私の昼食2
殺す。マジで帰ったら殺す。え?何これ?頑張ってください?完全に楽しんでるじゃん!それにあの二人神山君と雛井さんにも私が直也のこと好きって伝えたわけ?バカなんじゃないの?神山君にはいつかばれるんじゃないかっとは思ってたけど……雛井さんにばらすなんて…………。
しかもこのチャットって直也も普通に見れるんだよね?なにが頑張ってくださいよ!!直也はこのチャット見て何も思わないわけ?あいつらふざけすぎでしょ!それに美穂以外はクラス一緒なのにどうやって直也だけここに来させたのよ!マジであいつら意味わかんない!!
「先輩どうしました?」
ダメだ。落ち着け私。もっといつもみたいにクールに。そうクールに。
「い、いえ何でもないわ。えっと、クラス出る時にみんななんか言ってなかった?」
「なんか他の三人は先生に仕事頼まれたって言ってて美穂も先生に頼まれごとされたって言ってました」
はい、嘘乙。疑う余地がなさすぎる。
「それって優香が言ってたの?」
「うーん、言われたみたらそうですね。先生から直接じゃなくて神奈月さんに言われました」
あいつは一体何がしたいんだろ?私と直也を二人きりで合わせて何がしたかったのか。
「えっと、あなたは先生の手伝いに呼ばれなかったの?」
「俺も手伝うって言ったら、先輩だけ一人でギルド室にいるかもしれないからって……」
「へぇー……」
くっそー、ちゃんとマジックフォン確認しとけばよかった。そうしたらこんな事態にはならなかったのに……。まあ少しの間でも二人きりになれて良かったって思えばいいか。ずっと二人きりでいたいけどさすがに緊張しすぎる。さっさと生徒会室に行ってご飯でも食べよ。
「それじゃあ私はこれで――」
「せ、先輩!それでもし良かったら一緒にご飯食べませんか?」
なっ!え?一緒にご飯!?
そうか、冷静に考えれば今は二人きりでチャンスじゃん。上手くいけばこのまま告白までできちゃうかもしれない。そうしたらギルド内でも堂々できるし、よし!直也のことで煽られることがなくなる。頑張るぞ私!
「え、べ、別にいいわよ。食べてあげても、そ、そのね、えっと、よ、よろしくお願いします」
私はこの瞬間に無理だと悟る。告白?それどことかまともに会話することすらできない気がした。直也の前だとどうしても緊張してしまう。ご飯食べるだけでこんなに緊張するなんて……。こんなんでよくキスなんてできたな……。
直也はなんで私を前にしても全然緊張してないんだろう?私の愛が足りないからいけないの?そんなことはない。直也が私を好きって気持ちよりも私が直也を好きって気持ちの方が大きいはずだ。
「先輩どうしたんですか?」
「ななな、なんでもないのよ。それじゃあ、た、べましょうか。あははは」
私は笑って誤魔化した。
――直也は私の隣の席に腰を下ろす。直也はどうしてたくさんある席の中から隣の席に座ったのか?
いつも違うところに座ってるじゃん!勿論、思春期の男の子なら好きな女の子の隣に座りたいものだ。私だってそうだし、緊張さえしなかったらずっと触れ合っていたいって思う。
今の私からしたら信じられないほど近い距離。直也はからしたらこれくらいの距離感は普通なのかな?姉があんなにスキンシップが激しいんだ。弟の直也がこうなっても仕方ないことだ。
「先輩のご飯美味しそうですね」
私がお弁当を開けると直也がそう言った。弁当を見るために直也がこっちに顔を近づける。
近い!近い!なんでそんなに近寄ってくるのよ!そんなに近寄らなくても普通に見えるでしょ。バカなんじゃないの!?
自分の心臓の音がはっきりと聞こえてくる。心臓がドキドキしすぎてやばい。これだけドキドキしていると心臓の音が直也にも聞こえてるんじゃないか心配になってくる。
「ありがと、そっちのもおいしそうだと思うわよ」
私は照れてるのを隠しながらそう言った。直也の弁当を見るとおかずが綺麗に並べられている。ウインナーもちゃっかりタコの形をしているのが凄い。直也が自分で作ってるのかな?男の子なのに料理までできるなんて……羨ましいな。
「ありがとうございます、俺の弁当は美穂が毎朝作ってくれてるんですよ」
「へぇー、美穂がね」
あいつ料理なんてできたのか?あいつが作ったって聞くと突然そんなに美味しそうじゃなくなってくるので不思議だ。ウインナーもよく見るとタコに見えなくなってくる。何なんだろう?幻獣?化け物?生き物に見えない。好きな人補正は偉大だ。
「先輩って自分で弁当作ってるんですか?」
やばい。もしかしたら来るかもしれないと思っていた質問。この私が料理なんてできるわけない。全部吉田さんがやってくれたので料理なんてする必要がなかった。ああ、マジで料理くらいやっておけばよかったと後悔してしまう。
私が料理できないのは吉田さんのせいだ。ご飯を当番制とかにすれば私だって料理くらい作れたと思う。って今そんなこと考えてても虚しくなるだけだからやめよ。料理ができないって正直に言おう。
「――まあ、わ、私くらいになれば料理なんて余裕よ」
…………はい、終わったー。何言ってるの私!うん、分かってる。私の悪い癖だ。気が付いたらそんなことを口走っている。
変なところで見え張ってバカみたいじゃん!料理なんてできるわけない。いくら料理ができる女って思われたいからってこの嘘は酷い。
自分でも理解できないほど私のプライドは高い。それは自分でも理解している。少しでも喧嘩を売られるとすぐに買ってしまう。人を煽るのは好きだけど煽られるのは嫌いだ。
「前先輩の家で食べさせてもらった朝ご飯も先輩が作ってたんですか?」
いきなりのチャンス到来だ!今からでもまだ間に合う。正直に言わないと……ここで言わなければ後々後悔するのは自分だ。そうだ、早く正直に――
「まあね。あの朝は大変だったわよー。作るのにほんと苦労したわー」
…………。どんどん勝手に私の口から出てくる積み重なる嘘。しかも、結構苦労したって何よ!さっきまであんなに緊張していて喋れなかったのに……。自分をよく見せたいと思えば思うほど嘘を積み重ねてしまう。
「てっきり先輩の家の使用人さんが作ってくれたんだと思いました」
うぅ……心が痛む。自分の無能っぷりに絶望してしまう。ダメだ。これ以上話してもどんどん嘘をついてしまう気がする。話を逸らそう。
「ねえ、それより違う話しない?えっと、その……あ、精霊喫茶行ったことある?」
私は外にある喫茶店を指さしながら言った。
「一回だけ友達と行ったんですけど、とっても美味しかったです。学校で人気の理由がよくわかりました」
一回行ったのか。確か可愛い格好のコスプレ少女たちが……。
「へえーそうなんだ。なんかコスプレして接客してくれるんでしょ?どうだった?可愛かった?」
「コスプレって動物に格好になりきってるってことですよね?うーん、どうだったかなー。あんまり覚えてないです」
そうなんだ、それを聞いて私は安心する。良かった。直也が私以外の他人を可愛いとか言い始めたら危うくその人を危険な目に合わせるとこだった。
「可愛いって評判らしいんだけど覚えてないの?」
「俺、先輩以外の女の人ってあんまり興味ないからわかんないんですよ。えへへ」
直也は少し照れながら笑顔でそう言う。ずっきゅうううううううううん!照れてる仕草とか一生脳内にやきついてしまいそうだ。これは落としにきてますわ。そう、これが恋――
「おふ――いったー……」
私は嬉しさのあまり足を伸ばし前の椅子に足の指をぶつける。そのせいで大きく態勢を崩しそうになるがなんとか持ちこたえる。
「あぁ……ぅ……」
うぅ……痛い。想像以上の痛みに耐えきれなくなり私は女の子らしくないうめき声をあげてしまう。
「せ、先輩大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だから。ちょっと足が滑っただけだから」
座ってて足を滑らすって……恥ずかしいすぎて死にたくなる。
「そ、それよりご飯食べましょうか。早くしないとみんなきちゃうわ」
「そうですね」
私は再び話を逸らす。この先が思いやられる。




