番外編:明人と飛鳥の結婚式とそして…(5)
「ふぁーー!良い式だったなぁ…!」
明人はバスローブを着込み、バフッとキングサイズのベッドに身を背中から投げた。
「うん。一生の思い出になるね」
明人と同じバスローブを着た飛鳥はお風呂場から出て来ると明人の左隣に座り、彼の手の甲に自身の掌を重ねる。
「でも…今日はまだ…あるよ…」
艶やかに頰を上気させ、照れているのか小声で誘うように呟く。いつものエネルギッシュな飛鳥と違う、蠱惑的な雰囲気に明人は緊張した。それを察した飛鳥は左手でバスローブの上から明人の左胸に触れて、心音の激しさを感じて、小悪魔のように微笑む。
「緊張してるの?久々にするから」
「いや…なんというか……多分、今日が特別だったから…」
明人は上半身を起こすと飛鳥を抱き締め、右手で背中から飛鳥の心音を探る。飛鳥の心音も今にも飛び出そうな程に大きなものだった。
「飛鳥も緊張してるな」
「…明人の言う通り…今日は…特別だから…」
「ああ」
「それに…私達って五十歳までしかこの世界に居られないし…子どもは早めに欲しいから…。今日は頑張ろうね」
明人は飛鳥の言葉に我慢が出来なくなり、飛鳥をベッドへ押し倒す。
「今日は終わらないからな。覚悟しろよ」
「…お願い…します」
飛鳥は自ら自身の着ているバスローブをはだけさせた。
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「やぁ、二人共…久しぶりだね」
真っ白な空間と目の前に靄で出来た人型に話し掛けられ、隣に居る飛鳥の姿を見て明人は自分達は本当に魂だけの存在になったのだと自覚する。
「本当に久しぶりですね」
「お久しぶりです神様。…私達が居るこの世界って死後の世界ですか?」
「いや、死後の世界でも、天国でも地獄でも冥界でも深淵でもない魂だけが存在を許される…空間未満の世界だ」
「へぇ~…」
飛鳥は珍しげな様子で空間内を見渡す。
「ずっと君達の様子は見ていたよ。随分と頑張ったね。幾ら神である私の祝福があったとはいえ君達と玲子という女性…たった三人で星一つの問題をほぼ全て解決なんて偉業は初めて見たね。彼女も神の一員になってくれないだろうか…。エリストという男性をお付きの天使すると交渉すれば頷いてくれるだろうか…」
神が本気で思案しようと人差し指と親指を顎に当てている。
「神様?そろそろ明確な説明を…」
明人に呼び掛けられ、思案を中断する。
「そうだったな。…君達二人には元の世界へと戻る前に言ったと思うが、君達の身体は既に人間ではなく、神や天使の肉体であると。神や天使が本来現世に居る事は特例がない限り御法度であるが、いきなり君達を神や天使として迎えるのは難しく、二十年程掛かると言った。しかし、せめて君達の子どもの為に猶予を引き延ばし、五十歳が限度だった。それは覚えているね」
「「はい」」
「で、ここからが本題だ。君達はこれから二柱一対の夫婦神になって貰う。とはいえ、神に成り立ての君達には大した仕事はない。精々一世界の管理を頼む程度だが、管理と言っても基本干渉しない。……だが、先ず君達の主な仕事は私達の仕事のマニュアルを覚える事。取り敢えず一億年はマニュアルを覚える事に注力してくれ。くれぐれもイチャついて忘れないようにね」
「大丈夫ですよ、安心して下さい」
飛鳥は神の言葉に笑いながら言うが、それでも神は不安そうな顔をしている。
「…私は君達が十三人の子どもを作る程頑張っていたのを知っているのだが?」
神の言葉に二人は顔を赤くし、神から顔を逸らした。
「…千年程は私の天使が監視しているからな」
「「は、はい」」
「では…私は失礼するよ。またな」
靄の人型が揺らぎ、消えると人型があった場所に分厚い本が大量に落ち、エベレストのように積み上がった。
「こ、こんなに覚えるのか…」
「頑張って覚えよう。頑張って全部覚えれば空白の時間…二人きりの時間、楽しめるよ」
「……そうだな。二人きりの時間なんて子どもが生まれてから滅多に取れなかったからな。また二人きりの時間を作る為、頑張ろうか」
「うん。先ずは千年を目標に頑張ろう」
「ああ」
二人は肩を合わせて並び座り、積み上がった本を読み始めた。何十年、何百年と何時までも仲睦まじく読み続ける姿をずっと監視していた天使は二人の仲の良さに自然と笑顔になり、天使も千年という時間を楽しく監視し、彼等は五百年で全て記憶した。覚えてるか天使に答え合わせして貰うのに五百年使い、言葉通りに千年で完璧に記憶した。
監視が終わった後も天使は度々彼等の様子を見に来てはニコニコとし、何時しか彼等の様子を絵本に描き出すようになる。それは神話として人々へと伝わり、永遠と続く明人と飛鳥の幸せな日常の一節の一つとなり、彼等は全ての時間軸、全ての平行世界に置いて永遠の愛の夫婦神として祀られるようになった。
~fin~




