、思い起こし、罪悪感に苛まれる、だから何者かの責任に転嫁しなければ自分が押しつぶされそうになる。


闇に飲まれつつある。


…かつて英雄を志した青年…


ジョーイ=ドワイトは他責思考にならない様にと…出来る限り他の事を考えようと試みる。


そして…自身起こった事に向き合えず、現実逃避を繰り返す自分に嫌気が差し、再び酒を煽るのであった。





なんてハチャメチャな文章…これを書いた時には脳が何かに侵されていたに違いない……何者かに…

( ゜д゜)ハッ!

他責思考…いかんな…

一応直しました☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ