番外編:明人と飛鳥の結婚式(2)
飛鳥は父親と共に扉の前で止まり、左手にはブーケを持ち、右手を父親の左腕に添えて扉が今か今かと開くのを待つ。心臓が高鳴り、心音の鼓動の間隔は短いが何故か落ち着いている。不思議な気分だった。
(きっと楽しみなんだ。正真正銘、明人と結ばれる事が…。勿論、結婚自体は既に何年も前にしているけど、結婚式を迎えてようやくと言うか、お父さんとお母さん達の手元から離れ、私の全てが明人のものになる感覚を明確に感じる。寂しいけど…嬉しいな)
飛鳥は隣の父親を見る。その顔は溢れそうな涙を必死に抑えようとして堪えているもので、飛鳥は笑いそうになるが父親に失礼だと思い、一言声をかける。特別な想いを込めて。
「お父さん、今までありがとう」
「…っ!!??」
『それでは新婦の入場です』
両開きの扉が開かれ、父親は飛鳥の歩幅に合わせてゆっくり、ゆっくりと大聖堂の中を進む。その顔は涙と鼻水でグチャグチャになり、綺麗に飾り付けられた花嫁より父親の方に視線が集まる。
(おじさん顔中汁塗れだな)
明人も思わず視線が飛鳥ではなく父親の方に向いてしまい、苦笑する。飛鳥と飛鳥の父親は目の前に来て、飛鳥の手は父親の腕から明人の手へと移る。
「あ、あぎど…ぐぅん…。あ、あず…かを…ずえながぐ……頼んだよぉ…」
「はい。一生を掛けて幸せにします」
そして、飛鳥は明人の隣へと自ら移動し、共に神…神父の前へと並び立つ。
「新郎明人、汝健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、この女性を愛し敬い慈しむ事を誓いますか?」
「はい。誓います」
「新婦飛鳥、汝健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、この男性を愛し敬い慈しむ事を誓いますか?」
「はい。誓います」
「それでは、指輪交換の儀を」
ブーケとグローブを飛鳥は介添人に預け、明人と飛鳥は向き合い、明人は神父から右手で指輪を受け取り、飛鳥は左手を差し出し、明人はその左手を左手で支えて指輪をはめる。明人は飛鳥に指輪をはめると今度は明人が左手を差し出し、飛鳥は同じ手順で指輪をはめ、二人は神父に向き直る。
「では、誓いのキスを」
二人は再び向き合い、飛鳥は下を向いて目を閉じ、明人はベールに手を掛け、頭の後ろへと動かし、明人の手がベールから離れると飛鳥は目を開き、顔を上げて明人の顔を見る。互いの顔がようやく見る事が出来、二人は共に見惚れ合う。
玲子は二人が互いに見惚れている事に気付き、あまりにも長ければ催促する事も考えていたが、突如神官の後ろのステンドグラスに強い陽の光が差し、飛鳥と明人の間に神様が光によって床に映し出される。更に壁中はランダムの配色のステンドグラスが偶然、ハートや鐘に沢山の天使が光の絵の具で描かれる。
言語化しようがない神秘的で幻想的な光景に参列者達は思わず息を飲み、この二人の結婚式は神から祝福されていると誰の目にも分かった。
二人は神からのギフトに微笑みを浮かべ、飛鳥は目を瞑り、明人は神に感謝しながら唇を重ねた。その瞬間何処からか鐘の音が鳴り響いたーー…。




